Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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【最終回】前夜
これまで約45日間、37回に渡ってマスコミの歴史からマスコミ論、医療問題、民主党の政策研究に費やしてきましたが、今回がとりあえずの最終回となります。
明日の結果を見て「まだ怒りに燃える 闘志があるなら 巨大な敵を 討てよ討てよ討てよ」という意欲が種火ほどでも残っていましたら、本ブログではなく、専用ブログの方でマスコミ論、医療問題、政策解説を引き続き行っていきたいと考えていますが……正直なところ、我が事ながら明日以降の展開がよく分かりません。
それでは、これまでの37回を総括させて頂きます。


まず大前提として。
自分としては、日本にもある程度の期間での政権交代が必要であることに異論はありません。
そして誤解されていそうので改めて断っておきますが、自分は自民党支持者ではありませんし、思想的にも保守というより中道寄りです。
このコーナーを設けたのは、あまりにマスコミの報道が偏向しており、かつマスコミが必死になって勝たせようとしている民主党の経済政策・社会保険政策・官公庁改革・教育政策が出鱈目だからです。
なお、外交政策、人権問題等(人権擁護法外国人参政権国会図書館法改正)については敢えて殆ど触れませんでした。
前者については恐らく現実的な政策に落ち着かざるを得ないでしょうし(外交密約全公開なんてした日には何処の国とも外交関係結べなくなりますから)、後者については「党」というより、議員一人一人の資質の側面が大きいからです。それにこの件については、各法案が本格化に動きだせば、普段の支持政党を問わず、反対運動が持ち上がることでしょうしね。


さて、日露戦争末期の一コマから始めた当コーナー。
日露戦争において日本の勝利に間接的に貢献したのがマスメディアなら(第29回参照)、大衆を煽りすぎて危うく日本を滅ぼしかけたのもマスメディアである(第2回・第30回参照)と紹介しました。
今回は更にそれを補足する形で、1928年の日本初の普通選挙導入以降の、衆議院議席の変遷を見ていきましょう。
【1928年衆議院選挙】日本初の普通選挙
・与党:立憲政友会218、野党:立憲民政党216、諸派17、無所属15
【1930年衆議院選挙】世界恐慌翌年。義務教育国庫負担の是非が焦点に
・与党:立憲民政党273、野党:立憲政友会174、諸派無所属19
【1932年衆議院選挙】
・与党:立憲政友会301、野党:立憲民政党146、諸派無所属19


見てお分かりの通り、二大政党による選挙ごとに政権交代が続きました。
「これこそまさに民主主義の健全な現れである!」
当時のマスコミもそう絶賛したに違いありません。
ですが、この裏で何が起こっていたかと云えば。
民政党と政友会の二大政党間でのスキャンダルの応酬とバラマキ合戦です。
ライバル政党への個人攻撃と同時に、国民には耳障りの良い政策だけを提案。
直近の選挙に勝つことだけを主眼に置き、国家が将来的に進むべき方向を両政党とも打ち出せませんでした。
昭和大恐慌が起き、農村が疲弊し、失業者が増え、社会不安が広がっていった中にも関わらず、安定政権を築けなかった政府は有効な政策を打てませんでした。
そのうち社会主義への共鳴が広がり、資本家が諸悪の根源として指弾されるようになっていきます。
やがて社会主義思想の強い影響を受けた青年将校たちが天皇を中心にした「国家改造」を夢想し、1932年に五・一五事件を、1936年に二・二六事件を起こします。
この時点で最早政府は軍部をコントロールする能力を失い、逆に国民の支持を得た軍部は暴走を始めます。
そして1936年の衆議院選挙。
【1936年衆議院選挙】
・与党:立憲民政党205、野党:立憲政友会175、
諸派:昭和会20、社会大衆党18、国民同盟15、無所属その他33
どちらの二大政党も過半数を得ることが出来ず、少数政党が乱立し多数のキャスティングボーダーが誕生した結果議会は空転、そして力を決定的に失います。


さてこの間、マスコミが何をしていたかと云えば。
軍部の台頭による日本の将来を憂うるでもなく、それどころか率先して軍部の手先となって、率先して大衆を焚きつけていたのです。
今日強調される「平和主義者」や「反戦主義者」への軍部の弾圧というのは、少なくとも第二次大戦突入前はもっぱら共産主義者社会主義者に対する抑圧であって、それ以外の人々でただ反軍活動したが故に追放された記者は第30回で取り上げた信濃毎日新聞桐生悠々くらいなものです。
実際、それ故に「第二次大戦前でも新聞は反戦への取り組みをしていた」という事例で取り上げられるのは、いつも桐生悠々です。勿論今日知れていない、反軍を訴える記者もいたとは思いますが、圧倒的多数は軍部を支持し、民衆を煽り、この国を殆ど滅ぼしかけたのです。


その煽動の果てにあったのが真珠湾攻撃の1ヶ月前。
衆議院で行われた一本の決議でした。
『即ち、わが国の現にやっているこの支那事変の完遂途上に横たわっているところの最大の障害物が何であるか、アメリカを主体とする敵性国家群の横やりから来ているのである。
正義を蹂躙し、好意を無視し、独立を脅威し、さらに正統なる進路を遮断せんとするような態度に対して、これをこのまま受け入れて、侮辱、威嚇に屈して自滅を待つがごときことは、我々の正義感、我々の愛国心が絶対にこれを許さないということを言っておきたいのである。
およそ我々の経験で、話をして分からぬ者がよくある、しかしながら話をして分からない者はなお分からせる方法工夫がある、ひとり分かっておりながらなお分からないと称して理屈をこね回しておるところの者に対してなすべき事はただひとつのみである。
我々はこれまでたびたび不退転の決意、大いにやる、こういうことを聞かされている。
しかしながら決意である間は、牢固であるか、弱乎であるか分からないのである。
決意の牢固たることは、宣伝では決まらない、実行によって決まるものである。
これを私は責任ある当局が深く考える必要があろうと思うのであります』


