Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第21回−10

1876年10月22日 日曜日
みんなが健康なのでとても有り難い。母はすっかり体調を回復させ、顔が丸々として艶々した感じだし、私も確かに元気になっている。
それもこの気持ちの良い季節のお陰に違いない。故国の十月も素晴らしいけれど、日本のこのすがすがしい陽気にはかなわない。
……もっとも。今から数ヶ月後、これを読んだら、どんなに元気づけられることだろう。その頃には「日本のすがすがしい陽気」のため、家に閉じこもってただ坐っているだけの日々を過ごすことだろうから!
この晴れた朝、みんな“どういうわけか知らないが”この頃、滅多に行かない父まで、教会に行った。
ウォデル氏が、若さと健康と富と力を持っていながら、ある一つのものに欠けていた若い支配者を例にあげて説教された。
その人は道徳律を厳格に守ったが、それでも満足は得られなかった。ウォデル氏は道徳と真の信仰との違いを感情を込めて説明なさったが、とても興味深かった。大勢の人が出席していた。


午後、ウィリイがまだ帰ってこないので、私はアディを連れて勝家に聖書の授業に行った。
みんなの正規の勉強をみてあげて、賛美歌と戒律を一つ新しく教えた。賛美歌を二度歌い、お祈りをしてから聖書を読んだ。
終わるまで一時間半も掛かったけれど、私たちが行ったのを皆喜んでくださったようだった。生徒は、お逸、お逸の弟である梅太郎と七郎、そして滝村氏の娘であるおこまつだ。とてもとても面白い授業ができたつもりなのだけれど、日本語を正確に話すことが出来さえすればいいのにと思う。
梅太郎と七郎は一緒に坐っていたが、梅太郎が聡明なのは七郎は明らかに愚鈍だ。七郎が読むと、梅太郎が端から注意し、可哀想な七郎の腕をつついて、言葉をはっきりと発音してあげるのだった。
私が泊まる時、お逸と寝る寝台を見せて貰ったが、多分百年くらい前のもので、マホガニーか、または何かの黒ずんだ磨いた木でできている。明るい色の木材が嵌め込み細工になっていて、とても風変わりなものだった。丈は低く、赤ちゃん用の寝台のように周りに柵があって、横に出入りする戸がついていた。


帰宅して手紙の返事を書き、母と話をした。
今日は一日中、日本の女の人の運命を考えて気が重かった。
考えると心がとても痛む。そして日本の女の人の低い地位と希望の無さを見ると、自分の姉妹のように愛おしくなる。
ただ何もしてあげられず、その苛酷な運命を思ってただ泣くばかりだ。日本の女の人は結婚して二十五か三十くらいになると、若さと美しさを失ってしまう。
紅白粉を塗ることも、明るい色の着物を着ることも出来ず、ただ子供を産み、家事をするだけで、他に何も知らないうち肉体的、知的、精神的な生命をすり減らしてしまうのだ。
それ以外のものは何も望めない! 休日もなしに働き続け、幸せを期待することも出来ないのだ。
ああ、彼らに較べると、本当に、私はまるで神様に偏愛されているような気がする。
しかし、それに値することを私がしたのだろうか。何もしていなくて、持っている限りの能力も無駄にしているだけだ。このように云うのは、日本の恵まれない貧しい女の人のことである。
日本を訪れた旅行記の作者たちはその著書の中で、日本の女の人の地位や性格を褒めそやしている。私だけが違う意見を述べたようだけれど、これが私が実感として心に思っていることなのだ。
ああ、一人一人の姉妹の手を取って、襤褸を脱がせ 無知すら救いだし、聖母マリアのそばにおられるイエス様の神聖な足元に坐らせてあげたいと、どんなに熱望することか。