Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

【第37回】年金制度
民主党マニュフェストより
【五つの約束】
〈3〉年金・医療
 「年金通帳」で消えない年金。年金制度を一元化し月額7万円の最低保障年金を実現。
【政策各論】
〈3〉年金・医療
 ▽「消えた年金」問題への対応を国家プロジェクトと位置付け、2年間集中的に取り組む
 ▽年金制度を一元化し、所得比例年金と最低保障年金を創設する法律を2013年までに成立
 ▽社会保険庁国税庁と統合して「歳入庁」とする


今回はネット界隈では急速に話題に上り始めた年金制度について。

民主党の年金制度は、すべての人が月7万円以上の年金をもらえるのがうたい文句だ。
所得比例年金を基本に、中低所得者には消費税を財源として月額7万円の最低保障年金を加算。
保険料の納付期間が25年に満たず、現行制度なら「無年金」になってしまう人も、払った分に応じた年金がもらえる。
ただ、新制度への移行は20年程度かけて徐々に進める。
このため、既に無年金が確定している高齢者が、新制度で7万円をもらえるわけではない。
当分は現行制度での給付が大半を占めるため、無年金や低年金の高齢者は残ることになる。
同党は、年金とは別に、給付付き税額控除制度を創設し、無年金高齢者らを支援することにしている。
制度移行で徐々に変化する給付とは違い、保険料は新制度になった途端に急変する。
所得比例年金の保険料は所得の15%で、厚生年金とほぼ同率。半分を会社が負担するのも同じだ。
厚生年金の保険料は将来的に18%余まで上がる予定だったため、厚生年金に入るサラリーマンは負担が減る。
一方、自営業者らが加入する現在の国民年金の保険料は定額で月1万4660円。全額が自己負担だ。
これが新制度になると、単純計算では月収50万円の自営業者の保険料は7万5000円に。
給付も増えるが、高額所得の自営業者は保険料の負担は増す。
最低保障年金による加算は、2007年参院選で、所得が600万円から減額し、1200万円以降はゼロにする案を示していたが、今回は明示していない。
この線引き次第で、必要な財源も変わるだけに、大きな課題が残ったままだ。


もう一つ、自民党との対比を示すために新聞記事から引用。

◆自民「無年金、3年で救済」◆
自民党の改革案は、「2階建て」と呼ばれる現行制度の基本構造を維持する内容だ。
政府が運営する年金制度は、全国民を対象とする基礎年金(国民年金)が土台。
ずっと自営業者だった人は老後に基礎年金だけを受給するが、会社員は厚生年金を上乗せで受け取れる。
自民党案は、公務員が加入する共済年金については、仕組みが比較的似ている厚生年金と統合し財政安定化を図る。
だが、自営業者も含めた全制度の完全統合までは掲げていない。
また、無年金・低年金者を3年以内に救済するとしている。
◆民主「月7万円『最低保障』」◆
民主党の改革案は、制度の骨格をがらりと一変させる内容だ。
どの職業でも、所得に応じて保険料を支払う所得比例年金に加入する。
所得が少なかった場合は、十分な年金を受け取れないため、こうした層を中心に、消費税を財源として月7万円の最低保障年金を支給する。
その金額について、2007年の参院選では生涯の平均年収が600万円超なら減額し、
1200万円超には支払わないとしていたが、公約では減額の具体的な条件を示さなかった。


以上、新聞記事引用終了。
では、まず現在の年金制度の基本から抑えます。
現在、会社員・公務員など一般の被保険者(労働者)は収入の約15%を年金保険料として負担しています。
ですが、実際に給与明細を見て頂ければ分かりますが、実際に支払っているのはその半額です。
残り半分を誰が負担しているのかと云えば、それは雇用主なのです。
この形式の理由・根拠はと云えば「本来給与として支給されるべき分を、保険料支払いに回している」という理屈になっています。
実際労働者にそんな実感はありませんし「それくらいなら給料を増やせ」という意見もあるでしょうが、会社負担分の保険料が丸々控除されていると思えば、それほど悪い制度ではありません……年金制度そのものに反対する人は別ですけれど。


さて、この基本を踏まえた上で民主党案。
まず自民党と根本的に異なるのは「消費税を財源として月7万円の最低保障年金制度」。
これについては賛否両論当然ありますが、少なくとも「段階を踏んで移行する限り」別段突飛な政策ではありません(自民党の一部にもこの制度を押すグループもいた筈ですし)。
実際流石の民主党も現行の年金制度からの移行には、四十年以上かかることを予定しています。
……それより問題なのは、民主党候補者やマスゴミが「民主党が政権取ればすぐにでも最低年金7万円貰える」と有権者を誤解させているところですが。

