Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第21回−9

1876年10月21日 土曜日
今日は素晴らしい日だ。こんな気持ちの良い天気はうまく利用しなくてはならない。
母とウィリイとアディは横浜に出かけた。午後は富田夫人たちとお浜御殿へ行く予定だったのだけれど、母が横浜に行きたいと云い、また富田氏が帰っていらっしゃって、奥様がお留守だとお怒りになるかもしれないので、取りやめになった。
本当に今日はとてもいい気持ち! 掃除は綺麗に仕上げたし、ケーキとパイは作ったし、洗濯をして入浴もしたし、お浜御殿に行けなかったのはがっかりだったけれど、そんなことは構わない。私は幸せだ! まだお昼の十二時だから、これから後は自分のしたいことをすればいいのだ。
早いうちに最近溜まっていた日記を書き終えると、○○さんから手紙が来た。
けれど内容はまったく馬鹿げたものだった。あの情熱的な言葉でうちへ来たいと云い、私は名前の前にある形容詞を最上級で使うなんて、どういうつもりなのかしら? でもまあ、みんな戯言なのだろう。
それからエマ・ヴァーベックが、弟のチャニングと別当と一緒に馬車でやって来た。
「一緒にジェシー・フェントンを訪問しましょう」
馬車は快適で、三時半には芝に三十三番地に着いた。フェントン氏の家はとても気持ちのよい大名屋敷である。
エマは巫山戯て日本人風に「おジョシーさんいますか」と云い、自分の名前を「フルドベックサンです」と云った。日本人風の発音にすると「ヴァーベック」という彼女の苗字は「フルドベック」若しくは「フルベッキ」としか発音できないのだ。
エマが真面目くさってこのおどけた名前を云うので、笑わずにはいられなかった。
ちなみに、日本人は私たち「ホイットニー」家のことを「ウチニ」と呼ぶ。
ジェシーは家にいた。フェントン夫人に挨拶してから、庭に出てクローケーをした。チャニングも加わって、一緒に数回ゲームをした。それから五時半まで、鬼ごっこや隠れんぼをして遊んだ。
家に入ると、ジェシーがコップを持ってきてからまたいったん部屋を出て行った。
そのコップがシャンパン用のものだったから、ちょっとした議論になってしまった。
「……一体これで何を飲むのかしら?」
「僕、シャンパンなんて飲めないよ!」
「そんなの私だってよ」
私たちが闘志を燃やし始めた時、ジェシーがレモネードの瓶を持って入ってきた! 私たちはわっと笑いだし、ジェシーはきょとんとして――でも説明する気にはなりなかった!
帰り道、ずっとエマは上機嫌だったけれど、同時に老馬が走り出すのではないかしらとひどく怖がっていた。
馬がぐんと引っ張ったり、普通より早く駆けたりするたびに私の腕を掴んでこう云うのだ。
「いい? 馬が暴走したら飛び出せるように、片足を外に出しておきなさいよ」
別当が馬の頭のところにいて一緒に走っているのに、びくびくしっぱなしだった。本当にお逸とは対照的な反応で、私はそんなエマを見て笑ってしまった。
木挽町の我が家に着いたのは六時頃で、母とアディが玄関に出迎えてくれた。
母たちも何もかも申し分なく楽しい一日を過ごし、アメリカ公使ビンガム氏と、上海副領事シェパード氏と一緒に帰ってきたが、鞄を持ってくれたビンガム氏の腕にすがりながら来たのだという。
もっともウィリイは我が家に伝わるむしゃくしゃ気分が起きて、そのまま家に帰りたくなくなったらしい。
「汽船ペキン号で富田氏が帰ってくるかも知れないから」
そんな理由をつけて、バラ家に泊まるつもりになっていた。母はウィリイが泊まろうとしていることを知らなかったが、二時間後にハミルトン氏が来られて「ウィリイ君が泊まってもよければ電報を打って下さい」と云われた。
母はとりあえず「よろしい」と電報を打ったが、それからずっと後悔している。