Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第11回−2

1876年3月11日 土曜日
今朝はとてもうららかな朝で、富田夫人と私が焼いたお菓子は最上の出来だった。
富田夫人はゼリーケーキを、私はドーナツとフルーツケーキを作った。富田夫人のケーキは四層になって、雪片のように軽く、素晴らしかった。私の一口ドーナツもとても上手くできたし、フルーツケーキはちょっと焦げただけだった。……うん、ちょっとだけ、ちょっとだけ。
食後、私たちは着替えて、加賀屋敷にいる友達を訪問しに出かけることにした。うちの人力車で行ったのだけれど、車夫の一人が梶棒を取り、もう一人が梶棒の横木についている綱を肩に掛けた。銀座通りから加賀の殿様の敷地までは道がとても良かったが、邸内は大変ひどく、大きな轍が凸凹に続いていて、人力車ががたがたと揺れ、投げ出されそうになったので、私たちは降りて歩いた。
加賀屋敷に着くと、マッカーティー氏の家を訪ねた。客間と食堂はとても心地よく、マッカーティ夫人は快活で気持ちの良い方だった。
「うちは子供がいないので、清国で両親を亡くした少女を養女にしていますのよ。ユウメイというのですけれど、今日は出かけていますの。今度会ったら仲良くしてやって下さいね」
ここに長い間楽しくお邪魔してから、次に隣のサイル夫人を訪ねた。夫人は四ヶ月前、日本家屋の敷居に躓いて転び、膝の皿を割って、それ以来歩くことがお出来にならない。この方の前のご主人の名はワシントン、つまり我らがワシントン大統領の子孫でいらっしゃる。
お嬢様はとても素敵で綺麗な方だけれど、ジョージには似ていらっしゃらない。それどころか、見た目もなさることも……
「アニー・ワシントン、十七歳です♪」
……念のために断っておくと、現在アニー・ワシントン嬢は二十一歳でいらっしゃる。
マッカーティー夫人のところではお茶とお手製のケーキを頂いたが、このお宅では日本式慣習を取り入れずに、バター付きパンをご馳走して下さり、とてもおいしかった。
こうして私たちはいつもの静かな暮らしから離れ、憂さを忘れて過ごしているうちに、もう殆ど夜になったので家に帰った。通りでお茶屋に寄ってお茶を買った。清国のお茶も欲しかったのだけれど、言葉が通じなかった。私の日本語はまだまだ駄目なのだ