Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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【#ハンギョレ】「誰を救うのか」と問えば…「全員」と答える医療陣

[新型コロナ100日] 全世界の医療陣「涙の死闘」
 4月8日、昨年最後の日に中国の武漢新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発病が公式報告されてからちょうど100日目を迎える日だ。先月11日、世界保健機関(WHO)は通常「パンデミック」(感染病の世界的大流行)宣言で知られる「国際公衆保健非常事態」を宣言した。1948年の創設以来3回目で、1999年に現行の伝染病警報段階の手続きができてからは2009年の新型インフルエンザ(H1N1)の流行以来2回目だ。

 事態はきわめて厳しい。7日夕方(韓国時間)、全世界のCOVID-19累計確定感染者は136万人、死者は7万6000人を超えた。今後も少なくとも数週間は、COVID-19感染者と死亡者が増え続けるという暗澹たる見通しが出ている。

 COVID-19パンデミックの中、韓国では今年2月に大邱市医師会のイ・ソング会長が書いた1枚の訴えに、約350人の医療関係者がCOVID-19診療現場にはせ参じた。慶尚北道慶山(キョンサン)では3日、COVID-19患者を診療した内科医ホ・ヨングさんが肺炎の悪化死去している。

 先週アントニオ・グテーレス国連事務総長は「世界は第2次世界大戦以降最悪のグローバル危機を迎えている」とし、国際連帯と協力を訴えた。爆発的なウイルス拡散に対応しきれていない医療環境で、一人でも多くの命を生かそうとする世界の医療人の献身と奮闘には、涙ぐましいものがある。

■戦場のような医療現場…「患者選択せざるを得ない状況に…感情を抑えなければ」

 今月5日、ニューヨーク州立大学病院の救急室。米CNNテレビが現場を見守っていたわずか40分の間に6人の患者が心拍停止となり、そのうち4人がなすすべもなく亡くなった。その間、患者に心肺蘇生が必要な状況を示す「コード99」のベルが5回鳴った。約400の病床の患者全員が、ようやく呼吸を維持しているか、ついに呼吸が止まってしまうCOVID-19感染者だ。にもかかわらず、絶えず押し寄せる患者で、医療陣は息をつく暇がない。

 CNNは、医療陣が死者の遺体を収拾して病床を消毒するやいなや、別の患者が咳をしながら酸素マスクをつけたまま横になると報道した。救急専門医のシンシア・ベンソンは「こんなに短期間にこれ程の病気と苦痛と死亡率に対応するのは感情的にも大変だ。我々は準備ができていない」と打ち明けた。重症呼吸器疾患治療の必須設備である人工呼吸器も専門の医療人材も非常に不足している。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、ニューヨークだけでもさらに3万個の人工呼吸器が必要だと主張した。しかし、人工呼吸器も万能ではない。同病院の救急医師ロレンツォ・パラディーノは、COVID-19患者の人工呼吸器生存率は他の肺疾患患者より低いと話した。

 押し寄せる重症患者たちを前にして、医師がまず誰を生かすべきかの選択を迫られるのは、あまりにも非人間的な悲劇だ。欧州で最悪の状況を迎えているスペイン、イタリア、英国などでは、そのような事態が切迫している。英国医療人協会のジョン・チジョム医療倫理委員長は先週、現地日刊紙『ガーディアン』への寄稿で「協会は(治療優先順位の)指針を作っている。悲しいが、そのような指針が倫理的決定に対する途方もない挑戦になる可能性を排除せず、決定の残忍さと道義的苦痛を和らげることもできない」と述べた。また「誰もそのような決定をしたくはないが、医療資源が非常に足りない場合、決定を下さなければならないだろう。今後数週間以内に実際にそのような決定が求められる厳しい状況が来れば、『怒り』と『苦痛』が伴うだろう」と述べた。

■「毎日死を目撃」…医療人のトラウマ

 英エディンバラ精神科医リベッカ・ローランスは最近ツイッターに「突飛かもしれないが。私が医師でなかったら、このような悲惨な状況に直面しなくても済んだのに。自宅隔離できたらいいのに」と書き、最後に「ごめんなさい」と付け加えた。これとて、生と死が錯綜する現場で医療関係者が味わう当惑と深刻なトラウマ(心理的衝撃)を示す一例にすぎない。

