Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

異文化交流クイズ「異文化としての吉原」。第9回の今回は、いま敢えて「人身売買先としての吉原」を取り上げようと思います。最近の「海の向こうからのニュース」に憤りを感じている方は是非とも。
天保異聞妖奇士」でもサラリと触れられましたが「遊女の年季は27歳まで」と云うのが通例でした。27歳にもなると容姿の関係で仕事が難しくなる、というのが一般的な説明ですが、元々その年くらいで「年季」が明けるからなのです。「年季」というのは要するに「契約期間」ということなのですが、今回はもう少しここで突っ込んで「何故年季というものが生まれたのか?」というところから解説してみます。
吉原はどのように女性を集めていたかと云えば、自ら売り込みに来た女性もいましたが、一般的には「女衒(ぜげん)」と呼ばれる「人買い」から女性を買っていました。この女衒は地方の貧農等を回り、十歳に満たない子供から十代の少女までを江戸中期頃で5両から20両程度で買い、30両から50両で遊女屋に売るのが一般的だったそうです。


こう書くと、何処からどう考えても「人身売買」以外の何ものでもないわけですが、その前に大前提として、徳川幕府大阪夏の陣終了前後から人身売買を「厳禁」していました。
今日の我々が考える程、徳川政権は「人権意識」が希薄ではなく、それどころかこの禁令を破った者は原則として死刑が科せられる事になっていました。それだけでなく、自分が人身売買をやらなくとも、自分の自宅を売買の場として提供したものにも処罰を与える、という徹底振り。
これは一般の庶民だけでなく、遊女に関しても当然適用されていて、潰れた遊女屋の遊女を売り払い、その金を「藩財政」に組み入れた藩士が、八丈島島流しされた、という記録さえ残っています(個人的に横領したわけではないので死罪にならなかったようですが、それでもこれは少々気の毒な気が)
更に分かりやすい事例としては、吉原の楼主が遊女を「質」に金を借り、その返金が出来なかった場合、債権者に質入れした遊女を引き渡す事を認めて欲しい、と宝暦年間に町奉行に申し出たところ「それは法令違反だ。もってのほかだ!」と叱りつけた、という話も書面として残されており、幕府が人身売買の禁止についてはかなり神経質になっていたことが分かります。
それでも、吉原の遊女に限らず、武家でも、普通の商売の店であっても、事実上「人身売買で」貰われてくる人間がいることは、当時の経済情勢からすれば必然であって、幕府の禁令との境界線として「年季」という契約概念が生まれたわけです(勿論「年季」が明ければ、元の所に戻るというのも大前提としてあり、かつ定期的な給金が支払われることにもなっていました)。
この期限を幕府は当初「3年」後に「10年」に延長していますが、これが一時厳しく行き過ぎ「田舎から江戸に出てきて店の奉公人として働いているのに」10年経過したら、一旦国元に帰らなければならない、という不条理な事態もあったため、この点に関しては「当人の不利益にならない限り」延長しても良い、と改正されています。
もっともそれでも「無期限」というのは禁止だったらしく、普通はやはり10年ないし15年、長くても20年が最長の契約期間だったようです。つまり吉原の遊女が「27歳」ないし「25歳」で年季明けだった理由は、逆算して10年から15年前に「年季契約」を結んだからわけですね。


勿論以上書いてきた事は「建前」です。抜け道が諸々あったことは確かですけれど、それでも江戸幕府は人身売買など間違っても推奨していません。
吉原遊郭は「幕府公認の施設」であり、そこから税金を貰っていました。それでも、そこは決して無法地帯ではなく、それどころか無法地帯にならないように、遊女が抜け出しようがない劣悪な環境に晒されないように、最低限とはいえ、根本的なところを幕府は厳しく取り締まっていたわけです。
……何処か「別の時代の、別の場所で」これと良く似たシチュエーションの話を聞くわけですが、さて、それは何処でしょうか? 
旧軍は個人的に諸々な理由があって好きにはなれませんが、現在進行形で歴史の捏造をする人間、それに加担する政治家・マスコミへの怒りの方が大きいので、今回の話題を出させて頂きました。


さて、ここで今週のクエスチョン。遊女が「年季明け」以外で吉原を出る方法で最も幸せなパターンとしてあるのが、所謂「身請け」です。
もっとも太夫クラスの上級遊女となると数百両、中級あたりの遊女でも百両前後かかったとされていますが、上で見た通り「人身売買」は御法度でした。と云うわけで「直接的な代金」として払うわけにはいかなかったので「隠語」を使ったわけですが、その隠語とはどんな言葉だったでしょうか? 今回は以下の選択肢からお選び下さい。
1.米代 2.酒代 3.樽代 4.本代 5.書代
回答は木曜日の22時まで、web拍手にてお待ちしています。
web拍手