Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第2回解説

【帰ってきたクララの明治日記 超訳版解説第2回】
「再来日の日記から、一ヶ月以上日にちが飛びましたわね」
「アンナ先生の体調、ずっと悪いままだったから仕方ないんじゃないかな?」
「そんな中、あなたの弟である梅太郎君の記述が一気に増えていますわ。
……もっとも、再来日直後の日記と随分書いていること違いませんこと?
先週紹介した分ですとクララたちがいない間に“理想的な敬虔な信徒”になっていたかのように描いていましたけれど」
「……一念発起したくらいで、人間、そう簡単に変わらないって典型だよね。
学校にも行ってない、家で勉強しているわけでもない、働いているわけでもない。
ぶっちゃけ……百三十年前の“ニート”だからね、うちの弟」
「勝提督は本当に一体どういうおつもりだったのでしょうね? 
軍人か金細工師にしたいと考えている、と仰っているわりに、学校に行かせるわけでも、職人の所に修行に行かせるわけでもなし。
教育に一家言持っていた方がなさる態度とは思えませんわ」
「うーん、多分だけど、元々勝家を嗣がせる気はなかった、というより、勝の苗字さえ嗣がせる気はなかったんだと思う。
実際、対外的には母親の実家の苗字を嗣いで“梶梅太郎”で通っていたわけだし」
「それと教育を施さないこととは全く別問題ではありませんの?」
「……これはあくまで推測、というか“想像”で、梅太郎と同じく、妾さんの子供である私の口から云うのもなんなんだけど……この頃までは小鹿兄様も、多少病気がちだったとはいえ、日常生活には全然問題なかったんだよね。
……うん、つまり“そういうこと”だったんだと思う」
「……なるほど、貴女が云いにくそうにしていることで大体推測が立ちましたわ。
つまり、正妻であるたみ夫人への配慮、ということですのね?
女の子ならいずれ嫁に行ってしまうけれど、男の子だとそういうわけにはいかない、と」
「まだずっと後年のことになるけれど、小鹿兄様が早くに亡くなられた後、父様、男爵家となっていた勝の家を潰すつもりだったからね。
結局、慶喜公のお子様を養子に頂いて勝家は存続することになるのは歴史好きにはよく知られた話だけれど、勝の家の跡継ぎとして梅太郎、全く顧みられた形跡がないんだよね」
「確かにそこで梅太郎君に勝家を嗣がせていたら、最後の幕臣が仕えた旧将軍に全てを返納する、という“美談”がぶち壊しでしたわね。
ただ貴女のその推測、全く外れているわけではないでしょうけれど……梅太郎君の資質にも問題があったのは間違いないようですわよ。
貴女の娘さんや、二番目のお姉さんのお孫さんの、梶梅太郎氏への証言が残っていますけれど、そのいずれも評判最悪ですわよ。
有り体に云って“一族の鼻つまみ者”として扱われていたようですわね」
「……そうなんだよね。姉として云ってはなんだけど、本当に何でクララはあの子を選んじゃったんだろう?」
「駄目な子ほど可愛い、という姉心理でしょうね、クララの日記を読む限り。
それでも勝海舟氏亡き後は、クララ、愛想尽かして子供をみんな連れてアメリカに帰ってしまうのですから、梅太郎氏の怠惰ぶりは余程だったのでしょうね。
勝家でもクララは兎も角、子供たちを引き留めた形跡はないようですし」
「……小さい頃からの教育って、本当に大切なんだなあ」
「一般論に話を還元しても“事実”は隠し切れませんわよ。
もっとも、この梶梅太郎氏がクララに捨てられた後、再婚して子供を儲けていなかったら、第二次大戦後、満州に殺到してきたソ連軍から女性を守った医師がいなかったことになるのですから、歴史には何かしらの“帳尻合わせ”があるのかも知れませんわね」
「珍しいね、メイがそんなことを云うなんて」
「貴女の弟があまりに不憫だから、少しだけフォローしてあげたのですわよ!
さ、話を戻しますわよ。
今週注目すべきはここですわ。『母は大山中将から、お嬢様を教えて欲しいと頼まれた』という記述」
「ああ、確かこれって、前にも紹介した徳富蘆花の“不如帰”の浪子のモデルとなった」
「そう、早くして悲劇的な死を迎える大山信子さんのことですわ。
ただ前にここの解説でも書いた通り、小説で描かれた継母、つまり山川捨松さんの先妻の子供である信子さん虐め、なんてのは真っ赤な嘘ですけれどもね」
「山川捨松さんについては、もう少し先でクララの日記にも登場してくて来るので、紹介はまたその時に改めて」
(終)


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