Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

クララの明治日記 超訳版第21回−1

1876年10月9日 月曜日 
また困ったことが起きた! 今晩、丁度ウィリイがインブリー家へ行きたいと思っていたところに矢田部氏がみえたのだ。
「明日が早いので私は先に休ませて貰いますから」
母が早々に引っ込んでしまったので、結局矢田部氏の相手はウィリイと私が相務めることになってしまった。
話が進むにつれて、ウィリイの顔色が変わっていく。厭で厭で仕方ないらしい。我が兄ながらなんて短気な。
私はそんなウィリイが恥ずかしくて、矢田部氏を楽しませるよう努力していたのだけれど、九時も半を過ぎると、恐れていた最悪の事態に発展してしまった。
「クララ、明かりを消して出ておいで。おやすみなさい!」
ウィリイは肩を怒らせて部屋から出て行ってしまった。ああ、困ったのなんのって! 私は恥ずかしくて一言も云えず、道化役者のように俯いて坐っていた。
矢田部氏は吃驚したようだったけれど、非常に穏やかに「おやすみなさい」と云って、ちょっと笑みさえ浮かべて見送った。
それから二人で見ていた本をしまうと、時計を取り出して、悲しげに仰った。
「九時半ですね。もう行かなくては」
私は「すみません」とだけ、なんとか云ったのだけれど、頭はあまりにもくらくらしていたので、なんで「すみません」と云ったのか分からなかった。日本人と長い間、付き合いすぎてしまったため彼らの習慣が感染してしまったのかも知れない。
それにしても矢田部氏は上辺は丁寧にしていても、内心は怒って、侮蔑されたと感じていたのは明らかだった。もう二度と訪ねてくることはないだろう。
母はウィリイに対し本当に腹を立てている。
「矢田部氏がそんなに長居するのは嬉しくないですけれど、ウィリイが矢田部氏に失礼なことをするのも嬉しくありません」
ウィリイは明日行って謝ると云っている。ちゃんとした態度をとって、埋め合わせをしたいと切に願っているのだが、ウィリイもまた随分軽率で衝動的な人間である。