Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第63回−7

1878年11月26日 火曜日
蓄音機や電話についてのユーイング先生の講演を聞きに、YMCAに行った。
YMCAにいる間にかなり強い地震があり、家に帰って床に就いてからもまたあった。
会には大勢の人が来ていたが、大半は宣教師団に所属する独身の女性。
彼女たちは、青年の集会でも祈祷会でもぞろぞろ出かけて行く。
そして、ディクソン氏に憧れの眼差しを向け、彼が微笑すると笑い、彼が真剣な顔をするとセンチメンタルな表情をする。
実に滑稽な光景だ。
ディクソン氏とジュエット氏は、私たちのそばに腰掛けていて、二人とも私たちに対し慇懃で面白かった。
気の毒なディクソン氏はいろんなことをさせられ、いくつも歌を歌わされた。
みんなは笑って聞いており、乙女たちはくつくつ笑い、ユーイング氏はこんな冗談まで飛ばしておられた。
「ディクソンさん、音痴に歌っても構わないですよ、蓄音機の方で直しますから」
そのうちにディクソン氏は隣の家に行って、電話を通して歌を歌わされた。
それは彼の心を奪ったスコットランド北部の乙女の歌だった。
けれど。
「乙女の輝ける青き瞳は 我が胸を裂き――」
歌詞がそこまで来た時、電線がぷっつり切れ、ジュエット氏は私にも聞えるように囁かれた。
「ディクソン氏のあの言葉には電線も堪えられなかったのですよ」
真っ赤な顔をして戻って来たディクソン氏は、ジュエット氏の前にどっしりと腰を下ろした。