Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第18回−6

1876年8月19日 土曜日
「四十七士の墓所へ行ってみませんか?」
木曜日にみえた中原氏が突然そんな提案をされた。何か歴史上の、とても興味深い人物たちらしい。
午後になって中原氏がみえたので、四十七士の墓所である高輪へ出かけることにした。行ったのは富田夫人と母と私だけだった。
シンプソン夫人の新居に立ち寄ったのだけれど、それは芝の大きなお寺の敷地で、おうちの中を案内して頂いた。この辺は約一フィートもある百足がでることもあるし、また蛇も一杯いるというけれど、まあまあ、いい家だと思った。
そこから目的地に向かうべく東海道を行き、みすぼらしい入口で車を降りて小道を歩いていると、進むにつれて段々いい道になった。私たちと同じような観光客が沢山いるのだろう。
仏像のある寺を通り過ぎてどんどん行くと、首を洗ったという井戸に出た。井戸の上に「これは首を洗った井戸につき、手足を洗うべからず」と書いた立て札があるところを見ると、そのように使う人たちが少なからずいるのだろう。
もう少し先に進むと、ここへ来た記念になる本や絵や茶碗などを売っている老人がいた。私たちは、内側にロウニンの絵が描いてある杯と、絵と歴史の載っている本と、薄荷入りの飴を買った。
更に木陰の道を進んで墓地に入ると、大きく茂った緑の木々が投げかける影の中央に、四十七士の墓があった。数を数え、一番大きいクラノスケの墓の前にある箱にお賽銭を入れた。
私たちの他にも三人の人がやって来て、それぞれの小さい墓石の前に線香を一本ずつ、クラノスケの墓前には一束を立てた。どの墓石も前方に抉って作った穴があり、穴の底には魂が疲れを癒せるように水が入っていて、竹の花筒には花が沢山挿してあった。
隊長、大石内蔵助の墓は他の墓より装飾が多く、社が上に建っており、前に寄進箱が置いてあった。息子、チカラの墓にも同じような装飾が施してあった。
隣の囲いには、主人浅野内匠頭の丈の高い御影石のお墓があった。コウズケノスケという偉い人に主人の仇討ちをした後で、彼らはハラハリをしたのである。
このことについては本を今読んでいるところなのだけれど、あまりにも長くて、ここで書き写すわけにはいかない。近くのお寺でこの勇敢な四十七士の像を見たが、かなり遅く、暗くなってきたので、またいつか来てみんな見ることにした。


「茶屋で食事をしていきましょう」
中原氏の誘いで向かったのは綺麗で涼しい店だった。川の土手を下りたところにあって、周りは松や杉に囲まれ、そよ風が涼しく、往き来する船の櫂の立てる水音がとても快かった。
夕食が来るのを待っている間に、中原氏と私は手を組んで、笑ったり、お喋りをしたりしながら、綺麗な庭を歩き回ることにした。
女給仕たちが、日本のサムライと外国人の少女と腕を組んで散歩しているのを見て、吃驚仰天するのを見るのは正直とても面白い。もっとも、もうかなり暗く、星だけしか出ていなかったので、私たちはそれほど人目につかなかっただろう。
中原氏と一緒にいると、中原氏が日本人だということをいつも忘れてしまう。一緒にいて、そんなに気楽に感じる日本人は他にいない。気持ちよく、紳士的で、人を寛いだ気分にさせてくれる。
中原氏は一体何処でその外国式礼儀と、洗練された紳士的態度を身につけたのかしら? アメリカ人に聞くより本人に聞いた方が早いだろう、その聞くきっかけがなかなか掴めないのだけれど。
九時に帰宅して、縁側で涼しい夜風に当たりながら楽しく時を過ごした。