Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第43回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第43回】
「というわけで、先週の予告通り村田氏の結婚式の模様をお送りしましたー」
「明治初期の高級官僚の結婚式の模様としては、非常に貴重な記録ですわね」
「では、まずこの結婚式の主である村田一郎氏についての解説を。
薩摩藩士である村田一郎氏は安政4年、つまり1857年生まれ。つまり結婚した時点で、まだ二十歳そこそこなのよね。
クララの日記によると、これ以前にもアメリカ留学の経験がある村田氏は、どうやらこの後、もう一度アメリカ視察に訪れたみたい。その時の経験を生かして始めたのが製紙業」
「形式的には二台目社長ですけれど、実質的にこの村田氏が興した会社が富士製紙。
直系でこそないものの、この会社が現在の王子製紙の前身の一つですわね。
それにしても、僅かながら残る社長としての村田氏の業績を見ると、若い頃と全く変わっていませんのね。“会社の内外関係の事務処理を完璧の域に達するまで整備し、いかなる通信も忽にせず必ず自ら返信を出した”。なかなか出来るものではありませんわ」
「男爵となった村田氏が晩年になって建築した邸宅が鎌倉市指定景観重要建築物として指定され、現在も残っています。
名前は「かいひん荘鎌倉」
「なんとこの建物、宿になっていますのね」
「この当時の建物はそれなりに残っているけれど、宿になっているのは珍しいよね。クララの家もこんな感じだったのかな?」
「さて、余談はさておき、本筋に戻りますわよ。この村田氏の結婚式の仲人を務めている“川路氏”というのは“大警視”である川路利良氏のことかしら?」
「確定できないけど、経歴と村田氏の出身からして多分ね。
川路利良。欧米の近代警察組織の骨格を日本で初めて構築した日本警察の父。余談だけど山田風太郎先生の明治物小説ではレギュラーキャラとして結構登場するよね。
でも、本当にこの“川路氏”が川路利良氏だったとしたら、この年の3月、というと日本の歴史を大きく転換させて事件に関わっている筈なのよ」
「なんですの、そんな大仰に?」
「丁度この月、薩摩の高官である黒田清隆氏の妻が病死なさった際、黒田氏が酔って妻を殺したという噂が流れたの。その噂があまりに広まってしまったものだから、大警視たる川路氏が直々に墓を開けて検死して“病死であることを確認した”と発表したわけ」
「ああ、なるほど、同じ薩摩藩出身ですものね、当然の事ながら黒田氏を庇った、という悪評がたったわけね。事の真偽は兎も角、そんなこと、最初から分かり切っていることですに」
「それでも役目柄、川路氏にお鉢が回ってくるのは当然の成り行きなんだけどね。
で、この話の何が日本の歴史を大きく転換させたかと云えば、川路氏の庇護者が大久保利通氏であって、この年の5月に大久保氏が暗殺されたのも、直接的にはこの騒動の影響だったりするわけね」
「……とんだとばっちりで歴史って変わってしまいますのね」
大久保利通氏の暗殺の翌年、川路氏は再びヨーロッパ視察に出かけますが、体調を崩して帰国。そのまま亡くなってしまいます。享年46歳」
「そういう背景を知ってこの結婚式の模様を読み直すと、その、めでたいというより、なんとも悲哀を感じてしまいますわね。最後にクララに伝えた言葉ですとか。
仲人を務めて貰ったと云うことは、村田氏にとっては川路氏が後ろ盾でしたでしょうし」
「ま、まあ、とりあえず村田氏は将来成功することだし、気を取り直して本題に」
「そうですわね。とりあえず結婚式の模様は、あまり今日と変わらないのかしら?」
「うーん、席の作り方やら、杯の返礼の仕方なんかは、微妙に江戸期からの変遷過程、って感じだよね。でも、確かに雰囲気的には大体現在と変わらないかな?
ともあれ、この結婚式は和気藹々としていいわね、村田氏も奥さんも嬉しそうだし」
「この村田氏の奥様は、後にクララと親友になりますわね。ただ彼女も……」
「ストップ! それはまた随分先に取り上げると云うことで。
あと今回の日記の後半部分、松平定敬氏宅で開かれた音楽会の模様だけど」
「これはこれて貴重な記録なのですけれども……」
「……だね、その辺の細かい記述は、クララのこの一言で全部ぶっ飛んじゃうよね」
『松平定次郎氏の外見は気に入らないし、そのほかにも気に入らない点はある。しかし、趣味の良さには惹かれる』
「……我が親友ながら、容赦ないというか、率直すぎると云うべきか」
「人の好き嫌いについては、貴女も人のことを云えませんけれどね、お逸。
……やっぱりクララも貴女も似たもの同士なのですわ。その思いこみが激しいところとか」
「ところで、歌が上手く歌えずに泣き出すおやおさん、ってすごく萌えるよね♪」
「そういう意味でも同類ですわよ、貴女がたはっ!」
(終)


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