Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第59回−2

1878年10月12日 土曜日 
日記を書くのがどうにも遅れがちである。
午前中はアニーと伊藤を教えることと、シェパード家でピアノの練習をするので一杯だ。
この前行った時は、ミュラーの「落葉――秋の思い」という美しい曲を覚えた。
午後は母のためにお使いに行くか、通訳するために一緒に出かけるしかなければならないので、書き物をしたり勉強したりする時間がない。
特に夜は明かりがよくないため早く床に就くので、勉強も読書もあまりできない。
そうそう、ランプといえば、父がこの間ひっくり返してしまい、油が綺麗なテーブル掛けに一面に流れてしまった。
木曜日にはサットン家へテニスをしに行き、ヴィーダー家の人たちと私だけだったが、とても楽しかった。
メイは行かなかった。
ここ三日間、毎日ウィリイから手紙が来た。
最後の手紙には天皇陛下のご訪問のことが書いてあった。
ウィリイは陛下に紹介され、陛下の前で化学や物理の実験をいくつかお目にかけ、また盗難警報機をお見せした。
ミカドは大いにご満足の意を表されたようだけど、しばらくして首相の岩倉公の方を振り向かれて云われた。
「よくわからない。説明を日本語にして貰ってくれ」
そこでウィリイと生徒たちは英語をやめて日本語で説明した。
天子様の御前でウィリイが無事任務を遂行できて嬉しい。
ウィリイは彼が絶えず御前にぬかずいている「魂の王」のことを美しく書いて寄越す。
どうか神様、彼の必要とする助けと力をお与え下さいますように。
彼は母国語を聞くことのできるところへ帰ってきたいのだ。
昨日私たちは子猫のことでとっても心配した。
五時間も行方が分からなくなって私は目を泣き腫らしてしまった。
結局、私の枕の下でぐっすり寝込んでいたのだけれど。
それでもあまり嬉しくて私はまた泣いてしまった。
元の飼主につけられた名前は「フロッシー・虎之助」という。
しかし私たちは短くして「ビリー・グレー」、つまりディクソン氏の愛称で呼んでいる。
全然話は変わるけれど、佐藤百太郎氏がアメリカ人の奥様を連れて帰国された。
「とんでもないことだ」
富田氏はそう吐き捨てるように云われた。