1879-08-01から1ヶ月間の記事一覧
【クララの明治日記 超訳版解説第91回】 「今週は思いもかけない、お逸のいつもとは違った側面が見られましたわね。 貴女、普段は好き放題振る舞っているし、日本の身分の高い方にも会っているのに、実は結構上がり症でしたの?」 「し、仕方ないじゃない…
1978年8月30日 土曜 今日は私の誕生日だが、母の気分がよくないので、いつものお祝いは延期した。 午前中図書クラブに行き、大山夫人を訪問。 二人のお子様――おのぶさんとおみつさんというかわいいお嬢様にお目にかかった。 上の方は全然恥ずかしがら…
1879年8月29日 金曜 午後、お逸と私は、最上のよそ行きで着飾って訪問巡りにでかけた。 私たちは一緒に出歩くのが大好きだ。 今日は、グラント夫人に最後の訪問をし、それから、おやおさん、現在の松平おやお奥様を訪ねるつもりである。 四時頃、予定…
1879年8月28日 木曜 今夕森氏のご招待で、永田町の竣工したばかりの新しい邸宅で、グラント将軍夫妻にお目にかかった。 九時少し過ぎに私たちは勢揃いして出かけた。 今宵の母はリビーおばさんから頂いた百ドルの絹の服。 ウィリイは初めての燕尾服。…
【クララの明治日記 超訳版解説第90回】 「本日のメインは当然上野での“御前試合”ですけれど。 その前、今回の日記の冒頭部分がいきなり気になったのですけれど、近所の“乃木氏”というのは、ひょっとして……」 「それって、若い女の子を、服の上からじっく…
1879年8月25日 月曜 今日はありがたいことに、上野で御前試合を楽しむことが出来た。 維新以来、東京で初めて行われたものである。 津田氏のお招きで二時に行く筈が、いろいろな差し障りがあって出発が遅れた。 しかし二時半には、全速力で銀座通りを…
1879年8月24日 日曜 昨日の午後、母と一緒に駿河台にブランシェー夫人を訪ねたところ、夕立に遭った。 今日は近所の乃木氏が来て、おかしな仕草が面白かった。 オルガンを見てはとても珍しがり、油絵や着色石版画などを見て仰山に驚いた。 私が情景の…
【クララの明治日記 超訳版解説第89回】 「冒頭のグラント将軍暗殺の噂は、貴重な証言ですわね」 「今日一般的には全く知られていないもんねー。 ていうか、少なくとも私はクララのこの日記による証言以外、そんな話、聞いたことないわけで」 「結果的に、…
1879年8月22日 金曜 昨日の朝、台所で大騒動が発生。 やさしそうな料理人の金太郎が夫の威厳を示すために、ハルの髪の毛をつかんで引きずりまわし、薪の棒でぶったのだ。 当然のことながら、怒り心頭に発した妻は、私に愚痴をこぼして気晴らしをした…
1879年8月20日 水曜 「競馬を見に市ヶ谷の戸山学校に行きませんか?」 今朝、森夫人にそう誘われた。 しかし、夕飯にビンガム夫人とジェシーがみえることになっていたので、勿論私は行かなかった。 ウィリイが私の代わりに行って、とても面白かったと…
1879年8月19日 火曜 今日は一日中、母の具合が悪く、ウィリイは家にいて母の世話をした。 私は買い物があるので、十時頃町へ出かけた。 亀屋で買物をして十字屋へ行き、そこでウィリイのためにノートを買った。 ずっと前から知っているこの店の番頭は…
1879年8月18日 月曜 今朝は、いろいろ用事のために早く出かけた。 はじめに永田町に行き、センタクヤで「この頃シーツやテーブル掛けのできが悪い!」と叱り、そこから築地へ。 まず第一にアメリカ公使館に行った。 客間でしばらく待っていると、ビン…
【クララの明治日記 超訳版解説第88回】 「上野でのクララの白昼夢。まるで“実際に見てきたかのような”描写でしたわね」 「まがりなりにも小説家志望だっただけのことはあるよね。 私なんて最初に軽く読み流したときには、実際の光景かと思っちゃったくら…
1879年8月16日 土曜 天気のよい八月の暑さと日射しにも負けず、私は忠実に図書委員としての仕事についていた。 しかし、先ずあの明白なる必需品「食事のための何か」を探しに開拓使に行かなければならなかった。 成功するかどうか疑わしかった。 とい…
1879年8月13日 水曜 今日、母と上野に行き、大木の下や名公の墓所の涼しい陰で遊んだ。 上野は美しいところで、神々が住むにふさわしいところだ。 私たちは精養軒に行き、ボーイに「スズミ」<涼を求め>に来たのだと云うと、一番涼しいところだと云…
1879年8月10日 日曜 今朝は教会に行かずに、アディと家にいた。 午後の日曜学校にも行かなかった。 母が私を静かにさせておきたかったのである。 もしかしたら、今週か来週、私たちは日光に行くかもしれないからだ。 今夜はいつにない大きな集会があ…
1879年8月9日 土曜 グラント将軍は長居をし過ぎた! 『もしグラント将軍が早く帰らないと、暗殺されるだろう。資金が逼迫しているからな』 ビンガム公使の元に届いた匿名の手紙にはこう記されていたそうだ。 昨日聞いたのだが、杉田家のおよしさんの赤…
【クララの明治日記 超訳版解説第87回】 「都市伝説の定番である『ベットの下の男』。 まあ、この場合実際に潜んでいたのは女性なわけだけど、まだ十歳そこそこのアディちゃんにとっては男も女も関係ないわけで。 ひょっとしてこの話が巷に流布して、現在…
1879年8月7日 木曜 昨夜は恐ろしい雷雨で、轟音とともに近くの家に雷が落ちた。 おまけに地震もあったので、恐怖の一夜であった。 今朝はずっと、洋服のことや使用人のことについて、洋服屋と話をしていた。 田中はなかなか利口だ。 私たちに合う料理…
1879年8月6日 水曜 ウィリイが帰ってきてから、家が狭くて困っている。 陽気なウィリイがいることで、私たちが感じている不便さは大体帳消しにされてしまう。 とはいえ、やはりとても不便だ。 特に一人でお祈りをしたくとも引きこもる部屋がない。 私…
1879年8月5日 火曜 今朝、ウィリイと一緒に横浜に出かけたが、八時三十分発の汽車に乗り遅れて、駅で一時間余りも待った。 横浜に着いてから、ウィリイは税関へ、私はヘップバン夫人のお宅へ行って、とても楽しい一日を過ごした。 ヘップバン夫人は十…
1879年8月4日 月曜 新しく来た料理人である金太郎と女中は、シュウとタケにはとても及ばない。 金太郎は「ボーイ」だったので料理のことはほとんど知らないのだ。 おかみさんのハルは働き者だけれど、給仕をしたことがない。 従って今夜のライト氏とウ…
1879年8月3日 日曜 今日はとても暑い――太陽は飽くことなく照っているようだ。 母は気分が優れず、ウィリイは母の世話をするので家におり、アディと私だけが教会に行った。 マッカーティ先生はモーゼの信仰と生徒について面白い話をして下さった。 先生…
1879年8月1日 東京・赤坂氷川町 金曜 麗しき国の麗しき日。 自然は生命と美に満ちあふれ歓喜する。 しかしこのような景色と音の調和の中で、私たちの感情はしばしば不調和を引き起こす。 ちょうど一週間前の先週金曜日。 ウィリイは疲れ、旅やつれして…