Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第8回−2

1876年1月14日 金曜日
今日、神様のお顔を見、お手を感じる厳粛な出来事があった。
森氏のお母様である里さんは、先頃中風におかかりになった。とても親切な方なので、私たちは皆心配している。ただ悲しいことに、今にも逝ってしまいそうな魂のために、木と石の神様に向かって祈願を未だになさっておられる。
昨夜お祈りの後のことだ。母が里さんの孫でもある有祐に訪ねたのは。
「お祖母様はイエス様について聞きたいことがありますか」
「いいえ」
そうあっさり答える有祐に、いい種を蒔こうといつも心掛けている母は「お祈りや神様に関する話をお聞きになりたいかどうか、お祖母様に伺って下さい」と伝えた。
有祐はお辞儀をして「聞いてみます」と答えたけれど、正直なところ有祐がそのまま母の言葉を告げるとは期待していなかった。だから、間もなく走って戻ってきた有祐が「お祖母様がすぐに母に来て欲しいと云っていらっしゃる」と告げると、私も、そして母さえも吃驚した。二言三言お祈りを済ませてから、母と私は森家へと急いだ。


森氏のお父様と背の高いお孫さん、それから日本人が後二人、一部屋で将棋を指していた。そして別の部屋の屏風の陰に老婦人が、左半身がすっかり麻痺しているので、とても苦しそうに寝ていらっしゃった。この方が森氏のお母様の里さんだ。
日本式の寝床だったから、私たちはそばに坐り、母がお祈りを始めると、部屋にいた人たちは皆頭を低く垂れた。
ご病人は動いたり呻き声を上げたりもなさらず、眠っていらっしゃるようだった。健康回復を偶像に祈るための細長い紙切れが下がっており、別の部屋には神棚があった。我が栄光の神への使者であり、奉仕者たらんとすることがどういうことなのか、今この時によく分かった。
そして私の心をなんと荘厳な感じが襲ったことだろう。私の信ずる神様は本当に卓越した方で「私の心の目に、未だ見たことのないものを見せて下さった」のである。私は生まれて初めて神を実体として理解した。私は神様に触れることができたような気がした。
そうだ、実際に、神様が部屋中に偏在しておられることを「感じた」のだ。
主よ、あなたはここまで降りて来られて、あなたの子供たちに確信に満ちた言葉を囁いて下さった。あの異教徒の、今際の際の寝床のそばにも。「切なる祈りに天の戸ひらけて、輝くみさかえ御座の上に見ゆ」(賛美歌三一五)
老婦人は、この間ずっとお動きにならず、溜息もおつきにもならなかつた。終わると私たちは立ち上がって、家族の人たちと挨拶を交わし、あたかも神の聖所を出るかのように恭しくこの異教の家を出た。
神様はそこにいらっしゃった、と私は本当に信じる。
その時から蘇生感が私の心に漲っているので「神は神秘に動き給うて」いるのだ。そして私はこの気持ちがいつまでも続いて欲しいと切に願っている。