Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第25回−8

1877年1月19日 金曜日
今日、滝村氏のお宅に招かれ、早めに来るように云われていたので、二時に家を出た。
滝村氏のお宅は永田町で、勝家の近くにある。内部は大して広くはないけれど、とても清潔できちんとしている。外見は古い大名屋敷に新しい玄関をくっつけたような感じだ。
滝村氏ご自身が、お子さん方と使用人たちと一緒に、外で出迎えて下さったけれど、近所の子供たちも興味深げに集まっていた。
着いた時のざわめきが過ぎ、靴を柔らかい室内履きに履き替えて、六段か七段の、梯子のような階段を上って、二階の教室のようなところに案内された。
私たちはとても厳かに<自分たちの大きさに合わせて>テーブルの周りに坐ったけれど、母が上座を占めた。
それから家族がやって来て紹介された。
滝村夫人は綺麗な方で――本当に<日本の既婚婦人にしては>格別美しい方で、お嬢さんのこまつにとてもよく似ていらっしゃった。
お祖母様、つまり滝村氏のお母様がいらっしゃって、お辞儀をなさり、大変丁寧な言葉遣いで口早にお話しなさった。
多分六十五か七十歳くらいでいらっしゃるだろう。とても美しい方で、雪のように白い髪は、これ以上考えられないほど巧みな小さなお下げにして後ろで纏めてあった。
きらきらした黒い目は非常に大きくて、丸い慈愛に満ちたお顔には、大変知的な表情が浮かんでいた。
五人のお子さんは、こまつ嬢、坊ちゃんの武夫、すみとおはた、それに男の赤ちゃんで、赤ちゃんは私たちを見て泣いた。


家族の方々のもてなし方はまったく上品だったし、勝家の子供達もいたので、とても気楽だった。間もなくみんなは「狩人貴族と召使」遊びに熱中し、三角の「賞品の包み」を取ろうと競い合った。
一等賞を取ったのは母だった。開けてみたら、厳かな顔をした人形と呼び子が入っていた。賞品は勿論みんな玩具だけれど、綺麗で風変わりで、とても愉快だった。遊びを何回も重ねて、とうとうテーブルの上は紙切れと、ありとあらゆる遊び道具で一杯になった。
最も滑稽だったのは「おかめ」遊びで、競技者の前に広げられた「幸福な顔」は輪郭だけが描かれ、おかめの目、眉、鼻、口はバラバラに切り離されている。
一人が目隠しをされて、その顔の上に、バラバラの切れ端を正しい位置に置こうと努めるのだけれど、なかなか上手くいかない。
全部済むと目隠しのハンカチを外し、みんなはその滑稽な顔を見てどっと笑い出す。
時には口が頬に行ったり、鼻が曲がっていたり、目が逆さまになっていたりする。どんなにおかしいかは想像では分からないくらいだ。
私たちを楽しませて下さるために持って来た遊びは数え切れないほどだったけれど、みんなとても面白かったとだけ云っておこう。
夕食は本物の日本料理で、食器も大変優美だった。
夕食後はゲームをしたり、話をしたり、影絵遊びをしたり、お逸の月琴の演奏を聞いたりした。最後にお逸と私は火鉢のそばに坐り込んで、二人だけで楽しく話をした。
「あら、クララ。貴女も8月生まれなのね。わたしは3日なんだけど」
「わたしは8月の30日」
「じゃあ、わたしの方が少しだけお姉さんだ」
少し誇らしげにお逸が云う。
「それじゃあ、今度の十七歳の誕生日会は一緒にしましょうよ」
夕方の六時にお土産を一杯頂き、挨拶を沢山受けて、親切な友達の家を出た。