Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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異文化交流クイズ「異文化としての吉原」。基礎知識編の前半5回を終え、今回からマニアック編wへと突入です。
今回舞台となるのは、日露戦争前後の吉原。登場するのは、エンリケ・ゴメス・カリージョというグァテマラ人小説家兼批評家。
スペイン貴族の血統であるにもかかわらず、十五歳でグァテマラ駐在の外交官婦人とスキャンダルを起こし、十六歳で新聞に時刻の有名詩人の作品をこき下ろす評論を発表し、17歳でスペイン語誌に不滅の足跡を残すニカラグアの詩人ルベン・ダリーオと出会い、彼のグァテマラ大統領への直々の推薦で、マドリードへの公費留学が決まったにもかかわらず、少年が勝手に向かった先はパリ。
生来のボヘミアン的反逆児であり、その生涯に何度も決闘沙汰を起こし、三度の結婚を繰り返した彼は、同時にヨーロッパのスペイン語文学圏では絶大な影響力を誇り、オスカー・ワイルドエミール・ゾラポール・ヴェルレーヌらとも交流を結び、今日では現代スペイン語散文の生みの親の一人としても数えられるといいます。
そんな彼が新聞の特派員、という立場で日本を訪れたのは日露戦争直後の1905年でした。


彼が如何に吉原を訪問することを楽しみにしていたかが分かるのが、今回の元ネタ本の構成。「第1章 東京」の次にすぐに「第2章 吉原」と。なにせその冒頭の一文からして『ついに吉原に来た。不夜城歌人は呼ぶが、美しき歓楽の一夜の結晶した町であるからには“昼のない町”と呼ぶ方がふさわしいだろう。』ですから。
勿論、日本に来る前に十分以上に吉原に関する知識を詰め込んできています。もっとも彼が文中で書いている参考文献が、以前にも話題に出した、日本の「現地妻」に関して侮蔑的な事を書き綴ったピエール・ロティやら、パーシヴァル・ローウェルの本だったりするのが微妙過ぎるのですが。


閑話休題パーシヴァル・ローウェルというアメリカ人の名を、天文好き・SF好きな方なら一度は聞いた事があるでしょう。アメリカでは超名門の一族出身の彼こそが「火星には運河がある=火星人実在説」を唱えた張本人だったりするのです。ついでに云うと「冥王星」の軌道を「予言」したのも彼であり、事実当時は「彼の予言に従って」冥王星が発見されたと思われていたのですが、現在の天文学では完全に否定されたりしています。なおアメリカ人が最後まで「冥王星」の惑星降格を頑強に抵抗したのは、彼の影響力が未だに残っている証拠だったりもするわけです。
そんな彼が日本にやってきたのは1883年で、以降数年にわたり日本と朝鮮に滞在し、各種記録を残しています。ただ数年前に著書を読んだたことがあるわけですが、他の同時代の日本観察者と較べてみても、視点が殆ど一回目の来日時のロティと殆ど同レベルだったりで、なんとも微妙なところ。と云うより、カリージョ、ロティ、ローウェル、三人とも現在の視点から云えば明らかに「人種差別主義者」です。
もっとも、この時代の人間、特に日露戦争前後の時代の世界情勢を考えれば、人種差別、有り体に言えば「白人至上主義」は至って普通のことであって、今日的視点で断罪するのは馬鹿馬鹿しい話ですけれど。
そしてカリージョは、白人至上主義者であっても、だからと云って「認めるべき所を認めない」ほど狭量な人物ではありません。それだからこそ、今日の我々が読んでも魅力的な記述となっているわけですが。


さて、長くなって参りましたので、カリージョが最初に吉原で見た光景から今週のクエスチョン。
「吉原の女性達は通る男たちを見ているか、○○を見ている」とし「そもそも女性にとって○○とは、その前に座って何時間でも飽きずに過ごせる大事な物である」と表現していますが、女性達がその前に座って何時間でも過ごせるとした、この「ある物」とは一体何でしょうか?
回答は木曜日の22時まで、web拍手にてお待ちしています。
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