Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの日記 超訳版第5回−3

11月13日 土曜日
今日は家でお菓子を焼いてから、富田夫人と芝の福沢諭吉氏のお宅に伺った。
人力車の乗り心地も良く、福沢家の皆さんがとても親切で礼儀正しいので、私はすっかり嬉しくなってしまった。大柄で恰幅の良い福沢先生が、わざわざ私のために二階に案内してくれて江戸湾の素晴らしい眺めを見せて下さった。
福沢氏は慶應義塾という学校を開かれた方で、父の商法講習所設立にも尽力して下さった立派な方だ。ここに来る途中、塾の素晴らしく広い敷地の脇を通ってきたところなので「失礼ながら先生は随分お金持ちでいらっしゃるのですね」と云ったら何故だかその一瞬だけ顔を顰められた。やはりこんな時にお金の話題なんてすべきじゃなかったと反省する。
七歳のお嬢さんが私たちのため琴をお弾きになって下さった。私にはなんだかピアノの調律をしているように聞こえたのだけれど、富田夫人はとてもいい音楽だと云われた。
やがて福沢氏が夕食をどうぞと云って下さったので、階下に降りてみると、食卓が半分洋式、半分日本式に用意されていた。御馳走は生の魚、魚の揚げ物と煮物、鶏肉の煮込み、吸い物、お茶、ご飯、清国の砂糖漬けの生姜、それに私が持ってきたお菓子だった。
福沢氏はとてみ親切にもてなして下さって「またいらっしゃい」と念を押され、どうぞお風呂をお使い下さいと三度も云われた。
私たちは月明かりのもとで帰途につき、心地良い人力車で早めに家に着いた。