Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第3回−2

1883年2月2日 木曜日
今日は面白いことがあったので、日記に書いておく。
使用人の金太郎とハルに暇を出した。
ハルと別れるのはいやだったけれど、金太郎は「まったくもってまったく」我慢ができなかった。
ハルは泣いていた。そして、別れをひどく悲しんでいた。
ハルは本当にいい人だったから私たちも残念だった。
彼女がやめる前日、私は聞いてみた。
「聖書について何か聞いたり、読んだりしたことがある?」
ハルは云った。
「読んだことはないし、はじめて聖書について聞いたのは、お正月にウィリイさんが幻灯を使ってヨセフの話をした時です」
ハルはその話を聞いて泣き、それをすっかり金太郎に話してやったそうだ。
そこで私が神様や救い主について話してあげたところ、ハルはうやうやしく耳を傾けていた。
ヨシは「ハルにあげてほしい」と、キリスト教の話を書いたやさしい本を二冊くれた。
さて二人は行ってしまい、アディと私だけが大張りきり。


ヨシが来て、夕食の仕度を手伝ってくれた。
でも、せいぜい煮たきをしてお喋りをするぐらいしかできなかった。
ヨシは本当にいい人で、私たちは皆彼が好きだ。
ヨシは勝氏のケライでサムライである。その上、一番よいことに、クリスチャンである。
頭のいい若者で、顔立ちはよくないが、なかなか機転のきく男だ。
家事に使う道具をみな買って来てくれたし、またウィリイにとってはいろいろな点で、言いつくせないほどの助けになった。
お礼にアディは英語を教えてあげている。
ヨシは、使用人の部屋に誰もいないから泊まっていってあげるといった。
私たちはその申し出を喜んで受け、ヨシは泊まった。
梅太郎もヨシといっしょに真夜中近くまで起きていた。
内田夫人と疋田夫人も夜、讃美歌を歌いにみえた。
今朝、私たちは早く起き、ヨシはストーブの火をつけてくれた。
そこへ、男の人が足早に入って来て、勝夫人の言いつけで手伝いに来たといった。
この大の名は金八という。
妻は病んでおり、二人の子供を育てなければならないので、骨債屋を始めたのだが、その様子から見ると大して儲からないようだった。
しかし金八はとてもいい人だ。
何でも喜んでするし、器用でてきぱき用事を片づけてくれるので、そばにいてくれるとありかたい。
いつもいてくれたらとただ願うばかりである。
金八に手伝ってもらって、台所を片づけ、食事の支度をした。
丁度できあがったところへ勝夫人が私たちのために雇ってくださった二人の使用人を連れて、入ってこられた。
二人ともぼっと出のまだ若いピチピチした、どんな種類の仕事でも大丈夫といった女の子だ。
この人たちが来てくれたのはとても嬉しかったけれど、ただ来た時間の具合が悪かっただけだ。
でもどうやらうまくきりぬけ、間もなく二人にはお皿を洗ってもらった。
丁度そこヘヨシが台所道具を新しく買って帰ってきた。
内田夫人が養子の保爾とそれを見に来られた。
それから輝ちゃんも来て、皆台所に集まって大会見式のようだった。
ふざけたり笑ったりしながらも、日本製の道具はちゃんと適当な場所に掛けられた。
「何か不足があったら、うちにあるものの中から持って来ますから」
内田夫人はそう言ってきかなかった。
それから内田夫人は「使用人たちのご飯は適当な釜が買えるまで、うちの竈で炊くように」と言い張られた。
そこで金八が炊飯用の薪を持って行こうと提案した。
夫人は全然そんな必要はないと主張したが、私はそうさせた。
勝夫人は魚を母のために調理して届けてくださった。ヤシキの人たちはこの上なく親切だ。
私たちは家族の一員のように扱っていただいて感激している。
実際勝家には私のとを姉妹とみなし、母のことを母親のように思っている人が二人いる。
すべてありかたいことだが、私たちはこの方たちが皆「我が父」の家族に加えられる日を待ちのぞんでいる。


今日午後に小鹿さんの奥様が来られた。
木挽町から持ってきた大きな背の高い雨水を入れる水槽は、クララさんの風呂桶なのですか?」
高い円筒形の水槽なのに、まったく滑稽である。
ウィリイは昨日ミス・パークスを訪問した。
ミス・パークスは母がよくなり次第、一緒に乗馬に出かけましょうと誘ってくださった。
皆さんが本当に親切にしてくださる。
こんなに親切にして頂くとは、なんともったいないことだろう。
しかし私たちのどこが好かれるのか知らないが、それはとにかくすべて正義の太陽から借りた光に過ぎない。
親切を受けてやたらにいい気にならないように注意し、人々が私より、むしろ我が主を愛するよう切に祈る。
人の心の罪の深さよ! とても計り知れないほどである。
安全だと思えば思うほど、陥る危険は大きい。
神よ、われらすべてを助け給え、聖顔の光を示し給え。