Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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【コラム】スウェーデンの福祉の現状とイタリアの医療崩壊の因果関係。オマケで上昌広先生についての小ネタ

[雑記]

イタリアの医療崩壊に戦々恐々しつつ、日本のマスコミがあまり報じないEUの医療事情のご紹介。
実を云えば最近の日本の医療業界関係と一部マスコミは「イタリア推し」だったんですね。
これはイタリアが長寿国であり、バチカンの本拠だけあって教会関係を通じた福祉関係の積み重ねが何百年単位で積み重なっていて洗練されていることもそうなのですが、主に持て囃していたのは「精神科の入院病床を敢えて廃止した」という点。正確には特殊な事情である程度は残っているそうですが、イタリアでは原則として精神科の患者を入院させずに「地域で癒やす」的な方針で対応しているからだそうで。
確かに日本の精神科の昔の座敷牢めいた対応は問題が多すぎるので(うちの病院でも改築前は鉄格子付きの、見た目完全な牢獄部屋があった)イタリアの事例を参考にするのは良いのですが、今回の本題はそちらではなく。


何故日本のマスゴミが一昔前みたいに「北欧やイギリスは医療福祉大国! 日本は北欧やイギリスを見習え!」とか以前よりは見ないようになったかと云えば、北欧が既におかしなことになってしまっていると同時にEUの政策のせいで、既に一部のEU内低所得国で医療崩壊が絶賛進行中だからなんですね。
具体的に云うとスウェーデンの直近二回の国政総選挙の主な争点がなんだったかと云えば「病院の待ち時間改善」だったという点で既にヤバさが漂ってくるわけで。
しかもこの「病院の待ち時間改善」は日本人の思うところの「朝、病院に行って診察されるまでに3時間も待たされた」とかそういう次元ではなく。
日本人もようやく最近認識してきたようですが日本の医療機関でのフリーアクセス、つまり原則として「自分の選んだ病院に自分の意志で行ける」という制度はヨーロッパ主要国では完全に異端、というか自分の知る限りフリーアクセスの国などない筈で。


では体調が悪くて病院にかかりたい時にどうするかと云えば。
ヨーロッパで一番システィマティックに運用しているのがイギリスなのでイギリスを例にとって説明しますと。
病院に罹りたい人はまず自分の住んでいる地域内の診療所等に電話します。
自分の住んでる地域以外の診療所には電話しても駄目です。「この地域の住人が電話できる病院はこちら」というリストがあるのです。
で、電話すると、電話先には看護師の上位互換みたいな人が症状を聞き取り、診察に値すると判断された人だけが「よし、診療所に来ていいぞ」ということになり、そうでない人は「ドラックストアに行って自分で薬でも買ってこい」と門前払いされるのです。
なおこんな極端に医療側重視の制度なので市民にも対抗手段があり、市民は自分が電話した診療所の評価をネットに反映させることが出来るのです。一番近いイメージで云えば「医療版食べログ」といったところでしょうか。しかもこれを「公」がやっているのです。日本でやったら大炎上案件が大量に発生しそう。・・・主に逆恨みで。
イギリスはここまで徹底してしまいましたが、ヨーロッパ諸国の医療アクセスというのは概ねこんな感じの流れの筈です。


ここでスウェーデンの話に戻りまして。
「じゃあ、スウェーデンの病院の待ち時間改善って何?」ってことになるのですが、これは簡単。
最初に診療所にかかってから大病院に紹介されるまでの時間、なのです。具体的に云うと
「ヤッベー、この患者、なんか癌っぽいぞ。早く専門病院を紹介しなきゃ。急がないと二週間以上かかるし」
ここで云う「二週間以上かかる」が「病院の待ち時間」なわけです。
スウェーデンの総選挙で掲げられた公約が「二週間以内に専門病院にかかれるようにする」だったので、逆説的に云うと「二週間以上かかる」のが常態化しているのでしょう。
更に正確に云うと、コンハーゲンは世界的な企業も拠点を構えているだけあって、医療機関もそれなりに整備されているので状況はまだマシな模様ですが、スウェーデンの地図を見て頂ければ自明ですが、人口密度が極端に低い北部は専門病院そのものが少ないため必然的に待ち時間が伸びに伸び、遂にスウェーデン人さえブチ切れて待ち時間問題が総選挙の話題になる始末。


