Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの日記 超訳版第6回−3

1875年12月1日 水曜日
「日本語の勉強がしたい」
お祈りの後、家族や富田夫人、小野氏、盛たちがいる前で私がそう宣言したのは、まだ一週間足らず前の事だ。富田夫人はすぐに「それでは教えてあげましょう」と仰り、しばらくして新聞記事を書かれていた小野氏が原稿から目を上げて私に聞いてきた。
「話法ではなく、文字を習いたいんですか?」
「ええ」
「よし、良かったら私が先生になってあげましょう」
その翌日から私の特訓は始まった。
小野氏は、早速四十八文字がきちんと書いてある細長い紙を二枚持って来られた。最初の試練は富田夫人の監督のもとで行われた。書き上がった後、先生の小野氏に私の幼稚な努力の跡をお見せすると、先生は諸々指摘して下さった。「とても良いが、この字は斜め過ぎる」「それは真っ直ぐ過ぎる」「全体に字が小さ過ぎる」などなどだ。
「いえいえ、最初にしては本当に美しく書かれていますよ」
富田夫人はそう褒めて下さったが、私は率直に云って貰う方が嬉しいのだ。
小野氏もフォローするように「とても見込みがある」と云って下さったけれども、実は些か気がくじけている。
それから二日間、私の日本語勉強熱はひいてしまっていた。そこで小野氏は私が読める日本語の本のことや、規則正しく勉強を始めたら楽しいだろうと提案された。私と同様に、小野氏は英語の読み書きをとても習いたがっていらっしゃるのだ。
小野氏の受け売りによると、日本には大名、サムライ、富裕な商人、中小の商人、職人、職工、労働者、人力車の車夫等々に、それぞれ慣用語があるのだそうだ。加えて女の人には独特の言葉があり、男の人の書く文字を読めない者もいるという。
日本語は上記の他に清国語とオランダ語が混じっていて、文法のようなものを作るのが殆ど不可能になっている。だからこの育ち過ぎた言語を習得しようとしても上手くいかないかもしれない。そしてこんな難しいものの勉強を始める前に、自分自身の言葉にもっと精通した方が良いのではないかと、本気で考えざるを得なくなってしまった。