この決議文「国策完遂に関する件」を読み上げたのは軍人ではありません。
逆に、この決議文で尻を蹴飛ばされた方が軍人首相である東条英機であり、
この「戦争完遂」を熱狂的に叫んだのは、紛れもなく「国民から選ばれた」衆議院議員です。
かくして軍部強硬派であった東条英機首相は、更にそれを通り越し超強硬派となった民衆に背中を蹴飛ばされた末に太平洋戦争に突入したのです。
なんのことはない、本当の「戦犯」とは軍人や政治家ではなく、当時の日本国民であり、それを煽り立てたマスコミなのです。


勿論、現在の世界情勢において国家同士が全面対決する戦争はあり得ません。
いくら中国が驚異であるといっても、日本本土に全面侵攻するとは思えません。
ですが現在の世界は、軍事力ではなく経済力による戦争が常に続いています。
その経済の戦争で決定的な敗北を喫することは、国民生活の転落を意味します。
勿論グローバル経済を全面的に認めるわけではありません。
ですが、如何に理想論を謳ったとしてもいま現在の「現実」がそうなっている以上、少なくとも現実と理想をソフトランディングさせるまで、国家が最前手を打たない限り、最終的に被害を被るのは国民です。
民主党の首脳にそこまで乗り切る覚悟があるとは、到底思えません。


そして私が本当に恐れるのは、今回政権交代した先のこと。
自民党が下野すれば、今度こそ本当に徹底的に民主党議員の「身体調査」を始めるでしょう。
マスコミが今まで積極的に報道しないが故に知られていませんが、自民党と同様に、いえ出身母体が特定の団体であることが多いが故、それ以上に「叩けば埃が出る」民主党議員のスキャンダルが続出するでしょう。
この失点を挽回すべく、民主党政権は今より一層「国民の耳心地の良い政策」を乱発するでしょう。
その「生贄」となるべきは、今までマスゴミが国民に「悪だ」と一方的に決めて付けて報道してきた対象――公務員、独立行政法人、公共事業――であり、それらをやり尽くせば、マスコミが更なる「悪」を見つけてきてくれることでしょう。
……その結果、社会を構築している制度が決定的に崩壊することになったとしても。
そんな中、下野した自民党が、民主党より「更に耳心地の良い政策」を訴えたらどうなるでしょうか? 
もうこれはポピュリズム以外の何ものでもありません。


勿論、政権を取った民主党が虚心坦懐、改めて各種制度の現状をみて、公約に囚われずに「改めるべきは改め、改めざるべきところは従来のままで」と柔軟な姿勢を示せば、まだ政策を一定程度フリーハンドで握れますし、行政の継続性もある程度保てます。
しかし、現状はいくら何でもマニュフェストに囚われすぎです。
鳩山党首からして「マニュフェストは約束です。守れなかったら退陣します」と言い切ってしまっている以上、マニュフェストに掲げた項目が「精査した現実」と一致しなかった場合、一体どうするつもりでしょうか?
このコーナーで今まで検討してきた通り、民主党マニュフェストをそのまま実行した場合、とてもつない混乱が起こると思われる事項が多々あります。
それでもなお「マニュフェストは約束だから」と実行するつもりでしょうか? 
そんなものは政治家ではなく、ただの愚者でしかありません。
しかし一方、マニュフェストの項目を変更したら変更したで今度は「公約違反だ」という声が上がります。
勿論現実をろくに精査せずにマニュフェストに掲げる方も悪いのですが、その実現性をまるで考慮せず「マニュフェストに書いてあるから」という理由だけで支持する国民にも、国民にそう誤解させたマスコミにも問題があるわけですが。


いずれにせよ、応援団であるマスコミが余程アクロバチックな支援行動を取らない限り、早晩民主党政権は行き詰まると思います。
ですが、それでも「衆議院の三分の二」の議席があれば、行き詰まろうが、支持率がどれだけ低下しようが「何でも」出来てしまいます。
長年与党の座にあったが故に、形だけでもとはいえ、野党の意表明の場を与えてきた自民党と違い(昨年度のガソリンの暫定税率廃止騒動の時はこの姿勢が仇になって1ヶ月程空白期間が生まれました)「都合が悪ければ自分の政党の出した法案」の会議すらボイコットする民主党です。
全野党審議会も国会も欠席のままだったとしても、平然と法案を通す姿が今から目に浮かびます。これは誹謗中傷ではなく、実際に直近の国会で民主党が行ってきた姿勢をそのまま延長したものでしかありません。


ということで明日の選挙。
以前にも明言しましたが、自民党に入れて下さいなんて事は云いません。
自分のこのコーナーの主張に頷くところがありましたら、どうか白票か「民主党以外の政党」に投票をお願いします。
民主系無所属議員を含めた上での「衆議院の三分の二条項」さえ阻止できれば、参議院の勢力図がある程度拮抗しているが故に「後世に取り返しのつかない法案」だけは、国会を素通りできません。
その上で、民主党と野党に転落した自民党との間で「健全な政策論争」が起こることを願うばかりです。
それだけが明日の選挙における自分の望みです。
以上。
最後まで付き合って下さいました皆様方、どうも有り難うございましたm(_)m。
(終)