Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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今週も「クララの明治日記 超訳版」その第105回をお送りします。
なお過去ログは、以下のように収納しております。
明治8年8月分明治8年9月分明治8年10月分明治8年11月分明治8年12月分明治9年1月分明治9年2月分明治9年3月分明治9年4月分明治9年5月分明治9年6月分明治9年7月分明治9年8月分明治9年9月分明治9年10月分明治9年11月分明治9年12月分明治10年1月分明治10年2月分明治10年3月分明治10年4月分明治10年5月分明治10年6月分明治10年7月分明治10年8月分明治10年9月分明治10年11月分明治10年12月分明治11年1月分明治11年2月分明治11年3月分明治11年4月分明治11年5月分明治11年6月分明治11年7月分明治11年8月分明治11年9月分明治11年10月分明治11年11月分明治11年12月分明治12年1月分明治12年2月分明治12年3月分明治12年4月分明治12年5月分明治12年6月分明治12年7月分明治12年8月分明治12年9月分明治12年10月分明治12年11月分明治12年12月分
今回分は、クララが迎える(ひとまず)最後の日本での年末の模様となりますが、ゴロツキの人力車夫に絡まれる羽目に。
なお、次回分で丁度お正月更新と合わせるために、今回は非常に短めで失礼します。


1879年12月30日 火曜
昨晩ウィリイと私はショー氏のところで楽しく過ごした。
ショー氏は素晴らしい幻灯を持っていて、ウィリイにこう云っていた。
「新しい景色を揃える手伝いを少しして欲しい」
ショー夫妻は本当に良い人たちだ。
私は二人を深く愛し尊敬している。
ショー夫人はいつも私にとても親切だ。
ロンドン出身だそうだけど、アメリカ人と全然変わらない。
ショー氏はカナダ人でトロント出身である。
ショー氏はロンドンにいる人々に紹介状を書いて下さるという。
ショー夫人は面白い情報を沢山教えて下さった。
あの気の毒なほどはにかみ屋のスコットランド人の宣教師デイヴィッドソン氏が、なんとミス・エルドレッドに熱烈に恋をしているという!
キューピッドの矢に射抜かれるとは、とても思えなかったのに。
彼はひどく内気なので、勇気を奮って「結婚して下さい」とはとても云えないでいる。
今日は珍客があった。
マイケル・マーフィーというアイルランド人の若い医者で、ウィリイに日本で職を探して欲しいという。
「ホイットニー夫人でいらっしゃいましょうか?」
はじめ私のことをウィリイの奥さんと間違えてそう云った。
ウィリイが横浜に行っていたのでマーフィ氏は昼食までいた。
しかし、こんなに面白い人に会ったことはない。
健康そうな感じのがっかりした青年で、口ひげを生やし顔色がよく、灰色の大きな目は落ち着いていた。
その上大変陽気な人で、日本に来る時の模様を説明してくれた。
だがまず第一に人力車の車夫二人との一騒動について書かなければならない。
マーフィ氏は駅で駄賃を決めずに車屋を雇ってしまったのだ。
「それで勘定をする段になって四十セントだと云われてしまいました。
いくらなんでも高すぎると思うのですが、一体どれくらいが相場なのでしょう?」
「一人あたり五セントで十分ですよ」
私はそう助言したのだけど、車夫の二人は「四〇セント以下は絶対いやだ」と云う。
荒くれ車夫たちは大騒ぎをして、駅からどんなに遠いかを声高に喋り、マーフィ氏に悪態をついて、おハルと喧嘩になりかけた。
おハルは恐ろしくなって二階の私のところに来て云った。
「お嬢さん、怖いごろつきです。四〇セント寄こせと云っています。
どうしましょう? 若旦那様もいらっしゃらないし」
「お金はここに置いて、下に行っていなさい。着替えが終わったら私が話します」
「一緒に参りましょうか、お嬢さん?」
「いいえ、こちらはいいから食事の用意をして。車夫の方は私が片づけます」
「でもお嬢さん、とても乱暴なんですよ。本当に悪くて、泥棒みたいなんですから」
着替え終わると、客間の戸を閉めて玄関に行き「車夫さん」と呼んだ。
すると目の前に現れたのは、凶暴の見本のような二人。
「儂らを誤魔化しそうとして、ひどい旦那だな!」
そんなことをいろいろ口々に云うので五月蠅くてたまらないほどだった。
「駅前から来たのですね?」
「はい奥さん、新橋からです」
「それで新橋から赤坂までいくらなの?」
「四〇セント下さいと云っていましたが、三〇セントで結構です」
「三〇セントですって? それはひどすぎるわ。駅からで三〇セントなんて!
私は五セントか、せいぜい八セントしか払わないわ。これはひどいわ」
マーフィー氏は私たちの容貌が大変イギリス風なので、私たちがイギリス系だと聞いても驚かないと云った。
私のことを、大変褒めてくれたが、いささか度が過ぎた。
ここに来る男の人たちはこんなにお世辞たらたらではないので、私はまったく鼻白んでしまった。
アイルランド訛りがどんなものかはよく分からない。
けれど、今日聞いたのが本物のアイルランド訛りなのだろうと思う。


1879年12月31日 水曜  
十二時十分。
『門松は冥土の旅の一里塚、めでたくもありめでたくもなし』 一休禅師
古い年が死に、めでたい新年が誕生するのを見守るために、キリスト教の信奉者たちが、幾人か十時に集まった。
ディクソン氏が会のリーダーをし、めいめいお祈りをし、賛美歌を歌ったり、この折に相応しい二言、三言いったりした。
そして各自が黙祷をしばらくすると新年が来た。
ああ、天なる父よ! 
如何に嘆き悲しもうと取り消すことのできない去年私の犯した沢山の罪や欠点。
そのことを思うと、私は胸が痛くなる。
そして私の足下にある恐ろしい未知の将来を見ようとすると私の魂は恐れおののく。
私の手は掛け金にかかっているのに、思い切ってあけて見ることができない。
良き羊飼いである主よ。
あなたの子羊をお助け下さい。
私を導きお守り下さい。