Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第46回−8

1878年5月11日 土曜日
満開の牡丹を見に今日は目黒に行った。
おやおさんとおすみと女中、アディとうちの女中と私の六人で、村田氏の家に行った。
村田氏、林氏、盛、富田氏が待っていて下さった。そこからみんなで目黒に向かった。
静かなところで、内田家というお茶屋が一軒あるだけである。
この建物の壁は珊瑚や貝殻の嵌め込みがある。
奇妙な衣装をまとい奇妙な髪型した皇后様の侍女がて4人来ていた。
一人は木や花や鳥の刺繍がしてある深紅の衣装を着ており、一人は紫、一人は青、一人は灰色で、四人揃ったところは綺麗であった。
侍女たちが引きあげた後、私たちでお茶屋を占領した。
「……や、やっと追いついたわ」
丁度そんな時、息せき切ってお逸と高木氏が追いついてきた。
「クララの家に行ったらもういないじゃない! 村田氏のところに行っても同じ。
だから目黒に人力車で直接向かったのよ!
そしたら、どうなったと思う? 田圃の真ん中で迷子よ、迷子! 車夫の人なんか消耗し切っちゃったから、私、人力車から降りて一緒に車を引いたのよ。それでやっと通り抜けることができたの」
お逸はそんな勇敢な大冒険を果たしてやっと内田家に着き、家の前で高木氏に会ったというわけだった。
安房守の令嬢が、人力車の梶棒の中に車を引いている姿なんて想像できない。
徳川家は最近、勝氏に一万ドルの贈り物をし、参議という非常に高い地位を提供されたそうだ。
後で、不動様――赤い炎に包まれた青い神――の寺にお参りした。
目黒不動というそうだ。
そこには「オビンズル」や花の長いテングも祀ってある。
日本語や清国語とも全く違う梵語が書いてあるのに気付いた。
村田氏はラテン語ギリシャ語に相当するのですよと云った。
昔の不幸な恋人同士――小紫と平井権八――の比翼塚にもお参りした。
富田氏に連れられて、仙台の殿様の立派なお屋敷にも行った。
今は鹿児島の殿様の所有となった美しい屋敷で、ありとあらゆる色の躑躅が咲いている。
昔仙台から種を持ってきたのだそうだが、今では大きな木になっていて、紅やピンクや真っ白の花が咲き乱れている。
美しいシダ類もあり、押し葉にするために少し取ってきた。
色々の花の素晴らしい牡丹の花もあった――深紅、薄い赤、ピンク、白、単色のものもあれば絞りのものもあった。
殆どキャベツほどの素晴らしい大きさのもあった。
中に「黒牡丹」と呼ばれているのがあった。
本当に黒いわけではないのだけれど、極めて濃い紫がかった紅色で、遠くから見ると黒く見えるのである。
逞しい獰猛な感じのする鹿児島県人の番人と話をしたが、親切で言葉も丁寧だった。
今日の散策の間に、シダの他にも、押し花にするのに良いような、色々の葉や花に気が付いた。
ちょっとしたコレクションが出来た。
花の中には根まで失敬してきたものもある。
母は一日中沈んでいたけれど、理由は十分には説明できない。
ウィリイと一緒に晩にビンガム公使のおうちへ行ってチェッカーをしたのだけれど、負けてしまった。