Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

遅くなって申し訳ありませんでしたが第23話「聖杯」の感想・考察を、本編シナリオと読み比べながら御紹介。
冒頭。前回のギル様VSランサー戦の総集編に引き続き、傷ついた凛の苦しげな声と回想から始まるのですが……何故わざわざ尺を取ってまで言峰襲来のシーンの描いたのか不思議。シナリオ同様、駆け寄った士郎との語りの部分で語らせても十分だと思うのですが、冒頭部分の尺の問題でしようか? もっともそれ以前に……「言峰が馬鹿正直に衛宮邸のインターホンを押す」という光景自体が想像の埒外なのですがw。
Aパートは当然、玄関を開けた途端、異変に気付き居間に走る士郎。細かいシーンですが、焦っている筈なのに士郎の扉を開けるまでの動作が妙にぎこちないような。後をついてくるセイバーも同様なのですが、カット割りが微妙に変なのかも?
>>「……あ、やっと帰ってきた……遅いからもうちょっとで寝ちゃうところだったじゃない」
……前回のラスト、士郎が十分回復しているように見えるのに、わざわざ夕焼けの港でセイバーと語りあっていたことは……きっと誰も気にしていないし、気にしたら負けだとは思います。そしてイリヤを守れなかったことを士郎に告げる凛。……イリヤ以外にも、衛宮家ではもう一人寝ていたような気がするのですが、それは気のせい、と云う方向で。
それはおくにしても、冒頭同様今回はよく意図の分からないカットが多く、シナリオ通りとは云えわざわざ丁寧に救急箱を取り出すシーンを描いたり、こちらはオリジナルでセイバーに凛の口元を拭かせたり(このシーン自体は悪くないのですが)、イリヤが「魔術回路を人間にした子なの」と紹介するシーンのカットが、可愛らしく挨拶するイリヤのカットだったりと。最後のカットは普通に考えれば「イリヤの全身を魔力回路が走っているイメージのカット」を描くべきだと思うのですが。これ以外にも、士郎にせよ、セイバーにせよ、カットによっては妙に生気に乏しい表情だったりで、後半の戦闘シーンに力を入れるためだとは思いますが、
一方シナリオ面ですが、凛に告げた士郎の覚悟の言葉。
>>「俺は、アイツと決着を着けなくちゃいけない。
>>十年前の生き残り、あの孤児たちの一人として。そして、衛宮切嗣の息子として」
これは実は士郎のモノローグを取り込んでいるものの、アニメオリジナルの台詞。モノローグからの、こういう台詞の取捨選択が出来るなら、最初からもう少し視聴者に士郎の内心が分かるように、モノローグ部分を上手く取り込んだ台詞回しをさせれば良かったのに、と思わずにはいられません。
そして士郎にアゾット剣を託す凛。何故か天井視点からのカットで、これはこれで目先が変わって良いとは思いますが、そのお陰で衝撃の事実発覚。「アニメでの衛宮邸の居間のテレビは薄型テレビだった!」 ……普通に考えれば衛宮邸では、ブラウン管テレビが幅を利かせていそうなのですがw。あと士郎に全てを告げてようやく眠りに落ちる凛のシーンですが、この演出ではアニメのみの視聴者には「凛が死んだように」見えるのではないかと愚考するわけですが。……ちゃんと顔も綺麗にしていますし。。。


と、とりあえず前フリ部分についてはこれくらいで、ここから最終決戦まで怒濤の展開。
土蔵でのセイバーへの鞘の返還シーン。
状況説明については台詞で過不足啼く説明されていますが……またまたシーンが奇妙で「素っ裸で虚空に浮いている士郎」のシーンは「一部の人w」へのサービスシーンと云うことにするとしても「鞘をイメージしている筈なのに、抜き身の剣を手にしているセイバーをイメージ(当然使い回し)」を描いているのは如何なものかと。ちなみにシナリオ通りですと、
>……イメージする。夢で見た彼女の姿を。
>戦場を行く騎士王に相応しい黄金の鞘。
>主を守り、幾たびもの勝利をもたらした証を、鮮明に、狂いもなく、あの時の美しさのままで。
>―――たとえ、この先。どんな終わりが待っていようと忘れぬように、永遠に、この心に焼き付ける――――
「とことん細部まで拘って制作すべきだ」とまでは敢えて言いません。ですがこのシナリオ部分と読み比べれば明白ですが、映像化に際して本当に上っ面だけ淡々と再現しているだけであって(してない部分も多々ですが)、物語としての盛り上がりも、士郎の心もまるで視聴者に伝わってきません。「なるべくシナリオ通りに上げよう」というだけで、アニメだからこそ伝えられる演出を工夫しようという意図もまるで感じられません。
そういう意図がハッキリ伝わってきたのは第7話『蠢動』と、件の「CGドラゴンのパックンチョ」だけと云うのでは。。。その『蠢動』にせよ、士郎とセイバーを基軸として描く意図ならば本来不要だった筈の回ですし。