 米スタンフォード大医学部のアゴバン・サリス博士とワシントン大のジェシカ・ゴールド教授(精神医学)は先週、米オンラインメディア「ボックス」への共同寄稿で「ローランスは、『COVID-19パンデミック』に直面した医療人は恐怖感を示してはならないという考えから謝罪したようだ。医師は英雄であると同時に人間であることはできない」と書いた。

 また「大多数の医師は、患者の前で涙を見せるのは不適切または弱い態度であり、専門家らしくないという『感情抑制』の教育を受けている」とし、医療関係者が患者の命を扱う過程で負うトラウマに注目した。「私たち(医師)にも怒り、悲しみ、恐怖、心配のような巨大な感情の波があるのであり、ただ単に医師という職業のためにそれを抑えている」というのだ。

 先月、イタリア北部のロンバルディア州のある病院では、COVID-19の陽性判定を受けた看護婦2人が、恐怖とウイルスの伝播に対する憂慮から、自ら命を絶った。イタリア医師労組のカルロ・パレルモ委員長は「医療陣のストレスは言葉では言い表せない。医療現場の最前線で毎日死を目撃し、感染しているかも知れない誰かと共に働き、数日後にその誰かが集中治療室にいたり死亡したりするのを見る人間(の心理状態)は理解できる」と述べた。

■「COVID-19と戦う武器をくれ」…献身的な医療関係者たち

 COVID-19パンデミックは、個人だけでなく国家レベルの「保護装具および医療設備争奪戦」のような人間の素顔もあらわにしたが、同時に人間の崇高な人類愛と連帯も照らし出している。ワクチンや治療薬どころか、医療用マスクや保護装具さえ著しく不足する中、医療関係者はCOVID-19との戦いの最前線で死闘を繰り広げている。

 英BBCは5日、医療関係者が保護装具の不足のため、医療用ゴミ袋やビニールエプロン、借りてきたスキーゴーグルなどを着用して患者を見る現実を報じた。イングランドのある病院の医師ロバーツ(仮名)は「集中治療室はCOVID-19患者でいっぱいになり、がん患者の手術まで含めて『緊急度の落ちる』すべての治療が取り消された。医療人は患者を1日13時間にわたって見ているが、当座しのぎで保護装具は個人で用意している」と話した。

 医療装置がきわめて不足している現実は、患者だけでなく医療関係者の安全さえ脅かす。先週、米国では看護師の労組「全国看護師連合(NNU)」の主導によりカリフォルニア、フロリダ、ミズーリ、テキサス、ネバダノースカロライナの6州の15の病院で、所属看護師が医療装置の普及と医療人の安全を要求する連帯デモを繰り広げた。フランス、ギリシャ、メキシコ、コロンビアなどの国々でも、保護装具の確保を求める医師と看護師のデモが続いている。

■医療人感染「パニック」…スペインとイタリアだけで3万人

 コロナウイルスは医者だからといって避けて通ってはくれない。特に、米国や欧州では患者が急増していることから、ベッドや人工呼吸器はもとより、医療用マスクやガウンも非常に不足しているのが現状だ。患者を治療する医療関係者の院内感染は、すでに現実のものとなっている。医師や看護師も感染すれば隔離治療を受けなければならないため、ただでさえ不足している医療人材がより足りなくなる。

 医療関係者の感染も非常事態だ。ドイツの日刊紙『ジュートドイチェ・ツァイトゥング』の2日の報道によると、ロベルト・コッホ研究所による調査の結果、同国内の医療人感染は2300人を超えた。同研究所は「この数値も控え目なもので、実際の感染例はこれよりはるかに多いだろう」と述べた。今回の調査は、中および大規模病院で勤務する医師と看護師のみを対象としたため、個人医院、診療所、引退後に診療現場に復帰した医療関係者、老人ホーム、外来患者専門病院の医療従事者の事情は、実態すら把握されていないということだ。