もう一つの大きな違いが、年金制度の統合。
現在の制度は全国民を対象とする基礎年金(国民年金)の土台の上に厚生年金、共済年金が乗っていて、余分に支払った分だけ老後それぞれの年金を得ることになっています。
自民党案は「制度の似た厚生年金、共済年金を統合する」というもので、基本的に現行制度の延長となります。
対して民主党案は、最低保障年金の土台の上に「どの職業でも、所得に応じて保険料を支払う所得比例年金に加入する」とされます。
この所得比例年金の保険料は所得の15%で、つまり会社員・公務員らにとっては現行と殆ど変わりません。


ここで大きく問題となるのは、自営業の方の負担となります。
自営業の方の保険料の基礎となる「所得」をどう把握するか、という問題もありますが、それ以上に問題となるのは「所得の15%」という高額な税率。
先程述べたとおり、会社員・公務員の年金保険料の半額は雇用主が負担しています。
ですが同時にそれは「本来給与として支給されるべき分を、保険料支払いに回している」という形式を取っていますので、形の上だけとはいえ会社員・公務員は「15%」という保険料を現在は勿論、民主党案においても負担することになります。
しかし、自営業者にとってはそうではありません。
自営業者らが加入する現在の国民年金の保険料は定額で月1万4660円で、当然の事ながら全額自己負担。
これが新制度になると、単純計算では月収50万円の自営業者の保険料は7万5000円にもなります。


では「加入しなければいい」と考える人が多数でるでしょうが、民主党案だとそうはいきません。マニュフェストには次のようにも謳ってあるからです。
>>社会保険庁国税庁と統合して「歳入庁」とする
つまりは、保険料を税金と同じ組織で徴収するという形式を取るわけで、実はこれ「保険料の税金化」の一環と捉えるべきなのですね。
この点を指摘する人が少ないのが不思議なのですが「年金未納問題の根本的な解決」というテーマを貫徹すると、こういう制度に行き着くことは必然です。
ですからこの場合、民主党の主張自体は首尾一貫しているのです。
それを国民が「勝手に誤解する」のは「自己責任」というものでしょう。


ただ自分個人の見解を云うと、この民主党の年金案でも「最低年金は原則消費税負担とし、満額7万円到達は40年後」という公約さえ本当に守ってくれるなら、特別に反対するものではありません。
最低年金の基礎財源を消費税とする限り「日本人・外国人問わず、あらゆる階層で」公平に負担を分担することになるからです(ただそれでも財源の半分程度は国費から投入されるという点は不満ですが)。
そして所得比例年金については、今後自分が高額な給与を貰えるあてがあるわけではありませんから(民主党案では高額所得者の最低年金を減額する方針があるので高額取得者は減額される可能性大)基本的に今と負担は変わりません。給付が減るのはこの時代ですから致し方ありませんし(正直年金が貰える年齢まで生きていられる自信がないのであまり深刻に捉えてないところがありますが)。
しかし一方。
この民主党の年金制度案では、自営業者は壊滅的な負担増を被ります。
給与所得者の雇用主負担分が「給与分からの迂回」という構図を取っている以上、国が折半して半額分を支払えば(予算的に支払える筈はありませんが)、当然のことながら給与取得者からは不満の声が出ますし、現実的にはこれは不可能。
かといって「自営業者は別の税率で、別の支払体系」とすれば、制度を一本化した意味がなくなります。
つまるところ、少なくとも現在の民主党の年金案を理解した上で、諸手をあげて賛成する自営業者の方というのは、殆ど収入が無く「最低年金だけ貰えればいいや」というくらいの方に限定される……筈なのですが、各種世論調査を見る限り、どうにもそのようにはなっていない模様。


国民は本当に制度を理解した上で、民主党の年金案を支持しているのでしょうか?
保険料を現在源泉徴収されている給与所得者の場合は簡単で「最低年金保証制度を消費税で賄う」という制度に賛成か反対かだけで賛否を決められます。
現行の厚生年金・共済年金だけで十分、という方の場合は反対、セーフティーネットとして消費税がアップしても構わないから最低保障年金を、という方の場合は賛成。分かりやすいです。
しかし自営業者の場合。
「消費税アップの上、実質税金と同様の保険料分15%が新たな負担になりますが、賛成ですか?」
マスコミは以上のように質問して賛否を問うのが「フェア」だと思うのですが……そこまで丁寧に質問をして回答を求める世論調査は後にも先にも存在しないでしょう。
折角「年金問題民主党に任せれば全て解決」という世論を作ってきたのですから。
数年後。
制度のこのような実態が目に見えて分かるようになった時、少なくとも「そんなの聞いていない」という言い訳は止めましょう。
民主党はそのようにマニュフェストにちゃんと記載しているのですから。
(続く)


【お知らせ】
当ブログの他に、このコーナーだけをアップしたサブのブログを作成しました。

このコーナーで少しでも心を動かされた方は、まず身近な方で結構ですので、こちらを読んで頂けるようにお願いしますm(_)m。