Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第9回−4

1876年2月17日 木曜日
今朝から我がの小さな塾に新しい生徒が二人やってくることになった。
昨日おいでになった例の高貴な家柄の大名御令嬢、松平おやおさんと、少し身分の低いお友達(私はてっきり侍女かと思っていた)のおすみである。
勿論、彼女ら二人だけでなく、漏れなく屈強で厳めしいサムライがついて来るのだけれど。
二人に対する私の二度目の印象は、最初の時よりずっと良かった。
大名令嬢は美しい装いをしていた。髪は結い立てで、絹の花のほかに日本の簪――金の珠のついた琥珀のと、オパールをあしらった銀と黒檀のとを挿していた。羽織はお家の美しい紋がついた最上の縮緬で、帯は桃色と黄褐色の綿織りだった。
「おやおさんは以前英語を習ったことがおありですね?」
御令嬢が前に英語を習ったことがおありになるのは確かだ。基礎的な英語とはいえ、独学でこんなに発音がお上手になられるとは思えないし、でも話し方に少し訛りがあるのはその英語教師のお国柄によるものだろう。
「いいえ、先生について学ぶのは初めてでしてよ。クララさんの教え方がよいからではないかしら?」
小首を上品に傾げながら、優雅な口調でだけど、きっぱりと否定される。
若い学友の方もとても利口で、素晴らしく良い発音をする。だけど、目を輝かせて「go」をあくまでも「ガウ」と発音しようとするのは如何な物かと思う。
「おすみ、そこは“ガウ”ではありません。“go”と発音するのですよ」
大名令嬢が神々しいまでの仕草で厳かに訂正し、おすみは重大な任務を託されたサムライのように重々しく肯く。……日本の女性の主従関係というのは、私が想像していたより、ずっと複雑なものなのだろうか?
しかしそんな短い時間にも、おやおさんは縫い物や針仕事がお好きで、学友の方は読書が好きらしいということが分かった。彼女たちともきっと仲良くなれそうだ。
おやおさんが、以前我が家に来たことがある、同じ松平一族の定敬氏より優れているといいと思う。
もう一人の松平氏は痘痕面で奥様が二人いる。長男で正当な相続人なのに、エサウ旧約聖書創世記イサクの長子)のように、僅かな金額と引き替えに弟に相続権をお譲りになったのだが、その弟さんというのがこの御令嬢のお父様だか未来のご主人だかに当たる方で、皆日本の高貴な家柄の出でいらっしゃる。
私はスコットランドのマクラウド氏の書いた「古代日本史概要」という本を読んでいるが、それによると日本民族はイエラエルの滅んだ種族の一部なのだそうだ。
もしそれが本当だと分かっても不思議ではない。そして、もしこの令嬢が神の選民の滅びた種族を見出して復興させることが出来るようになったとしたら、私たちの国にとってなんと名誉なことだろう。
とにかく日本人の顔がユダヤ人に著しく似ていることがあるのは事実だ。