Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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【#CREA WEB】新型コロナ感染者がなぜ急増? 今、イタリアで起きていること

新型コロナ感染者がなぜ急増?今、イタリアで起きていること
 世界中に感染拡大している新型コロナウイルス
 2020年3月12日(木)にはWHO(世界保健機関)がパンデミックを表明しました。

 日本国内で確かな状況が見えないなか、感染が拡大している世界の実情も多くが不明……。
 そこでイタリアに住むライター・岩田デノーラ砂和子さんが “移動制限区域の内側”からレポート。現地報道から読みとれること、感じたことを届けてくれました。

イタリア全土で移動が制限されました
 2020年2月下旬から爆発的な感染者数を記録しているイタリア。

 収束の気配が見えない3月9日(月)に新型コロナウイルス対策における3つめの法令を発布。イタリア全土で移動や行動を制限しましたが、3月11日(水)にはさらに内容を強化。それは、バールやレストランなど店舗を終日閉めるというドラスティックなものでした。

かつては感染者ゼロに 抑え込まれていた
 まず、イタリアでの新型コロナウイルス感染拡大の経緯をおさらいします。
 初めて感染が確認されたのは、1月下旬のこと。ローマを旅行中の中国人2名が陽性であることが判明しました。
 2名はすぐに感染専門病院で隔離入院。同行グループ全員にも検査が行われ、すべて陰性でしたが検疫隔離となりました。
 次の騒動は1月30日(木)で、ローマ・チヴィタベッキア港に入港したクルーズ船内で、マカオ出身の女性が発熱。
 2回の検査で陰性、かつ別のインフルエンザ感染が確認され、乗客乗員約7,000名のうち下船予定だった約1,000名が下船となりました。 
 このことからイタリア政府は即日にイタリアと中国を結ぶ路線をブロック。
 2月上旬には、日本同様に武漢からイタリア人を引き揚げ、検疫隔離。春節が終わってイタリアに帰国する在住中国人には、2週間の自宅隔離を要請しました。
 水際対策が功を奏したのか、中旬には陽性者は見当たらず(先の中国人旅行者2名のほか、陽性だったイタリア人1名も回復)、イタリアは見かけ上“感染者ゼロ”だったのです。


北イタリアで 経路不明の感染者が発覚
 そして、2月20日(木)。ミラノから約60キロの街、ロンバルディア州コドーニョで、38歳の男性に感染が確認。
 男性には中国渡航歴がなく、唯一考えられたのは、1月中旬に中国から戻ったイタリア人の友人と夕食をとったこと。
 でも、この友人は検査の結果、陰性および罹患歴もないことがわかりました。
 感染経路不明の陽性者が出現。イタリアに激震が走りました。
 ただちに濃厚接触者が追跡され、全員検査をしていくと、地域内での感染の広がりが見えてきました。
 男性が発熱時に診察した医師や看護師、同時期に病院を訪れていた患者なども感染……。

※感染経路は現在、調査研究中。1月中旬に中国とコンタクトがあったドイツ人男性がおり、この男性が勤める会社でも陽性者が数人発覚。コドーニョとの接点もあることなどから、彼が“感染者No.0”の疑いがあると報じられています。

 感染が抑えられていた時期でもあり、病院では有効な防疫対策がとられていませんでした。
 当時も今も、対策の前線に立ち続けるイタリア国家市民保護局長アンジェロ・ボレッリ氏は「責めても仕方がない」と、ジュゼッペ・コンテ首相とともに、必死の防疫対策を開始します。


マスクと一緒に、パスタや小麦が消えた
 まず、イタリア国内で感染者の接触者を追跡し、“感染の可能性がある”全員を検査。そして、アウトブレイクしている地域を特定。同時に、陽性者の約半数に無症状の感染者がいることがわかりました。
 対象地域で多くの検査を行うことで、無症状な感染者が多数いることも判明。
 そこで2月23日(日)には対象地域の移動制限、休校、イベント中止などが盛り込まれた緊急法令を発令。
 いわゆる移動が制限される「レッドゾーン」が誕生したのです。
 突然の封鎖を警戒したミラノや周辺都市では、買い占めパニックも発生。
 パスタや小麦、トイレットペーパー、マスクなどが一時期、店頭から消えました。

