Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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今週も「クララの明治日記 超訳版」その第93回をお送りします。
なお過去ログは、以下のように収納しております。
明治8年8月分明治8年9月分明治8年10月分明治8年11月分明治8年12月分明治9年1月分明治9年2月分明治9年3月分明治9年4月分明治9年5月分明治9年6月分明治9年7月分明治9年8月分明治9年9月分明治9年10月分明治9年11月分明治9年12月分明治10年1月分明治10年2月分明治10年3月分明治10年4月分明治10年5月分明治10年6月分明治10年7月分明治10年8月分明治10年9月分明治10年11月分明治10年12月分明治11年1月分明治11年2月分明治11年3月分明治11年4月分明治11年5月分明治11年6月分明治11年7月分明治11年8月分明治11年9月分明治11年10月分明治11年11月分明治11年12月分明治12年1月分明治12年2月分明治12年3月分明治12年4月分明治12年5月分明治12年6月分明治12年7月分明治12年8月分明治12年9月分
今回分はクララの服を着たお逸、大山夫人と横浜への買い物、そして元クララの家の使用人の突然の手紙 の話がメインとなります。今週は区切りの関係で日記本編は短めとなっています。解説では大山夫人の娘さんがモデルとなった徳富蘆花の小説『不如帰』の虚を暴きます。


1879年9月15日 月曜
木曜日からずっとひどい雨降りで、やっと昨日になって晴れた。
水浸しの世界に、日曜の朝が美しく輝いて訪れた。
母はひどい風邪をひいてしまったので教会に行かれないかったから、ウィリイと私が行き、ミーチャム氏のよい説教を聞いた。
大山夫人の進歩はすばらしい。
単語を覚えるのが早いので驚く。
ほんとによい方だ。
お逸は私の洋服を着て、写真を撮りに出かけた。
洋服がとてもよく似合うのだ。
私がお逸の着物を着るよりずっとよく似合うだろう。
「色が白くて、ほっそりして、背が高く、なんときれいなイジンさんでしょう」
「なんと綺麗なイジンさんでしょう」
老婦人たちが出てきてほめ、とささやき合っていた。


1879年9月17日 水曜
「手芸の材料をいろいろ買いたいのでお店を紹介してくれませんか?」
大山夫人がそう云うので、今朝、母と大山夫人とお逸と一緒に横浜へ行った。
私たちは一等車に乗った。
家康の命日に当たり、沢山の人が遊山に横浜に出かけるので、二等車は大混雑。
北洋船ベガ号を見物に行く人たちもいた。
ノルデンシェルド教授が希望者を招いたそうだ。
ウィリイはこの偉大な北極探検家――以前は不可能と考えられていた北洋水路を開いたのだ――と、月曜の夜の工部大学校における晩餐会で会ったらしい。
もし男の人が一緒だったら、この有名な船に行って見たかったが、女ばかりなので、日本人がよく云う、カイモノに行って来た。
エドワードの店』へ行って毛織物とカンバスをたくさん買った。
エドワードの妻は、日本人の貴婦人をはじめて見て吃驚していた。
店の人はメズラシイ物でも見るように二人をじろじろ見た。
それに比べると、そばにいる私たちはごく普通の人だった。
ところで、出発する時には天気があやしかった。
「決して雨は降らないわよ。お天気はわたしが請け合うから」
お逸は何故だか自信満々に云う。
で、私たちはお逸を「オテンキノ ウケニン」つまり「オテンキ約束人」と呼んだ。
でもその通り。帰る頃には、太陽は一点の曇りもない空に沈んだ。
私たちはお逸の“子分”である「天候」がいい子だったとウケニンをほめた。
「これからいいオテンキになって欲しい時には、お逸さんに頼むといいわね」
大山夫人は、そう云われた。


1879年9月18日 木曜
お逸の写真が届いた。
洋服がとてもよく似合う。
でもお逸は今日はお稽古に来ない。
将軍の奥方様にチャノユに来るようにとお迎えがあったそうだ。
大山夫人は来られたが、いつものようにしとやかで美しかった。
大山中将が鮫島尚信駐仏全権公使氏の後任になられる。
必然的に、彼女も間もなくフランスに行くことになっている。
「そのための衣装選びを手伝って欲しいのですけれど」
夫人は私たちにそう仰った。
今朝、杉田氏のお宅へ行った。
杉田夫人の話では、うちで以前「ボーイ」をしていたテイが、杉田家の女中のおヤスに手紙を寄越したそうだ。
『あと三年は東京に行けません。私は熊本で勉強しています。
私と一緒に勉強しに来ませんか?』
これは結婚の申し込みである。
杉田夫人はおヤスは行くまいと思った。
ところが聞いてみたら、案に反しておヤスは頭を垂れて云った。
「参ります」と。
夫人はとても残念がっておられる。
おヤスは十一歳の時から杉田家で奉公していたからだ。
今年二十で、かわいい娘である。