Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第23回−7

1876年12月2日 土曜日
今朝令嬢たちが来てから、団子坂の菊人形を見に出かけた。母とアディ、ウィリイとモモタロウ、お逸と私、おやおさんとおすみというように組んで十一時に出発した。
まず上野に行って昼食をとり、済むとまた人力車に乗って団子坂に向かった。
団子坂はあまり綺麗なところではなく、小さな家がごちゃごちゃしていて、あかぎれを切らした小さな子供たちが鼻水を垂らしていた。
だけど、今日はこんなものを見に来たのではない。高貴な花、菊を見に来たのだ!
坂になった狭い通りに面して、外側に提灯と紙製の花を吊した小さな門があり、字が書いてあって、中の人形が何を意味しているのか説明してあった。その様子を簡単に書き記してみよう。
最初の門を潜って、竹の簾の後ろを通って行くと、白い木綿で作った兎の頭を持った男の人――全部菊で出来ている!――が目に入ったけれど、見ているうちにその頭が上下に動いた。
隣には、富と幸福の神、大黒を象った人形があり、高く上げた手に米俵を持って、揺れながら驚くべき早さでくるくると回っていた。
菊の衣装はとても巧妙な作りで、坐った姿勢などは実に見事だった。大黒の頭は石膏で出来ており、背景には松と竹が風雅にあしらってあった。
次々と進んで行くと、色々なものがあった。
常緑樹で作った鐘をついている人。
狐の尾を烈しく振っている女の人。
藪から顔を出し、鳴き声を上げている二匹の子狐。
桜の花を集めている二人の貴婦人と一人のサムライ。
手足の麻痺した夫を荷車に乗せて、治療のために箱根温泉に連れて行く女の人。
女を殺している男。
ひっくり返ったベンチから老人が転げ落ちるのを見て笑いながら立っている茶屋の女。
小川を覗き込んでいる貴公子。
着物を洗っている女を見ようとして空から転げ落ちてくる神様。
木の柄杓をサミセンとして、洗濯ばさみをばちにして弾いている狐の女。
老人の頭を口から覗かせている巨大な蛙。その人は口から水を吐き、眉を上げていた。
上方の土手にいる一人の男が、丁度カトリックで十字を切るときのように、魔除けの、或いは怯えた時の印として、右手の人差し指と中指を左の手のひらに握りしめていた。
勿論、これらは皆、歴史的に有名な場面から取られていることなのだけれど、私には一つか二つ、例えば「刀鍛冶」とか、将軍に直訴したため、磔になった男と妻と二人の子供、といったものしか分からなかった。
花の細工は完璧で、着物、背景の配置の仕方、人形の位置などに巧妙な工夫が凝らされていた。六時に帰宅した。