Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第21回−2

1876年10月10日 火曜日
昨日の今日で、というべきか、母と私は銀座で矢田部氏に出会ってしまった。
何故だか矢田部氏が銀座の真ん中で長い枕を腕に抱えていたのだ。
私たちはチェスのセットを注文しようと思っていたところなので、母は矢田部氏を呼び止めて「チェスは日本語で何というのですか?」と尋ねた。
矢田部氏は、明らかに狼狽えた様子で、紙包みにくるまれた長い枕を背中の方に隠した。きっと私たちに会いたくないのだろう。
それにしても矢田部氏が抱えている枕、やたら大きいような? 丁度日本人の成人女性の背の高さくらいある。
矢田部氏はその枕の置き場に困ったようで、道路脇の井戸の後ろにそれを立てかけたが、置き放しにすることもできず、片目で枕をせわしなく見ながら、進み出て私たちに挨拶をした。
枕→私たち→枕×∞と動く矢田部氏の視線の様子はとても滑稽だった。矢田部氏は、ついに人力車を呼んだ。でも乗せたのはご自分じゃなくて枕の方。この枕は余程大切な物だろうか?
そしてご本人は母の車と並んで歩いたけれど、その態度は慇懃そのものだった。