Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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日曜恒例異文化交流クイズ。ジャポニズム特集第7回は「ゴッホがアルル時代に作った芸術家たちの共同体の名前が冠していた色とは一体何色だったでしょう?」という問題でした。
正解は「黄色」でした。ああ、太陽が黄色いわ……というわけでもないのでしょうけれどw、それも近からずも遠からずといったところでしょうか? 今回は有名な話だけあって、Mr.ROMさん、sumaさん&mikeさんだけでなく、totuさん、nonさんも見事に正解です。
さてファン・ゴッホは牧師の息子であり、キリスト教の聖職者を志したこともありますが、周知の通りその志は果たせぬまま人生を終えました。聖職者どころか牧師にさえなれなかった理由が「過度なまでの宗教的熱情」だったというのが如何にもゴッホらしいというべきですが、彼はその宗教的熱情を、理想を日本に求めたわけです。もっともそれは「現実の日本」ではなく、浮世絵を、小説を通して得た断片的知識を「切り貼り」して作り上げた、ゴッホにとっての「理想の日本」「理想としての日本人」でしたが。ただその元になった小説がピエール・ロティの「お菊さん」――実際に来日したフランス人の日本愛好者たちにとっては、日本人像を歪めているとして酷く評判の悪い――というのは、なんとも皮肉な気がしますけれどね。
ですがゴッホは、ロティの小説などを元に、アルルの少女を日本の「ムスメ」として描き、ゴッホにとっての日本人とは「まるで自分自身が花であるかのように自然の中で生き」、「兄弟愛に満ちた」「素朴な労働者」であり、更に神道も仏教も同時に許容し「真の宗教」を実践している民族である、と信じたわけです。これは我々日本人からすれば「何処の国の話?」てなところですが、実際これはゴッホの考えた「日本人像」ではなく、彼の宗教的情熱の結晶としての「理想の人間像」。あの世界的に有名な「僧侶としての自画像」はそのような背景の下で生まれたファン・ゴッホにとっての理想的自画像でした。
そしてここで本題に戻るわけですが、アルルに作ろうとした芸術家の共同体「黄色い家」とは、つまるところ「理想の日本人」という「信仰」のための、修道僧の共同生活の場であった、と。こんな理由ですから、幾らジャポニズムに影響を受けていてもゴーギャンゴッホについていけるわけもなく、呆気なく崩壊したのは当然のことでした。
そしてその崩壊後、ゴッホの作品からは日本色が急速に消えていきます。これは芸術家の共同体としてのゴッホユートピアと、理想の国「日本」とは、心の中で分かちがたく結びついていて、このユートピアの実現の試みが失敗した時点で「日本」もまた彼にとっては殆ど意味を失ってしまったと。「日本」と出会ったことがゴッホにとって幸せだったのか、不幸だったのかは、当のゴッホ以外には誰にも答えられない話でしょうね。