Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの日記 超訳版第3回−1

1875年9月19日 日曜日
 時は矢のように飛んでいく。日ごとにこのことをひしひしと感じる。私は十五歳になったばかりだけれど、これから先の年月がますます早く見えるようになってくるのが分かる。快い朝陽を浴び、あたり一面の美しさに浸りながら、二階のベランダに寄りかかって私は考える。
 フジヤマは遠くに輝いていた。多分ノアの洪水以前から今に至るまで、静かに美しく、しかも変わらぬ姿で。私の目だけでなく、他の人々の目にも、素晴らしい日没、深紅の雲、きらきら輝く雪が映ったことだろう。あらゆる人間の生の果てに口を開けて待っている恐ろしい墓の暗闇に閉ざされて、ずっと前から塵になってしまっている人々の眼にも! 
 今日はヘップバン夫人(旦那様は日本人向けにローマ字綴りを創設された方だ!)に連れられ横浜の祈祷会へと行った。説教師はこの国にいる半ば死んだような外国人の目を覚まそうとするために、スコットランドからやって来たダグラス師だった。
 本当に在日外国人の状態は酷いものである。この国に来ている若い人たちは不行跡で、堕落していて、大人しい日本人を何かにつけて侮辱しているのだ! 既婚の商人たちは、この国の女の人たちを妾として家に置いている。水夫たちはもっと酷い。可哀想に、半分捨てられた小さな子供達が、日本人には不潔だとみなされ、父親にも構われず、ほったらかされて彷徨いているのを見ると、痛ましい限りである。
 これら不品行な輩は、アメリカ本国では社会の屑そのものであるのに、アメリカ国旗のお陰と欺瞞でで成り上がった者なのだ! そして、不幸なことにこの国の人たちは、外国人というのは皆そんなものだと思っているのだ! 宣教師たちは最良だけれど、それでも大部分は綺麗な家に住み、使用人を多く使って、馬や馬車を持ち、本国の熱心な信者たちが描く宣教師の生活とはおよそかけ離れた贅沢な暮らしをしている。
 ああ、この人たちには何かが必要なのだ。役に立つもの、効き目のあるものは精霊しかない。私の魂は嫌悪の念をもってこれら堕落した外国人に背を向け、日本人の中に見いだされる純粋なものの方に惹かれてゆく。