遠い南イタリアでも感染! しかし対応は早かった
 レッドゾーンの出現から間もなく、各地でも感染報告が届くようになりますが、経路をたどれば、北イタリアの感染地域もしくは付近との接触があった人がほとんど。
 たとえば、私の住むイタリア最南端のシチリア州パレルモでも、2月25日(火)にベルガモ(ミラノ近郊)からの旅行者1名に陽性が判明。
 感染者は即座に隔離入院。また感染者が滞在していたホテルでは、濃厚接触が疑われる同行者29名とスタッフ合わせて約40名をホテル内で検疫隔離させたのです。
 感染発覚の翌朝には、防護服の検査員が全員検査に訪れるなど、それはそれはあっという間の出来事でした。
 2週間の検疫隔離期間中、繰り返された検査で無症状感染者が2名、見つかっています。
 全検査と厳格な隔離措置により、感染発覚時も検疫中もホテル周辺で混乱が起きることもなく、平穏に日々は過ぎていきました。
 もし、この無症状感染者が旅行を続けていたら? 疑心暗鬼になり、パニックも起きていたかもしれません。
 ほかにも、陽性者が確認された街の3,000人全員に検査が実施されたり (無症状感染者含む陽性者数名を発見)、感染の可能性があるエリアをしらみつぶしに検査して状況を可視化したり。
 そのため感染のない地域では、ほとんど不安を感じないまま過ごせていました。
 しかし、それは一方で油断を促すことにもなったのです。
※ちなみにイタリアはホームドクター制。検査をしたい誰もが病院には駆け込めません。まずホームドクターおよび専用番号に連絡し、症状が認められた場合に病院の外に設置されたテントで検査、もしくは検査員が訪問します。

イタリア人の習慣と危機感のなさが 原因のひとつ!?
Navigli di sabato al 50%, a occhio (sono tutti dal lato al sole, di là è più vuoto). pic.twitter.com/gAoXnM2PWW
― Luca Sofri (@lucasofri) 2020年3月7日コロナ感染拡大が報道されたにもかかわらずナヴィリオで楽しむミラノの人々。
 当時イタリアでは、コロナを怖がり過ぎて経済を停滞させる方が恐ろしい!  と、できるだけいつも通りの暮らしが続けられていました。
 挨拶の握手や抱擁、両頬へのキス。おしゃべりなイタリア人たちが顔を突き合わせて楽しむアペリティーボ。感染地域は特定されているから、それ以外は大丈夫、という感覚で。

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Un aperitivo a Milano, ho raccolto l’appello lanciato dal sindaco @beppesala dal Pd Milano. Non perdiamo le nostre abitudini, non possiamo fermare Milano e l’Italia. La nostra economia è più forte della paura: usciamo a bere un aperitivo, un caffè o per mangiare una pizza. Coraggio, reagiamo e uniti ce la faremo!  🇮🇹

Nicola Zingaretti(@nicolazingaretti)がシェアした投稿 - 2020年 2月月27日午前11時45分PST

ジンガレッティ書記長本人のインスタグラムより。

 元ラツィオ州知事でイタリアの連立与党、民主党のジンガレッティ書記長も、わざわざミラノのナヴィリオで、アペリティーボを楽しむ様子をSNSにアップ。
 でも数日後、見事に感染……。
 そのほか、なんとレッドゾーンにもかかわらずコドーニョからトレンティーノ州にスキーバカンスに出かけた老齢カップルや、わざわざ南イタリアから北へスキーに出かける人も! 
 彼らものちに陽性が確認されました。