さて、ここで少し遠回りになりますが、スウェーデンという国と国民に対する大多数の日本人の誤解を解くための基礎知識。
日本のマスゴミだけではなく国際的な調査でも「スウェーデンは福祉に手厚いので国民の幸福度が高い」という報道がなされます。
それではその当のスウェーデン人が「どのような死生観」を持っているのかといえば。
「社会人としての務めを果たし国民としての義務を終えたら、手厚く整備された福祉施設で余生を過ごす。
大病を患ったら無駄な延命処置など受けずに、安らかに天国への階段を上る」
典型的なキリスト教徒の考え方ではありますが、スウェーデン人はこの死生観が極端に先鋭化しています。
日本の老人が長生きしたがる最大の理由は「孫やひ孫が大きくなるのを見たい」だと思われると同時に、長生きすることの一番の懸念は「子や孫に迷惑をかけたくない」だと思いますが、スウェーデン人は少なくとも後者について思い悩むことがありません。
何故か。「老後を子供に支えてもらう」という発想がそもそもないのです。
卵が先か鶏が先かの論理ではありませんが、スウェーデンの老人福祉が充実しているのは、そもそも年老いた親を子どもが面倒を見るという発想や習慣が国民にないため、長命化した現代において老人福祉施設が社会的に強く要求されたことの裏返しなのです。
日本のマスゴミによるスウェーデン礼賛がおかしいのは、このスウェーデン人たちの基本的な家族観・死生観を全く理解しないままに「スウェーデンの福祉は素晴らしい。対して日本は~」とやるからです。
ついでだから書きますが「スウェーデンは女性の社会進出が進み、男女平等が進んだ素晴らしい国」という日本のマスゴミの報道は皆さん飽きるほど見ていると思いますが、スウェーデンが男女平等社会になったのはちゃんと理由があるのです。
もの凄く簡略化して云うと「離婚がごく普通の社会観であるため離婚原因が生じて離婚に至っても慰謝料とか財産分与とかは一般的に発生しない(←重度の一方的な離婚理由があるときは別なのでしょうが)」。
日本だと夫婦の共有財産は、専業主婦だったとしても一定程度妻に持分があると認められますが、そもそもスウェーデンはそのような考え方が存在しない。恐らく「夫婦は一つの財布」という概念も極端に薄い。つまり「夫の稼ぎは夫のもの、妻の稼ぎは妻のもの」と「ある意味で」当たり前の考え方をしている。
更に云うと、日本の専業主婦は無職であっても会社員・公務員の夫がいる場合は夫の年金に組み込まれ、一定の年齢到達後は年金を受け取れますが、当たり前ですがスウェーデンにおいてはそのような制度は存在しません。
つまりどういうことかと云うと、スウェーデンにおいては、ある日突然離婚が発生すると、専業主婦をやっていた妻は即座に路頭に迷うことになるわけです。
だから普段から手に職をもって働いていないと不安で暮らしていけないため専業主婦なんて「危ない生き方」は到底想像がつかないわけです(勿論スウェーデン人がそのような論理を自覚してはいるわけではありませんが)。


で、ここで先程の話に戻るのですが、スウェーデン人には老後子供に世話になるという概念がない。
日本だと「子は鎹(かすがい)」といって夫婦仲が冷め切った夫婦でも子供の存在が夫婦の破綻を回避していることがありますが、云い方は悪いですが日本人にとって子供は老後の保険でもあるのです。
勿論昨今は両親を田舎において上京し、そのまま都会で家族を作る、という生活スタイルに変わりつつありますが、それでも日本人は、親がよほどのロクデナシでもない限り「最終的には親の面倒をみないといけない」と思っていますし、親も内心それを期待している。
恐らくスウェーデン人には日本のこのような家族観が理解できないし、多分懇切丁寧に説明したら「日本人はなんと原始的な家族観をしているんだろう」と呆れられることでしょう。
要するに超極端な個人主義の行きついた先の一つの形がスウェーデン人たちの生活スタイルなのです。
最近の日本人の価値観もこっちの方向に舵を切りつつある気がしますが、そのことの是非は別として、恐らく日本の現行の介護制度における「財政的理由」でスウェーデンのようにはならない、というか「なれない」とは思いますが、詳細は更に本筋と離れるので省略。


