Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第31回−2

1877年5月23日 水曜日
今日もわくわくするような日だった。
岩倉具視公とその他のお偉方――東伏見宮公、寺島公、松方公など――の面前で気球が上がったのだ。
エンジンがガスを入れ始めたのは朝の五時だったので、道を塞ぐ人はまだあまりいなかった。この時刻に通る人は仕事に行く途中なので急いでいるからだ。
九時に、杉田夫人とお祖母様、およしさんと二人の坊ちゃん、それから感じのよい医学生、田宮氏がみえた。
間もなく人力車の一群がうちの門のところで止まり、徳川家の後継者である家達公が、滝村氏、大久保氏、勝海舟氏といった三人の随行を引き連れておいでになった。おこまつ、武夫、玄亀とお輝も一緒だ。
大鳥圭介氏は二人のお嬢さんと私の知らない女の友達大勢と、使用人を二人連れて来られたのだけれど、この人たちが来るとは考えてもいなかった。
全部で三十六人という多人数がこの家に集まったわけだが、実際に招待しておいたのは、勝一家と滝村氏のご家族と徳川公だけである。
気球そっちのけで、お客様のもてなしで大変だった。
徳川公のご一行はいつになく気を遣ってくださった。
ハカマなど日本の着物を堂々と着こなして、慇懃で穏やかで愛想良く、私たちを快くおもてなしできた。
大久保氏は特に私に優しくしてくださった。
間もなく気球に飽きてしまったので、皆私の後について家中を見て回ったが、とても面白かった。
母の部屋に入ると、わたしの部屋だと思ったらしく、あれもこれも細かく点検し始めた。
徳川公はベットに飛び乗って、軋む音を面白がっていた。
大久保氏は手鏡を取り上げて、自分の顔を熱心に眺め、勝氏と滝村氏は飾り棚に乗っている骨董品を一つ一つ調べていたが、滝村氏はその中のいくつかについて貴重な知識を提供して下さった。
「この数個の杯は孔子の時代の物ですね。実に素晴らしい」
ベッドの上に掛かっている勝安房守の写真や、私たちの描いた油絵と着色石版画、私の勉強した教科書にも目を留めていたが、最も皆様のお気に召したのは、刀の装飾品の置いてある戸棚だった。
それから午餐の時、大久保氏は名高い日本のお菓子、カステラの製法を送って下さると約束なさった。
少し歌を歌ってから、杉田ご一家が帰られ、すぐ後に徳川ご一行がお立ちになった。
お逸と梅太郎はもう少しいて、鞠遊びをたっぷりしてから家へ帰って行った。玄亀ちゃんとお輝ちゃんはおこまつは五時までいた。
どんな楽しい時にも終わりがあるように、この楽しい一日も終わってしまった。
しかし、日本人の友達と過ごした時間は私にとって、いえ私たち皆にとって、本当に素晴らしいものだった。
沢山のなんでもない出来事に、彼らの私たちに対する敬愛と友情が表れているからだ。