 米ニューヨーク市立病院も、先月末までに200人を超える医療人がCOVID-19に感染し、2人の看護師が死亡したと『ニューヨークタイムズ』が報じた。ある医師は「病院はまるで培養皿のようだ」と語った。通常は感情に左右されない医療関係者でさえ、各病院の救急室や集中治療室で同僚の感染が相次ぎ、パニックに陥っていると同紙は伝えている。

 COVID-19の感染者数が米国に次いで2位のスペインと3位のイタリアの状況は、これよりはるかに深刻だ。スペイン保健省は4日、1万8324人の保健医療従事者がCOVID-19に感染したと発表した。同国の全感染者の15%にのぼる。スペインは外国の医療人材356人に加え、医学部と看護大学の学生までも緊急動員したが、力量不足だ。イタリアの国立保健研究所と医師協会の同日の集計でも、同国で1万1000人あまりの医療関係者が感染し、73人が命を落としている。

 4日のAP通信の報道によると、COVID-19の発源地として知られる中国でも3000人を超える医療陣が感染して14人が死亡し、アラブ・イスラム圏の最多人口国であるエジプトでも17人の医療関係者が陽性判定を受けた。毎日新聞の報道によると、同日までにCOVID-19に感染した日本国内の医療従事者は少なくとも153人だったことが分かった。これに先だつ2日、英BBCは、スコットランドだけでも国民保健サービス(NHS)所属の医療人9719人が感染、感染の疑われる症状、予防的自宅隔離などの理由で医療現場から離れていると報じている。

 命さえ保障されない最悪の医療状況の中でも、世界各国の「ヒポクラテス」たちの職業精神は光を放っている。すでに引退した医療関係者のボランティアも殺到している。最大のCOVID-19感染国である米国でも、最も状況が深刻なニューヨークだけで、既に引退していたり休職中だった医療関係者が8万人以上も医療現場に復帰したと、2日にAP通信が伝えた。病院でさえ医療用マスクが足りないため、持参する人もいる。欧州各国でも同じ光景が続いている。ドイツはフランスなど隣国の患者を自国に移送して治療している。

 世界的な「感染症人種差別」の雰囲気の中、社会的マイノリティの献身も目立つ。1日、英国社会はCOVID-19との戦いで初の犠牲者となった4人の医師に敬意を表する追悼ムードに包まれたとアルジャジーラが報道した。図らずも、いずれもアフリカ、中東、アジアなどの外国出身のムスリム移民で、欧州では血統的かつ宗教的マイノリティだ。英国イスラム医療人協会のサルマン・ワカル事務総長は「彼らは献身的な家長であり医師であり、COVID-19との戦いで究極の自己犠牲の精神を示した」との言葉を贈った。英国の国民保健サービス(NHS)は、雇用する医療人の40.1%が黒人および血統的マイノリティグループ(BME)だ。

■「差別、人種主義、外国人ヘイトのない国際連帯を」

 先の見えない恐怖は、より絶望的なものだ。今のCOVID-19パンデミックがそうだ。しかし、一部の国では、かすかに希望の兆しも現れている。COVID-19発源国の中国は6日、統計を取り始めて以来、初めて死亡者数「0」を記録した。同日の32人の新規感染者も全て国外からの逆流入組で、本土内での発生は先月中旬以降、3週間以上にわたって一桁台を記録している。

 7日現在、米国に次いで累計感染者の多いスペイン(約13万7000人)でも、新規感染者数と一日の死亡者数は4日連続で減少傾向にある。韓国もこの2週間の新規感染者1294人の52%が海外からの流入組およびその関係者で、国内の一日当たりの発生数は二桁を維持している。しかし一部の国では、感染者の完治判定以降の再感染が続出するとともに、集団感染の懸念が消えていないため、当分は厳しい「社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)」を続けるべきという指摘が多い。

 2日、国連総会は加盟193カ国の全会一致で「COVID-19の統制、軽減、根絶のための国際協力と多国間主義が求められる。…パンデミックへの対応の過程において、いかなる形態の差別、人種主義、外国人ヘイトにも居場所はない」とし、国際連帯を強調する決議を採択した。9日には国連安全保障理事会が緊急会議を開き、COVID-19対応に向けた国際協力を協議する予定だ。

チョ・イルジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/936068.html