Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第8回−1

1876年1月1日 土曜日 
また新しい年の朝の光が私を照らしている。一つの年が去り、次の年が主権を受け継いだのだ。新しい年が優しく支配してくれますよう――喜びが多く、悲しみを少なくして。
自分がいつ悲惨な災いに会うかもしれないということは分かっている。しかし希望は人間誰しもが心に抱くものだ。そして今、その甘美な疑問が、これを書いている若い心に息づいている。悲しみは人間に共通な運命だ。けれども人間は、己をむしばむ苦労を乗り越えて生きることが出来るのだ。神よ。「そのような恩寵を我に与え給え」。
信念の慣習に従って多数の訪問客があった。私たちは家を飾り、先端に金色の小さな球のついた長い竹竿に日本の国旗を結んで門に掲げた。食堂の茶菓用テーブルの準備がすっかり整うと、簡素だが上品な感じになった。母がするとなんでも、いつもこの独特のゆかしさを帯びてくるのだ。
昼頃から夕刻まで、日本人と外国人、合わせて四十人くらいがみえた。新年の挨拶回りは、この国にいるイギリス人の間ではあまり行われていないのだけれど、アメリカ人はまだこの習慣を守っている。だから訪ねてきた外国人の友達は殆どがアメリカ人で、英国人はごく親しい人たちだけだった。日本人も大勢来た。母に倫理学を教わっている生徒や三浦徹夫妻、森夫人のお父様の広瀬秀雄氏。この方はお気の毒に、新年のお祝いをなさり過ぎたのか、お酒をたっぷり飲んでおられ、言い換えればほろ酔いでご機嫌でいらっしゃったが、勿論危険なことは一つもなかった。
最後に見えたのは中原氏だった。五時少し過ぎに来て、十時には帰っていかれた。帰った後、私はくたくたで、、布団に潜り込むのもやっとだった。