Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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異文化交流クイズ「ナポレオン三世によるパリ大改造」第8回の問題は、パリをグルリと取り囲むように作られた「徴税請負人の城壁」。『パリを孤立させるこの壁に、パリ市民は不平たらたら』だったわけですが、高名な建築家によって設計された各市門とそれに併設された徴税役人のための家の美しさに、多少なりとも溜飲を下げましたが、パリ市民がもう一点溜飲を下げたのは「何に」対してだったでしょうか? という問題でした。
建築家の建てた建物を何軒か見て回ったことがありますが、見た目はよいのですけれど、正直自分が住むとなったら躊躇うような物件ばかりでしたね。
と云うことで、今回の正解はヒントから何の捻りもなく「住みにくい家だった」でした。
建築家の建てる家が住みにくいのは昔も今も変わらない、ということですねー。ただ資料として書き残されるくらいなんですから、本当にヘンテコだったんでしようね。手元の資料に一枚だけ写真があるのですが、確かに少々奇妙と云えば奇妙な格好かと。


今週のズバリ正解者は、Ironさんでした。「欠陥建築物という事なのかな?」というMr.ROMさんも正解と云うことで。あと「抜け道でもあったんですかね」と云うtotuさんは不正解ですが、実は税金逃れするために抜け道のためのトンネルが何本も掘られていたそうです。。。
ともあれ、美しいながらも生活していくでは不便だった徴税請負人の城壁は三世によって撤去され、パリの町は出題編で紹介したティエールの城壁まで拡大。この世界最大級の城壁に守られ、パリはますます賑わしく発展していくかと思われましたが。。。
このシリーズのクライマックスに向けて、再びオリジナル小説との組み合わせでのご紹介。


―――ベルリンへ! ベルリンへ! ベルリンへ!
血に染まったような雲の後ろに太陽が沈み、落日の最後の一閃が建物の窓を燃え上がらせる。
焼けさかるような建物から追い立てられるように無数の群衆が吐き出され、世界で最も美しいと称されるこのパリの都中に散っていく。
彼らは異口同音に、熱狂的にその言葉を叫びながら、東から西へと行進を始めた。
―――ベルリンへ! ベルリンへ! ベルリンへ!
家から飛び出してきた人々は歩道に流れ、車道にまで溢れ出し、遂には巨大な奔流となりこの麗しき都を呑み込む。
いつしか夜が一杯に広がり、街路のガス燈が一つ一つ灯っていき、パリの町を壮麗なキャンドルへと変貌させる。
刻々と膨れあがる人の波は西から東へ、エトワールの凱旋門からバスチーユ広場にかけての巨大な流れとなって突き進む。
彼らは足を踏みならし、同じ情熱の下に一つとなり、熱狂したい欲求から次々と集結してきた。熱狂は熱病のようにパリ全市を覆い尽くし、人々は異口同音に、断続して執拗にその言葉を繰り返す。
―――ベルリンへ! ベルリンへ! ベルリンへ!

 
この熱狂のパリは一八七〇年七月一九日。スペインの王位継承権を巡るフランス帝国プロイセン王国との間の確執により、フランス帝政議会がプロイセンに対する正式な宣戦布告を行った日の光景です。
そして同時に、後に普仏戦争と呼ばれることになる戦争の開幕の合図ともなります。


『さあ、祖国の子供たちよ、栄光の日がやってきた』
瓦斯灯の反射が金看板の上で踊り、松明を手にした群集は巨大な炎の渦を波立たせ、町の至るところで“ラ・マルセイエーズ”の合唱が沸き起こる。それはベルリンに向け進軍する帝国軍兵士たちへの手向けの歌だ。
今やパリはその全土を巻き込んだ壮大なオペラと化している。
渦巻いて流れる混乱した群衆は、目くるめくめくばかりの群衆は、夜に紛れ屠殺所にひかれてゆく羊たちのように白く波うつ群集は、来るべき戦争の行方を言い知れぬ戦慄とともに感じ取り、しかしこの絢爛豪華な祭りに酔わぬわけにはいかなかった。
掠れた叫び声を上げながら、熱狂の言葉を浴びせながら、このオペラの主役たる帝国軍精鋭に対する歓喜と陶酔の歌を歌い上げる。
―――ベルリンへ! ベルリンへ! ベルリンへ!
無論、皇帝ナポレオン三世も、帝国軍の貴顕も、帝国議会の議員たちも、そして何よりも誇り高いパリ市民の誰もがこの戦争の勝利を疑うべくもなく、その結果当然知りえよう筈もなかった。
この華麗極まりない序曲で始まったオペラ。その終幕において、悲劇の運命を辿ることになるのが、他ならぬ今宵の熱情の宴の参加者である群衆自身であるということを。


と云うことで、今シリーズ残り二回はナポレオン三世の没落と、パリ市民を待ち受ける悲劇からの紹介となります。