Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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例の「仕分け作業」の問題点をマクロ経済の側面から分かりやすく、短めに纏めた記事が2本出ていたのでご紹介。
1本目は民主党のブレーンである筈の榊原英資氏の見解ですので、民主党支援サイドの方から見てもそれなりに説得力があるかと。榊原氏、個人的には好きではありませんが、この分析は基本的に賛同。2本目の記事も今後の経済展望に非常に参考になると思われるので是非。

 歳出の仕分け作業で、予算の無駄がかなりそぎ落とされた。無駄を省くことは必要だし、そのために仕分け作業は有効な手段である。また、公開で行われているため透明性も確保できるし、その単純明快なスタンスが庶民的には大変受けているようでもある。官僚バッシングのムードの中で、“大岡裁き”的なパフォーマンスは庶民の留飲を下げさせる効果があるのだろう。
 しかし、経済の現状をみれば、こうした作業がマクロ的には大きな景気後退要因になっていることにも留意する必要がある。現在、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの先進国では軒並み民需が弱い。雇用情勢、賃金の動向が悪化する中で所得が減少し、消費が極めて弱い。企業収益が悪化する中で、企業はコスト削減に全力をあげ、設備投資も強くない。わずかに財政当局が景気対策を打って、何とか経済を下支えしている状況である。
 日米ともにエコ減税・エコポイントで自動車など耐久消費財への補助金で消費がそこそこのレベルで推移している。
■ミクロとマクロの「合成の誤謬」脱却を
 中国などの新興市場国が力強く景気回復しているので輸出も順調で、日本の実質GDP(国内総生産)は4〜6月に年率で2.7%、7〜9月に4.8%と順調に景気回復しているようにみえる。
 しかし、このまま回復が続くとはとても思えない。賃金は継続的に低下しているし、今年の冬のボーナスは対前年比で15%前後低くなるという。物価も低下し続け、デフレ状況に入ってきている。4〜6月、7〜9月のGDPを支えてきたのは、財政であり、低金利流動性を潤沢に提供し続けた金融政策だったのだ。ただ、エコ減税などによる効果も、いわば需要の前倒しなのだから、今後、継続的に消費が上昇することはとても望めない。雇用と所得の停滞がいずれ民需全体へ波及することもむしろ当然だといわなくてはならないだろう。政策による民需の刺激が止まれば景気が再び下降し、二番底をつける可能性はかなり大きい。2010年初めには補正予算、あるいは“15カ月予算”でかなり支出を積み増ししないと、景気減速が現実のものとなってしまうだろう。
 こうした状況での仕分けによる歳出削減である。ミクロでは適切なことがマクロでは必ずしも正しくないことの一つの例ということなのだろう。仕分け人が人民裁判的に無駄を切っていく姿は大衆の留飲を下げはするが、無駄であっても歳出は歳出である。削減はマクロ経済には当然、マイナスである。かつて、J.M.ケインズは、穴を掘って、それをまた埋めても景気対策になると説いた。何も無駄を奨励するつもりはないが、景気の先行きが不安な時、これだけ歳出を切る必要が本当にあるのだろうか。政権が交代したばかりの今、その成果を見せたいという気持ちは分からないでもない。しかし、民主党政権は解散をしなければ、4年間は続くのである。何もそんなに焦ってパフォーマンスをする必要はないのではないのだろうか。
 野党時代はミクロの分野での無駄や矛盾を突いていればよかった。しかし、民主党は今や、与党である。ミクロとマクロの「合成の誤謬」に早く気付いて方向転換をしないと、2010年は日本経済は不況に突入しかねない。政権交代したばかりの時に「民主党」不況ということになっては、民主党にもマイナスだろう。
 筆者は民主党に、ぜひ、戦後初めてのこの本格的政権交代で日本を大きく変えてもらいたいと思っている。無駄を大きく省くことは「改革」の重要な柱ではある。しかし、そのために経済が縮小均衡に向かってしまっては元も子もない。早く与党マインドを身につけて、経済全体をモニターしなければならないだろう。