次回が最終回と云うことで敢えて今週ハッキリ書いておきますが、このアニメスタッフ。そしてTYPE-MOONのスタッフも恐らく同様なのでしょうが「真月譚月姫」の二の舞を恐れて「(原則として)シナリオに忠実に忠実に」という方向に走った結果、安易に「シナリオ通りに描かれているように見えれば良いんだろう」という選択をしたようにしか見えません。
別段「オリジナルのストーリーを入れろ」とか云っているわけではないのです。アニメならではの、アニメでこそ表現出来る演出をしよう、というスタッフの意欲がまるで感じられないのです。上の方で書きましたが安易なカット割りについても同様で「シナリオに書いてある」と云えばそれまでですが、メリハリのある取捨選択がまるで出来てない結果、妙に平板な作品となってしまっているのかと。
好き嫌いがあるのは承知してますし、作品ジャンルがあまりに懸け離れていることも敢えて承知で比較しますが『涼宮ハルヒの憂鬱』。一部の回を除き、殆ど原作に忠実に描いていますが、アニメでは一つ一つのカット、一つ一つの演出にアニメスタッフの拘り、更に云えば「アニメ制作者としての自負と誇り」が伝わってきます。原作通りに描くとしても、小説媒体の原作には出来ないことを、小説では現しきれないことをアニメで表現しよう。更に云えば「原作通りに描きながらも、原作以上に面白いアニメを作ってやる」という意志がハッキリと伝わってきます。
勿論、京アニFateを制作すれば面白い作品になるかと問われれば、恐らく「否」でしょう。TYPE-MOON作品では根底となる世界観が描写されることが絶対条件として存在しますから。ですが少なくとも、今まで散々見てきた意味のないカットやら、意味不明の演出(カットがグルグル回る演出など)は見なくて済んだだろう、と思うわけです。
……と、愚痴はここまでにしておきたいところですが、最終決戦の地、柳洞寺の山門を歩く士郎とセイバーのシーン。
>「――――セイバー」立ち止まって、セイバーへ振り向いた。
>セイバーはいつも通りだ。平気そうな顔で、何かを堪えているような、張りつめた瞳。
>それを見た瞬間、ありとあらゆる誘惑が駆けめぐった。
>逃げてしまえ、と。失いたくないのなら引き返していいと。
>彼女なら、おまえがそうしたいと言えば受け入れてくれると。
>「――――――――」意思が揺らぐ。のど元まで、その誘惑がせり上がる。それをかみ殺して、
>「―――――行こう。これが最後の戦いだ」
>今まで通りに、マスターとして告げていた。
確かにアニメでもシナリオ通り描かれています。描かれているのですが「……何かが違う」と、思うのは自分だけでしょうか?


境内で待ち受けていたギルガメッシュ。セイバーへの歪んだ思いを滔々と語る智一さんの演技は自分的には可もなく不可もなく、といった評価ですが(多少尊大さが足りない気はしますが)、それ以上にギル様の表情が「イっちゃった人w」に見えるのは如何なものかと。もっともBパートに入った後の、次の台詞のシーンは「流石は我様!」と思わされましたが。
>>「あの程度の呪いを飲み干せなくて何が英雄か!
>>この世全ての悪? 我を染めたければその三倍は持ってこい!」
>>英雄とは、己が視界に入る全ての人間を背負うもの。
>>―――この世の全てなぞ、とうの昔に背負っている!」


先走りましたがBパート。言峰の元に向かった士郎が見たのは、中空に穿たれた『孔』と、捧げられたイリヤの姿……なのですが、孔が下半分しか映っていないので正直、孔に見えないのですが。。。
そして冒頭の、聖杯の正体について語る言峰の台詞はオリジナルですね。ゲームをプレイした人間には分かりやすく纏まっていたと思いますが、アニメのみの視聴者には如何でしょう? そして聖杯を求める理由を語る言峰の台詞の背景で、セイバーVSギル様の戦闘シーンを。この演出自体は良いのですが、ゲームをプレイした人間にとってはギル様が剣戟でもセイバーを圧倒しているのにはどうしても違和感が拭えません。。。
一方、その後の言峰の滔々たる演説紛いの台詞は流石に中田譲二さんの演技だったかと。予想通りと云えば予想通りの演技で驚きはありませんが、非常に手堅く演じて下さいました。……少々言峰の表情、特に口元当たりが怖すぎましたがw。対する士郎の、そして士郎役の杉山さんの演技も、十分に健闘していたかと。
後半のレビューはかなり駆け足になりましたが、この最終決戦のシーンの評価についてはまた改めて来週の最終回終了後に。


さて、次回最終回「全て遠き理想郷」予告解説。
1コマ目−夜明け前、髪を下ろした後ろ姿のセイバー、2コマ目−士郎の満足げな表情、3コマ目−エア発動直前のギル様、4コマ目−桜舞い散る中の凛、5コマ目−怒りの表情の士郎、6コマ目−滔々と言峰、7コマ目−髪を下ろしたセイバー、8コマ目−エア発動直前のギル様、9コマ目−桜舞い散る中、学園への登校中?の士郎、10コマ目−髪をかき上げる桜、11コマ目−剣を立ててセイバー、12コマ目−言峰表情アップ、13コマ目−攻撃を耐えるセイバー、14コマ目−ギル様立ち絵、15コマ目−最後の台詞を告げようとするセイバー。
と云うことで、順当にFateルートのラストシーンを描く模様。無難な展開にはなると思いますが「この世の全ての悪」に飲まれた士郎のシーンが如何に描かれるかは興味深いところです。
ともあれ、最終回。ここばかりはシナリオ通り、無事に終わってくれますように。。。