Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第38回−1

1878年1月1日 火曜日
元旦! また元旦が巡って来た!
でも私は新たな決意はしない。
いくら決心しても、いつも実行できないのだから。
ただ「主イエスよ、なにとぞ我を完きものたらしめ給え」と祈るだけだ。
私たちは夜明けとともに起き出すつもりだったのだけど、寝坊してしまった。
朝食は七時に予定していたのだけれど、テーブルについたのは九時前後になる有様。
せきたてられるように急いだ結果、みんなあまり機嫌がよくなかった。
お客様は十時にもならないうちにみえ始めた。
でも今日はあいにくの空模様。
訪ねてきたのは、雨にも風にも負けない商法学校の生徒が主。
午前中ずっと客間に坐って、お客様にご挨拶をして過ごした。
午後になると、偉い方たちや、外国人のお客様がおいでになった。
マッカーティ夫人が、ビンガム夫人と一緒に公使館でお客様の接待をなさるので、私はユウメイを家に招いた。
正月のご馳走を囲みながら、いっぱいお話をした。
驚いたのはユウメイの食欲の凄さ。
ご馳走やケーキが次々にユウメイの胃袋の中に消えていく。
私よりずっと小柄な身体な身体の何処にあんなに入るのだろう?
彼女は夜までずっといたので、ウィリイが年始廻りを済ませて帰ってきてから、とても楽しい時間が持てた。
お天気が悪かったので、公使夫人を表敬訪問したのは三十人だけだったそうだ。
お客様の数は私たちの圧勝だった。でも私たちのお客様は殆ど日本人だったのだけれど。
きっと今日外出した外国人は殆どいなかったのだ。
「ジェニーとガシーは長い裳裾のついた服を着てお客様を接待していたよ」
ウィリイはこのお嬢様方のうち、ヴィーダー家の他に数軒回ってきたとのことだ。 


夜遅くになって、富田氏から凶報がもたらされた。
気の毒な松平康倫氏。
おやおさんの婚約者である松平氏は、金曜の晩に苦しい病気で亡くなったというのだ。
「まだ内密にしておいて下さいよ」
富田氏によると、貴族は死後三日経たなければ亡くなったと云わないのだそうだ。
「今度の日曜日に密葬が行われ、次いでお葬式が執り行われる予定です」
本当にお気の毒な方。
アメリカの我が家にみえた時から、まだ四年しか経っていない。
あの時は健康そのもので、前途有望な青年であった。
誰が彼の魂に天国への道を指し示したであろう?
ちなみに、彼の家族との関係は複雑極まりない。
家族内の結婚や養子縁組によって、彼は祖父の息子であり、自分自身の叔父に当たり、姉の甥に当たるのだ。
如何にも奇妙な話であるけれど、貴族の間には、しばしばもっと奇妙な家族関係がある。
一人息子だと私たちは理解していたけれど、亡くなった途端に、別の人が彼の地位に就いた。
その人が今度の葬儀の喪主となるようだ。
では、おやおさんは一体どうなるのだろう?
ただただ康倫さんの妻となるように育てられてきたのに。
アメリカにいた当時、私が貰った康倫さんの年賀状を、あんなに喜んで持って帰ったおやおさんのことを思い出す。
とりわけ、お正月という喜ばしいときに亡くなるというのはなんという悲しいことだろう。
悲しみに打ちひしがれている家族にとっては、お正月のお祝いは嘲笑としか映らないであろう。
従臣たちは、主人に向かって新年おめでとうという代わりに、その冥福を祈らなければならないのだ。