 日本から連日報道される「仕分け」のニュースを見ていますと、強烈な違和感を感じます。勿論、ムダな支出の削減は大事ですが、それには有能で強力なリーダーを組織の要所に配して腕を振るわせる方が簡単でしょう。官僚組織のことを「悪しき既得権者」と決めつけて「吊し上げる」という儀式は新政権にとって統治のテクニカルなステップの一種なのかもしれませんが、それで世論が納得すると思っていると、そのうちに足元を掬われるのではと思います。
 とにかく、やっていることも大甘です。削減目標が絶対であるのなら、それを省庁別なり、戦略投資と経常投資に分けるなりして世論に分かるように分割し、それぞれが削減目標に「数字合わせ」を強制する、そのぐらいしなくては目標は達成できないはずです。そうではなくて、ダラダラと仕分けをやって結果的に「3兆円」のはずが「1・7兆円」で終わったというのは甘すぎます。査定でもっと詰めるというのですが、あんな風にショーアップしておいて「積み上げたら足りない」というのは、まるで小学校の学級会です。民間が本気になってコストカットをやるときは、そんないい加減なものではないはずです。
 それはともかく、私の感じている違和感というのはもっと別の点にあります。それは、あれだけ象徴化して予算策定のプロセスをショー仕立てにするのであれば、そのマインドの方向性がまるで逆ではないかと思うからです。まず削減目標ありき、ではなく、国家として「達成すべきプラスの目標」があり、そのために事業の優先順位をつけて費用対効果の見極めを行うべきです。ではそのプラスの目標とは何かといえば、1人あたりのGDPであり、雇用であり、政府ということで言えば税収や経常収支でしょう。
 どうやってこの国に住む人を「食べさせてゆく」のか、そのために稼がなくてはならない額を積み上げる、そのために何をするのか、何を優先して何を切り捨てるのか、その「仕分け」をしなくてはなりません。団塊2世の出産年齢が後半に入った今、放置すれば出生数は坂道を転げ落ちていきます。電気モノの機械や、車両関係を世界に輸出するというビジネスモデルでの敗色が濃くなる中、もっと知恵と文化を結集した新産業を興さねばなりません。そうした厳しい状況だからこそ、葉を食いしばっても「死守すべき目標」を定め、そのためにムダなもの、負けの見えているものをどんどん切り捨てて、希望の残っている部分に国富を投入する、その作業が必要だと思います。
 それでは、途上国型の計画経済ではないかと言われるかもしれません。ですが、停滞から成長へと途上国がハンドルを切る際に投じたエネルギーを考えると、成熟して疲労の色の出てきた社会を反転させるのには、もっとエネルギーが必要なはずです。勿論、独裁とか非常事態とか言って騒ぎ立てる必要はありません。ですが、社会を穏やかな成長軌道に戻すためにも、達成すべき目標を設定して、何が何でも守り抜く厳しさは必要だと思います。でなければ、想像を絶するような苦難が待ち受けていると覚悟しなくてはなりません。
 通貨一つ取っても、ドルの下げ圧力が円の独歩高を招いているのは短期的な現象に過ぎず、中期的にはこのまま放置しておけば円の独歩安もあり得ます。これを回避するにはどうしたらいいのか、そして仮に超円安になったとして、どう社会全体が生き延びて行くのか、これも流れに任せていっていい話ではないと思います。とにかく「歯を食いしばっても稼がなくてはならない金額はいくらなのか? そのためにはどうやって稼ぐのか? 稼ぐために今どの投資がいくら必要なのか?」これが「仕分け」のあるべき姿ではないでしょうか?
 地方も同じです。国単位でできないのであれば、市町村で、あるいは都府県で、道州で、「稼ぐ」ための「仕分け」を行ってゆくべきです。そして本当に稼ぐことができた地方だけが生き残り、後は衰退して行く、それも恐ろしいほどの勢いで衰退して行くことを覚悟しなくてはならないのだと思います。新幹線が通ったから、ストロー効果で街が衰退したという声を良く聞きます。ですが、新幹線がストローであるのなら、大都市からヒトとカネを吸い上げる戦略を地方は持つべきで、そのために必要な投資を優先すべきです。「仕分け」というのは、そういう観点で行うものだと思います。
 自民党からは「仕分け」よりも「成長戦略」だという声が聞かれます。ですが、成長戦略とは、勝ち抜く見通しなしに自由競争に飛び込んで外資を儲けさせることでもなければ、漠然と生産者に公的資金をバラまいて保護することでもありません。本当に成長して、本当に勝ってゆくために、今、何をすべきで、何をすべきでないかを決めることです。その意味で、本当の成長戦略は民主党にも自民党にもないと言わざるを得ません。