Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第23回−8

1876年12月4日 月曜日
いつものようにお逸が来た。授業の後、一緒に銀座へお使いに行った。とても優しい人で、私たち二人は大の仲良しだ。
祈祷会の始まる頃、富田夫人がご兄弟と来訪され、ご主人からと云って私に新しい本を下さった。四十七士の話『忠臣蔵』の英訳である。奥様は富田氏と一緒に上海へ行かれることになって、洋服をお召しになるので、母が準備のお手伝いをすることになった。
夕食後、矢田部氏がみえたが、この前の訪問から一週間も経っていない。今日の矢田部氏はひどかった。私の手を取ろうとするのを母が見て、私を部屋の外に呼び出してこう云った。
「矢田部さんは小さな事でも大袈裟に話す人で、日本人の知人も多いし、面倒なことになるといけないから、馴れ馴れしいことをさせては駄目よ」
矢田部氏のすぐそばに坐るのが嫌で嫌で泣き出したくなったけれど、母は本当によく私の気持ちを分かってくれた。
「今度みえたら外に連れ出してあげますから」
矢田部氏は帰る時、綺麗な小さな襟止めを私に預けていった。
それは三角形で真珠が十個とエメラルドが一つついている。何かの協会の記章で、片面に「コーネル」、裏側に「デルタ・ファイ」と「R・ヤタベ」と書いてある。
本当に下さったのかどうか分からない。
ただ「取っといて下さい」とかなんとか云われただけである。ウィリイと私がすぐそれを母の所に持っていったら、母は取り上げてしまった。