さて回り道が随分と長くなったので本題に戻りますが。
こんなスウェーデン人でさえ「病院の待ち時間」に痺れを切らしている現状なわけですが、では医師はさぞ激務を強いられているのだろうと思いきや、さにあらず。
スウェーデンにおける医師は高給取りであり、長時間労働とは無縁であり、夏には長期バカンスが保証されているという「超勝ち組」なのです。
医師の給与の手厚さはスウェーデン福祉国家政策として当然であるとしても、国民から病院の待ち時間問題で突き上げを食らっているにもかかわらず医師が日本の医師のように長時間労働にさらされることがないのは考えてみれば当然。
そもそもスウェーデン国民には冒頭で述べた通り医療機関へのフリーアクセス権はなく、地域の診療所に連絡してからでないと診療して貰えないわけですが、診療所はその日に対応できる患者しか受け入れない。
日本と違って医師には患者の治療を拒否する権利があるので「その日対応できる数の患者しか受け入れない」と合法的に判断できるのです。
勿論患者が生死の境をさまよっているような症例の場合は別なのでしょうが、こちらは救急対応の病院の領域であって診療所の医師は対応しません。なお「当たり前」ですが、救急車で搬送されると別途料金が発生します(その後に国費で穴埋めしているかどうかは不明ですが)。
更に恐ろしいことに医師が長期バカンスに出ていると、診療所に連絡しても「先生は長期バカンスで不在です。バカンス終了後にまたご連絡ください」と本気で返されるそうです。
近隣に診療所がある都市部はまだ別の診療所に連絡するだけでしょうが、スウェーデンの北部なんてどう考えてもスカスカの地域の患者はいったいどうするのか。このような話を含めての「病院の待ち時間問題」のようですが。


で、更に悪いことにEUの制度がスウェーデンにおける医師の焼け太りをますます加速させているわけで、実はこれが現在イタリアで起こっている医療崩壊の遠因でもあるわけです。
簡単に云うとEU加盟国で医師免許を取得すると、EU圏のどの国でもその医師免許が通用するという制度があるのです。
この結果、現在EUで何が起こっているかといえば。
医師給与が高い国(ドイツ・フランス・イギリス・スウェーデン等)にポーランドハンガリーなど医師給与、というか国民得がそもそも低い東ヨーロッパ諸国で医師免許を取った医師たちが流入するという身も蓋もない資本主義原理の蔓延。
結構これが洒落にならない事態で、日本に置き換えて想像すればよく分かると思いますが。
医師を増やしたいということで医科大学補助金奨学金をつけて医師を養成したにもかかわらず「日本の医師免許がアメリカでも通用することになりました」という制度が開始されたため、日本の医師が大量にアメリカに流出してしまい、その結果日本国内の医師がスッカスカになり、国民の治療がままならなって医療崩壊に至る。。。
これが現在EUで起っている事態の正体です。


