Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第52回−1

1878年7月12日 金曜日
引越をしてから毎日とても忙しい。
朝のうちに家事を片付け、午後は出かける。することは山ほどあるのだ。
昨日の午前中は、書き物をしてもよかったのだが、前の晩に一睡もしていなかったので、家事を済ませたら休みたくなった。
この家の客間はとても綺麗になった。母のよい趣味のお陰だ。
母とビンガム夫人は、森夫人のお供をして横浜へ買い物に行った。
森夫人の洋服がみんな古めかしいので、新しいものを一揃い買う必要があったからだ。
私は駅まで母を送って行って、五時にはまた迎えに行った。
その間に、福沢先生のところへ行った。ご在宅だったのは幸いだった。
私は彼とゆっくり話をしたくなる。
もし私が男の子だったら彼を教師として誇らしく思っただろうけれど、それは残念ながら(?)不可能だ。
彼には哲学的な閃きがあって、下手な百科事典よりも役に立つ。
福沢氏は私のアルバムに次のように書かれた。
『我々は文明の中に光を見いだすことは出来ない』
『文明国の中に文明を見出すことができない』
随分過激な台詞ではあるけれど、宗教心とは本来そう云うものなのだろう。
古いお城のこと、三十以上の門のこと――虎ノ門、竜ノ口門、小石川門、浅草門、赤坂門などについてよく話して下さった。
私は門の名前を暗記しようと思っている。
でもこれは古い江戸の地図でないと載っていないのだ。
お城や門は二百五十年以上昔のものである。
私たちは政治的な議論をしたけれど、その中で日本人の一番よい特徴を論じた。
奥様とお子様はお留守であったけれど、誰もおられなくてかえって楽しかった。
というのは、皆さんは日本語しか喋れないからだ。
それが原因で誤解されたりすると具合が悪いし、それを避けるためには福沢先生だけに話を向けることになって、それはそれで失礼になる。


メイの家も近いので訪問したけれど、二軒続きの家で私は嫌いだ。
唐突だけれど、私は小説を書いている! 
でも三日前から書いているのに、一章しか書けていない。
それを書くだけでもヒステリーを起こしたのだから、一章ごとにヒステリーを起こすとなると大変なことだ。
でも出だしは上々だ。
今日は、母が本の荷物を整理するのを手伝った。
これで我が家の客間も整然としてきた。
そのあと大鳥氏の家へ行って、アルバムに何か書いて下さいとお願いすると、即座に書いて下さった。
おゆきさんは留守だったので、もっぱら大鳥氏とお話をした。
ついで森夫人に音楽を教えに行ったのだけど、今日のところはあまり弾けなかった。
夫人は新しい洋服のことをいろいろ考えていらっしゃるらしい。
ご親切にお芝居に誘って下さった。