1879-01-01から1ヶ月間の記事一覧
1879年1月31日 金曜日 笠原は外国に行くための費用を調達する目的で北海道へ行った。 彼は刀を私に預けていった。 「必要が生じた時には返して頂きますから、預かっておいて下さい。 もしヨーロッパにもアメリカにも行けないのなら、これでハラキリせ…
1879年1月30日 木曜日 昨日の午後、お逸と私は月琴の練習していたときのこと(いま巷でも月琴が大流行なのだ!)。 使用人のタケが入って来て、笠原という紳士が外に来ていると告げた。 私たちは勿論彼の出現に驚いた。 とりわけ彼の服装に驚いた。 そ…
1879年1月28日 火曜日 母の具合が悪いので、私はサイル夫人が使って大変よく効いた塗布薬の名前を教えて頂きに行った。 十二時半に着いたら、丁度昼食が始まるところで、私にも食べて頂くようにと云われた。 ブニンシェー夫人と赤ちゃんもみえていて…
1879年1月25日 土曜日 昨日一日中準備をしていた音楽会が素晴らしくうまくいった。 ご招待してあった滝村氏と岩田通徳氏がみえて、五、六カ所から別々に届けられた楽器をうちの客間に用意された。 やがて銅鑼が鳴って他の六人の音楽家がみえた。 皆さ…
1879年1月24日 金曜日 夕べはひどい暴風でよく眠れなかったが、明晩の音楽会の準備で一日中大忙し。 奇妙なことに種田氏から同じ晩の、同じような催しへの招待があった。 お逸の一番上のお姉様である内田夫人が手伝いに来て下さり、手伝う仕事があっ…
【クララの明治日記 超訳版解説第69回】 「今回分は冒頭の予告通り、まったりとした展開でしたわね」 「チッチッチッ、甘い甘い。実は隠れたところで、重大な証言が潜んでいるんだな、これが。 メイ、大鳥圭介氏の娘の三姉妹、知ってるわよね?」 「大鳥ひ…
1879年1月20日 月曜日 朝、窓から外を見たら、この冬二度目の綺麗な雪が地面を覆っていた。 でもあまり熱心に私が眺めたせいかどうか知らないが、雪は間もなく解けてしまった。 十時にお逸とマレイ夫人を訪ねた。 小鹿さんも昨日訪問されたのだが、お…
1879年1月19日 日曜日 昨晩、江戸ホテルが焼失した。 なんと持主が名を売るためだけに放火したのだった。 居留地全体が助かったのは奇跡だ。 ミス・マクニールの家の屋根とマクラレン氏の屋根が燃えたが、ごく一部分で、あれほど近いのに他の建物は無…
1879年1月18日 土曜日 またひどい風邪をひいてしまった。 まるで咳をし続けるのが私の運命であるかのようだ。 午前中にちょっと内田夫人のところへ行って、彼女と耳の聞こえないおば様としばらくお話をしてきた。 それから勝家に回る途中で岡田のオバ…
1879年1月16日 木曜日 母とアディは会合に出かけたので、私は大好きなロマンス文学に読み耽ることができた。 ド・ボワンヴィル夫人、アンダーソン夫人、ミス・ジョンソンが訪ねて来た。 ミス・ジョンソンとは楽しい話し合いができた。 とても気の良い…
1879年1月15日 水曜日 午後大鳥閣下を白金の豪邸に訪ねた。 おゆきさんや他のお子さん方もご在宅だったので、一緒に遊ぶことが出来た。 閣下は工部大学校のイタリア人教授フォカタネージ氏に油絵の肖像画を描いて貰っておられる。 同教授の手になる奥…
1879年1月14日 火曜日 午後、母と一緒に湯島聖堂のアジア協会に行った。 早く着いたので、ディクソン氏、ホートン夫人、ミス・ジョンソンだけしかまだみえていなかった。 しかし間もなく他の方たちもみえて会は始まった。 書記が前回の記録を読み、マ…
1879年1月13日 月曜日 今朝から授業を始めたが、三人の生徒が現れた――お逸、こまつ、そして梅太郎である。 「工部大学校に入ってディクソン氏に習いたいんです」 梅太郎はその準備として勉強に来るのだが、それがどんなに大変なことか彼は全く分かっ…
【クララの明治日記 超訳版解説第68回】 『すっかり日本人におなりですな』 「にっこり笑って、こんなことをポンと云えるなんて、超格好良いよね、うちの父様!」 「……わたくし的には、こんな些細な事でそこまで感動できる貴女の方にある意味感動しますわ…
1879年1月11日 土曜日 昨日も今日も私はお逸のところへ遊びに行った。 お逸を訪問する時には戸口に行って、恭しく告げるのだ。 「ゴメンクダサイマシ」あるいは「オ頼ミ申シマス」と。 そうして、誰かが中から「お入り下さい」と云うのを待つという寸…
1879年1月10日 金曜日 今日はウィリイの出発の日。 彼に行かれるのはとても悲しい。 シェークスピアは「別れの甘き悲しみ」と云っているが、それは間違いだ。 もっともジュリエットとロメオの場合はそうだったかもしれない。 しかし、たった一人の兄…
1879年1月7日 火曜日 明日はウィリイが出発するので、今夜の夕食に高木三郎氏をお招きしに私は出かけた。 高木氏は銀座の津田縄の店の二階に住んでいる。 住むには不適当なところなので恥じておられるが、間もなくもっと住み心地のよい地域に引っ越さ…
1879年1月6日 月曜日 今日は起きて階下に下りていったが、一日中だるくて苛々した。 あまりすることがないのも苛々する原因だったかも知れない。 お逸、梅太郎、小鹿さんがみえた。 小鹿さんはとりわけ快活で助かった。 ウィリイは可哀想にあまり休め…
【クララの明治日記 超訳版解説第67回】 「クララ一家のクリスマスの模様と正月の我が勝家の様子、対照的なコラボレーションだったねー」 「でも内容云々より、このクリスマスパーティーの際のホイットニー家の人口密度が非常に気になるところですわ」 「…
1879年1月4日 土曜日 私は風邪から肺炎になりかけて二日間寝たきり。 とても苦しくて、今夜初めて床の上に起き上がっている。 ウィリイはゆうべグレイ氏、アンガス氏、タムソン氏、バー氏と一緒にディクソン氏のところへ招かれた。 母の留守中には大勢…
1879年1月2日 木曜日 お正月の二日目となると、あまり早くは起きなかったが、昨日と同じようによく晴れた一日だった。 午前中に何人かのお客様がみえた――伊藤氏、田中氏、富田氏、村田氏、滝村氏など。 母とウィリイは加賀屋敷に出かけたので、私は一…
1879年元旦 新年おめでとう 木曜日 美しい朝日の輝きとともに新年はやって来た。 これほどよく晴れた美しい元旦は初めてだ。 目を覚まして霜の降りた地面や、澄み渡った青空――それは日本の空でもなく、ヨーロッパの空でもなく、アメリカの空でもなく、普…