報道で聞く限りイタリアは財政健全化のために国内の病床を削減していたたそうですが、実はイタリアの医師は全然困っていなかった。なぜかと言えば医師免許がEU全土で通用する以上、国内にとどまっている理由はなく、フランスやスイス、ドイツに新たな職を求めればいいだけだから。困るのは取り残されたイタリア国民ばかりなり。
で、更に問題は今までの話で分かったと思いますが、この医療崩壊はイタリアに限らない可能性があるわけです。
東欧に飛び火すると、オーストリアハンガリーポーランドあたりは医師がかなりドイツに流出しているとのことで、これら各国の医療体制が現状どうなっているかは日本からは想像がつかない。
日本の病院使節団がオーストリア視察に行った際の記事で「ドイツに若手医師が流出して困っている」という記述があったので実態はかなりヤバイのかもしれない。
この辺は全く日本のマスゴミの取材に期待できないので、あちらの記事を翻訳でもしないと実態が伝わってこないのがもどかしい。
ともあれ、これ以上感染拡大しないことを心から祈りたいですが・・・日本人からするとどう考えても理解しがたいのですが、翻訳記事を読む限り欧米人たちのそれなりの数の人間がこんな風に考えていて絶望気味。
「中国人(アジア人)は不潔で非衛生的だから感染症を拡大させたんだ。
俺たち欧米人は衛生的で文化的生活を送っているから感染拡大なんてしっこないさ」
・・・こんな時に日本ageするのもどうかと思わないでもないですが、国民の総体で見ればどう考えても日本人の清潔好きは世界でも突出しているわけで。
恐らく日本国内でも新型コロナの「未確認の感染者」はかなりの数に上ると思いますが、肺炎による重症患者であれば日本の場合は家にいても老人施設にいてもまず間違いなく病院に担ぎ込まれます。
そうするとこの新型コロナの感染力からいって相当の確率で院内感染が発生する筈(実際いくつかの病院で院内感染が確認されているわけで)。
マスゴミの片棒を担ぐ「専門家」たちが「日本は安倍政権に忖度して隠蔽しているだけだ! 対して全例調査する韓国は素晴らしい」と壊れたオルゴールのように繰り返していますが、完全に手段と目的を取り違えた韓国(やイタリア)の何処に称賛する部分があるのか。
勿論全例調査する意味がある場合もあります。
感染経路が完全に追える程度の小規模発生の場合と当該感染症の致死性が極めて高い場合です。
でも今回のこの新型コロナはどちらも当てはまらない。
そうであれば「軽症者は病院で院内感染させないために感染の有無を確認するまでもなく自宅待機、重症の肺炎患者に医療資源を集中。発生してしまったクラスターは確実に一つ一つ潰す。クラスターが極力発生しない環境を国民に周知・協力させる」で何も間違っていないし、逆にこれ以外の何をしろと。
そもそも糞マスゴミどもの「安倍政権が隠蔽している!」との主張ですが、うちの病院にも厚労省からの通知が毎日のように来ていますが、その何処に「感染者を隠蔽せよ。検査をするな」なんて書いてあるのだか(敢えて言うなら検体の送付方法が極めて厳重過ぎて正直面倒くさそうだとは思いましたが)。
「いや、もっと上位の、県や病院の偉い人間に指示しているのだ!」と主張するのかもしれませんが、日本には民間の病院が諸外国に比べても突出して大量にあって、ぶっちゃけ大手民間病院の偉い院長たちは結構な数が「反安倍政権」だったりします。
その手の院長が主導している病院業界紙はそれまでまともに医療問題について論じていたのに、突然あるページから反安倍・反トランプネタをぶっこんできたり、更に露骨にコラムやあとがきで延々と反安倍をぶち上げるのでウンザリしてくるのです。
日本の医療制度改善の特集号なのに、突然ミラーマン植草の解説が登場して、途中から「安倍政権の陰謀を暴く」的展開になって頭を抱えた業界雑誌もあった、というのはウソのような本当の話。


さて、相当長くなってまいりましたので今回のところはこの辺で。
厚労省からの通知が見たい」という要望がありましたら、アップします。
ただ院内の掲示板にはPDFで上がっているのですが、今時は当たり前ですが院内イントラから外部には持ち出せない仕様になっているので、プリントアウトして写真をとってそのままアップ、くらいになりますが(・・・厚労省の正式な通知だし、全国に通知しているものは秘匿するような情報は書いていないのでアップしても問題ないと思うけど、一応要検討)
最後に、上のEU圏内の医師免許の件に関する「上ネタ(笑)」を提供。
ネット界隈で「感染症の専門家(笑)」にして「イタリアクルーズ船対応絶賛(草も生えない。。。)」したことで「勇名」を馳せる上昌広先生ですが、以前読んだ上先生の記事の主張がこんな感じ。
「国際的に活躍したい医師志望者は、学費も高く、医局が牛耳る日本の大学などではなく、安価で済むハンガリーで医師免許を取ろう! ハンガリーで医師免許を取ればEU全域で医師活動ができるぞ!」
・・・ハンガリー人がこの記事を読んだら、怒髪天を衝くだろうなあ。。。
上先生が安価に自動車学校の免許を取るような感覚で医師免許を考えていることがよく分かるエピソード。
ちなみにこんな主張をする上先生の持論はこんな感じ(このネタはコラムで何回も読んだ)。
戊辰戦争で負けた藩の所在地には医大が少ない。
 これこそ日本の医師偏在が発生した原因であり、薩長政権こそ諸悪の元凶だ!」
です。
ギャグじゃなくて、本気でこう主張しているんですよ、この人。
こんな反安倍が骨の髄までしみ込んだ人間を、この非常時に国会に呼んで日本の防疫制度を破壊しようとする立憲民主党の議員は全員即座に国会議員を辞職してもらいたい、本気で。
ともあれ立憲民主と糞マスゴミが酷すぎて、このまま糞マスゴミをのさばらせておく日本国民をマジで害しかねないのでこんな記事を書いたわけですが、今回のコラムに賛同してもらえたなら拡散していただけると幸いですm(_)m。