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一ヶ月ほどお休みさせて頂きましたが、本日より異文化交流クイズ再開です。
今回のシリーズは、前シリーズ開始の時のお約束通り「異文化としての吉原」をテーマに。これの何処が「異文化」と云えば「江戸の中の異界」であった、という意味で。丁度タイミング良く、先週の「天保異聞妖奇士」第十三説から吉原が舞台となっていたりしますし。

以前この異文化交流クイズでも紹介したことがありますが日本文化を体系的にフランスに紹介し、フランス屈指の東洋美術の所蔵量を誇るギメ美術館を設立したエミール・ギメ。明治９年に来日した彼は、その年の９月27日「とある日本画家」と出会います。彼と共に日本国内を旅行したフェリックス・レガメーという青年画家の、母親へとあてた手紙から引用します。
『昨日の出来事は、日本の非常に優れた画家――しかしあまり知名度もなく、貧しそうな――を発見したこと。僕の余分に持っていた絵の具を彼にあげたらとても喜んでいた。エミールは彼の絵を注文した。我々がヨーロッパに戻り次第その名も喧伝されることになるだろう。その名は『キョーサイ』という。』

そうです、彼こそが「天保異聞妖奇士」第十三説から本格的に登場、高山みなみさんが演じている甲斐周三郎こと河鍋狂斎(暁斎)の後の姿です。ちなみに第十三説の冒頭に登場したのは上野博物館や鹿鳴館を設計したイギリス人建築家で、暁斎に弟子入りしたジョサイア・コンドル。ギメとコンドルのお陰で、暁斎は日本でよりもヨーロッパでの方が名が通っていたりしました。
もっとも今日だと、我々アニオタの中の知名度は抜群に。「地獄少女」のＯＰナレーションの背景絵の化物絵もまた、河鍋暁斎の手によるものですから。
ただこう書くと化物絵専門画家のように見えてしまいますが、実際の所は美人画や花鳥山水画、浮世絵から狩野画風までと幅広い作品を残している画家だったりします。日本で初めての西洋風口語体小説と云われる仮名垣魯文の「安愚楽鍋」の挿絵の半分は暁斎の手によるものです。現在でも岩波文庫から出ている「河鍋暁斎戯画集」で彼の絵を気軽に確認する事が出来ます。
なお彼は若い頃には日光東照宮の改修作業にも関わっていたのですが、この辺りまでアニメ中の描写に活かされているのは流石にマニアック過ぎかとw。ついでに云うと、物語中でも描かれている通り反骨精神もたっぷり。明治三年には新生明治政府を批判した戯画を描いて投獄されています。

……と思い切り、話が逸れてきましたので暁斎の話はまた機会を改めることにして、本筋に戻って「異文化としての吉原」の話題へ。
今週の「天保異聞妖奇士」第十四説冒頭、本所で客引きをしていた遊女が役人に捕まり、吉原に送られるシーンがありましたが、これは江戸の初めに吉原が出来たときからの決まりでした。極端に男性の比率の高い江戸の町において、遊郭のような施設が必須である事は明らかな上、幕府側も管理上非常に都合がよいと云う事で「江戸における遊女屋設置は吉原のみ」と定められ、それに違反した者は吉原に送られる事になっていたのでした。
もっとも吉原が「江戸で唯一」と云っても、実際には五街道の最初の宿場であり、現在は普通に東京都内である品川、板橋、千住、新宿(内藤)には普通に遊女屋があり、また「岡場所」と呼ばれる、吉原以外の私娼のいる遊女屋が江戸各所にありました。今回舞台となっていた本所もその一つですね。
逆説的な話ですが、この「岡場所」という言葉が江戸庶民の間で一般的だったくらいに、江戸中期には岡場所が普通にあり、庶民も遊女側も共存共栄していたった訳ですが、ことのほか「岡場所」を取り締まった時代がありました。それが「享保の改革」「寛政の改革」そして「天保異聞妖奇士」の時代である「天保の改革」でした。要するに、教科書に出てくる江戸期の「改革」なんてものは、庶民にとっては迷惑なだけ、ということの見本のようなものですね。
この「天保の改革」の際には岡場所２７カ所にあった５７４軒の遊女屋が取り潰され、その時に捕まった遊女が四千人以上。そのうち正業に就けないと判断された遊女は全て吉原送りとなったとされています。もっとも水野忠邦の失脚後は、すぐに岡場所は復活するわけですが。

さて、前振りが長くなってきましたので、ここで今週のクエスチョン。なお、今週はシリーズ第１回と云う事で、大サービス問題で。
1605年に「江戸に散在する遊女屋を一カ所に纏めた遊郭設置」を幕府に申し出たのは、江戸柳町で遊女屋を営んでいた庄司甚右衛門ですが、この人物は元々武士であり「とある名門大名家」に武将として務めていましたが、さて彼は「○○氏」の武将だったのでしょうか？　回答は木曜日の２２時まで、web拍手にてお待ちしています。
web拍手
なお今回も全１０問中５問以上正解の方には粗品進呈予定ですのでお気軽にご参加をお願いします。