全土に感染を運ぶ!? ミラノから大脱走
 そんな危機感のなさが危惧されていたころ、ミラノを含むロンバルディア州全体と北イタリア14県(報道時は11県)が封鎖されると3月7日(土)の夜にスクープとして報じられました。
 すると今度は、慌てて詰めたであろうスーツケースを引いた大群が、ミラノ中央駅に集結。ひとまず乗れる列車やバス、車で、トスカーナやローマ、ナポリ、そしてシチリアへ……。
 しかし、翌朝の正式発表で伝えられたのは、封鎖というより行動抑制がコンセプトの法令でした。
 休校、イベントの中止、ショッピングセンターの休日およびその前日の休業、飲食店の営業時間制限(6:00~18:00)、ミサや結婚式、お葬式の中止。
 持病のある高齢者の外出自粛、指定エリアの出入り禁止(仕事や健康上の理由を除く。ただし許可証が必要)などなど。
 イタリア人の老若男女は、集まるのが好きな人が多く、しかも人と人との距離が近いときでもマスクは一般的につけないし、咳エチケットも浸透していない。
 日本と比べても感染対策の意識が低いうえ、危機感もないから、行動に対する遠回しの“注意勧告”といった趣だったのです。
 逃亡した人々が到着するであろう中部や南部の駅、空港では検疫を強化。
 各州知事が北イタリアから到着した人に、ホームドクターへの通達および14日間の自主隔離も通告しました。
 しかし、時すでに遅し……。
 煽る報道と常軌を逸した非常識な人々によって、ウイルス感染の可能性濃厚な人々がイタリア各地へ散ってしまったのです。
 その数、なんと数万人! 
「一人で自宅隔離になったら困る!  実家に帰る!」。そんな気持ちはわからないでもないし、家族を地元に残してきたビジネスマンもいたでしょう。
 でも、各地では怒りの声が爆発しました。頼りの実家に到着するも家に入れてもらえず、車で自主隔離を迫られた男性もいたようです。

イタリアでは今、何が起きているのか?
温厚なコンテ首相が優しく語りかける。

 この大勢の逃亡劇から2日後、3月9日(月)の夜に再びコンテ首相が会見。

 ロンバルディア州を中心とした北部に課せられた法令を3月10日(火)から全国に適用するといった旨を、今度はスクープ前に首相自ら予告したのでした。

「ひとり一人が責任ある行動をし、私たち自身、そして私たちの家族、私たちの両親、そして私たちの祖父母たちを守りましょう。習慣を変えるのは難しいことです。でも、猶予はありません。外出を控えるときです。私は家にいます」

 この直後の真夜中には、それでも各地のスーパーマーケットに行列ができてしまいました。が、棚が空っぽになるほどの騒ぎではなく、ほんの一部の“真に身勝手な人々”の間で起きただけ。イタリア人にも“緊急事態”がやっと浸透し始めました。
 そして3月11日(水)の夜。さらに対策を強化する法令が発表されました。冒頭でご紹介したように、全国で飲食店や店舗を終日クローズするというものです。
 このときのコンテ首相の会見は、より多くの国民の心を打つものでした。
「経済より今、優先すべきは国民の命です。今は人との距離が離れますが、それは再び熱く抱き合うため。国民がひとつになり、一緒に戦い抜きましょう」
 思い切りのよい決断に、さすがのイタリア人も「それぐらいしないとダメだね」と覚悟を決めたようで、現地はとても落ち着いています。 
 首相の会見での言葉「私は家にいます #iorestoacasa」はハッシュタグになり、SNSで料理や家で過ごす様子がアップされるようになりました。また、#andratuttobene(きっと全てうまくいくよ)が虹とともに描かれた旗をバルコニーや窓に掲げるプロジェクトが始まり、日夜問わず戦う病院スタッフや不安な人々の気持ちをホッコリさせてくれています。
 感染者数が多い分、高齢化社会のイタリアでは持病を持つ高齢者の死亡も増加しています(死因が別でも感染していたら感染者数にカウント)。心配は続きますが、医療崩壊を回避するために、必死に対策が進められています。中国から医師団も応援派遣されました。

※「年齢で命の選別をする、高齢者に挿管しない」とあちこちのニュースメディアで取りあげられたようですが、フェイクニュースであると判明。該当の病院が警察に被害を提出済み。

 今、ひとり一人ができることは、もうこれ以上、不用意な感染を招かないこと。高齢者にうつさないこと。それが医療機関に負担をかけず重症者を救う助けになる。

 対策本部の明確な方針や現状、透明性のある検査数も毎日、ライブな記者会見で伝えらえているため、疑心暗鬼になったり余計な詮索でストレスを感じることもなく、シンプルに(珍しく)国全体が一丸となり戦っています。

 だから、#私は家にいます。そして #きっと全てうまくいく、と願って。

※掲載の内容は2020年3月13日(金)時点のものです。

岩田デノーラ砂和子