Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第40回−2

1878年2月5日 火曜日
母は大鳥夫人のお葬式に参列するために出かけたので、アディと私で留守番をした。
日本人のお葬式に参列するのは初めてなので、帰ってきてから詳しい説明をしてくれた。
大鳥氏は三田光坂十四番地の新しい美しい屋敷に住んでおられる。西洋館である。
大鳥夫人の葬儀には大勢の人が集まっていた。
現在は工部大学校の理事長なので、先生方も生徒達もみんな呼ばれていたらしい。
奥様の遺体は西洋式のお棺に入れられ、お棺は屋形船の形をした霊柩車に乗せられた。
その前で七人の豪華な絹の衣を纏った僧侶がお経を上げ、家でのお経が終わると列を作ってお寺に向かった。
行列に加わった人は千人近くもいたそうだ。
一番先頭に墓標が運ばれて行ったが、墓標には「従五位大鳥圭介の妻お道女、明治十一年二月五日」と書いてあった。
お寺では僧侶がお経を上げている間に、遺体の前で長男の富士太郎さんから順々にみんな焼香した。
遺族の焼香が済むと、他の参列者も焼香したい人は焼香した(なお大鳥氏は日本のしきたりに従い、家で留守番をしておられた)。
矢田部氏も来ていて、焼香しておられたそうだ。
しかし、みんなが一番驚いたのは、ディクソン氏も焼香(!)したことだった。
一応礼儀としてそうなさったのだと思う。
けれど、帰ってから他の先生方にとっちめられていたそうだ。
「お葬式のような感じがしなかったわね」とは母の弁。
家の中には大勢の人が来ていて、食べたり飲んだり騒いだりしていた。
お嬢さんであるおひなさんとおゆきさんは、まるで花嫁のような色物の着物を着ていた。
「お葬式の場では、色物ではなく白の服を着なくてはいけないのよ。髪の形も普通と違うようにしているし。もっとも女の人、特に若い娘はお葬式に行かないのが普通よね」
これはお逸による解説。
葬儀の列も奇妙なものだった。
霊柩車、僧侶、墓標――その後に列を作っていない生徒たち、無数の人力車、二、三台の馬車、徒歩の外国人教師たち。
外国人の女性は、ミス・ヤングマン、ミス・ギューリックと母だけだった。
母は私が行かなくてよかったと思ったそうだ。
お逸の解説からしても、どうやら若い娘の行くところではないようだ。
大鳥氏は三日間喪に服されるけれど、夫が亡くなった時には妻は四十九日間服喪する。
婚約者を亡くしたおやおさんの場合、七十九日服喪しなければならないそうだけど、日にちの基準がよく分からない。
とにかく奇妙なお葬式で、西洋式でもなく、日本式でもなかった。
一日中陰気なお天気で、とても寒い一日だった。