Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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【#THE PAGE】「日本はなぜ死亡者数が少ないか」専門家会議が挙げたいくつかの要因

 新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議(座長:脇田隆字国立感染症研究所所長)は29日夜、記者会見し、日本の死亡者数や重症者数が欧米諸国と比べて低く抑えられている要因について、現時点での見解を示した。クラスター(感染者集団)対策の効果をめぐり「限界論」も取り沙汰される中で、欧米とは異なる手法のクラスター対策を通して、ウイルス伝播の仕方の特徴を早期につかみ、国民への注意換気や対策につなげられたと強く打ち出した。

中国由来の「第1波」などを早期に検知
 なぜ日本の死者数や重症者数が欧米諸国より低く抑えられているのか。専門家会議で副座長を務める尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は、まず一般的に語られている要因として、▽国民皆保険による医療アクセスの良さ、地方でも高い医療水準、▽全国に整備された保健所など高い公衆衛生水準、▽市民の衛生意識の高さや行動変容への国民の協力などを挙げた。

 その上で「一般的に知られていない要因」として(1)中国由来(第1波)とその後の欧米由来(第2波)の感染拡大の早期検知、(2)日本のクラスター対策の成果、を特に強調した。

 専門家会議がこの日発表した「状況分析と提言」によると、日本では、1月から2月にかけての中国由来の流行について、保健所によるクラスター対策などで早期に把握し、2月25日までに149の感染事例が報告された。同じ時期に、イギリスやフランス、ドイツでは10数例しか見つかっておらず、アメリカでも53例の確認にとどまった。これが欧米では水面下での感染拡大につながり、3月中旬以降の感染爆発につながったと分析する。

「3密」などウイルス伝播の特徴を早期に把握
 さらに尾身氏は、保健所やクラスター対策班の取り組みについて、こう自賛した。「日本は新型コロナウイルス感染の伝播の特徴をかなり早い時期から認識していた」

 その特徴とは、専門家会議が3月2日の「見解」の中で明らかにした「感染者の約80%は他の人に感染させていない」点や、3月9日の「見解」で呼びかけ、後に東京都の小池百合子知事が「密閉・密集・密接」(3密)という形で訴えて人口に膾炙した「感染リスクが高まる3条件」のことだ。

 感染者の約80%が人に感染させないという特徴は、2009年にパンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型インフルエンザのそれとは大きく異なるものだった。尾身氏によると、専門家会議メンバーの押谷仁・東北大学教授や厚生労働省クラスター対策班メンバーの西浦博・北海道大学教授も「不思議だ」と首をかしげていたという。

 8割は人にうつさないが、残りの2割のうち、まれに多くの人に感染させる感染者が出てくる。これによってクラスターが発生し、さらに感染が拡大する――。こうした推察のもと、専門家会議は「感染初期の段階でこのクラスターを制御できれば感染拡大を一定程度は抑えられる」という戦略を描いた。

諸外国とは異なるクラスター対策の手法
クラスター対策は諸外国でも行われている。しかし、日本の対策はそれらとは違う手法を取っているという。何が違うのか。尾身氏によると、それは濃厚接触者の調査における時間軸の「向き」だという。

 ほとんどの諸外国では、新規に見つけた感染者を起点に、その濃厚接触者を洗い出し、実際に発症するかどうか将来の感染者を探すという「前向き」な調査を行っている。

 日本では、そうした「前向き」な調査に加え、感染者の過去の行動を「さかのぼる」のだという。新型コロナウイルスの伝播の特徴を踏まえ、感染者を見つけた際に「どこに行ったか」などを調査し、共通の感染源となった場所や、その場所にいた濃厚接触者を突き止める。

 つまり、日本の「さかのぼり」調査は、感染が起きた後の「感染連鎖を見逃さない」ことに力点が置かれていた。こうした調査はこれまで結核患者などに保健所が行ってきた調査方法が土台となっており、これによって発見できた特徴が「3密」だという。

クラスター対策「限界論」に対する反論
 クラスター対策をめぐっては、感染拡大が加速して感染者が急増すると対応しきれないとの「限界論」を指摘する見方もあり、この日の会見でも「保健所のマンパワー的にクラスター対策にどこまで効果あるかという声もある」との質問が出た。

 こうした見方に対し、押谷氏は「クラスター対策という言葉が独り歩きしているところがあって、『クラスター潰し』だけをしているように誤解されている」と反論した。

「日本では諸外国に比べてたくさんクラスターが見つかっているが、(それによって)クラスターに共通する特徴を見つけることができた。最初に見つけたのが『3密』。そういう環境を『なるべく避けてください』というメッセージを効果的に送ることができた。これは諸外国ではほとんどできていない。日本では、未然にクラスターが発生することを防ぐことができる体制にできた」

 さらに「クラスターを見つけることで(リンクの追えない)孤発例が見つかる。孤発例がたくさんできるということは、その裏側にきっとクラスターがあるはずという前提に立つと、それだけ地域で感染伝播がある可能性がある。緊急事態宣言をしたように、より積極的な対策をしないといけない。そういう兆候を見つけられるのが、クラスターを見つけることの意味」と続けた。

 多くのクラスターが各地で発生することで保健所のリソースがひっ迫し、「我々の解析のところに(情報が)来るのが少し遅れるとか、一つ一つを綿密に解析できないフェーズは確かにあった」と明かしたが、「そういう状況でも、我々のやっていることが破綻するということではない」と述べた。

総じて死亡者数が少ない東アジアの中で
 欧米諸国と比べると死亡者数が少ない日本だが、東アジアに目を転じると、「韓国をはじめ死亡者数は総じて少ない」。特に台湾は7人と際立つ。専門家会議は、その要因についても言及した。

 台湾では欧州などからの人の流入規模が日本より少なかったことや、2003年のSARS重症急性呼吸器症候群)で70人以上の死者を出した教訓から準備が整っており、2月6日に中国全土からの入国を禁止するなど、より早い水際対策を実施したことなどが考えられるとした。

 この日の提言では日本政府に対し、感染が落ち着いた状態である今の時期に、中国由来の第1波、欧米由来の第2波に続く「次なる波」を見据え、医師が必要と判断した場合にPCR検査などが受けられるような検査体制の強化、大規模クラスターに対応可能な医療提供体制の整備、対応可能なクラスター対策の水準の引き上げ、治療法・治療薬の確立とワクチンの開発などに取り組むべきだと訴えた。

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【メモ】…5月29日午後11時半現在、新型コロナウイルスによる世界の累積死者数は、もっとも多いアメリカが10万1698人。次いでイギリスの3万7919人、イタリアの3万3142人、フランスの2万8665人、スペインの2万7119人と続く。それに対し、日本の累積死者数は888人。中国は4638人、韓国は269人、台湾はなんと7人(ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター集計)