Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第12回−2

1876年4月1日 土曜日
今日、食事とパン焼きが済んだ後で小野氏が見えて「上野の桜を見に行かないか」と誘って下さった。丁度その時、杉田氏の若夫人よしさんがいらしたので、皆で行くことに決まった。
人力車を呼び、母と富田夫人が一緒に、もう二台によしさんと私、小野氏とアディという順番で出発した。上野はとても美しいところだった。いろんな種類の丈の高い美しい木が沢山あった。桜の花が咲いていたけれど、この早咲きのは遅咲きのほど大きくもないし、綺麗でもない。
あらゆる階層の人が数え切れないほどいた。
大きな石段を上り下りする人々の中で、綺麗に着飾った紳士と淑女を見ると、男は立派な絹の着物に洋風の帽子を被り、女は紅、白粉、香水をたっぷりつけているのに気づく。
その他、物乞い、芸者、人力車の車夫、様々な日本の庶民がいた。
人力車から降りて歩き出すと……私たちの後から、赤ん坊を紐で背負った汚い子供たちがひっきりなしでついて来た。そしてその可哀想な赤ん坊たちは、目の赤く腫れた汚い顔で、こちらを哀れっぽく見上げていた……。
私たちはまず、寛永寺というお寺に行って、小さな大仏を見た。
日本の人たちには悪いのだけれど、正直に云おう。
うわっ! なんて醜いのだろう! 五十フィートほどの高さで、真っ黒な顔をしていた。広い鼻、厚い唇、ちりちりに縮れた髪の毛、何処から何処まで慄っとするようなものだ。
美しいものを愛し、尊ぶ才能のある日本人が、どうしてこんなひどいものを拝めるのか分からない。人間の作った忌まわしい像を拝むより、富士山を拝む方がよっぽど自然なように思われる。
父なる神、救世主が、喜んで人間の崇拝を受けようとしていらっしゃるのに「神の力で作られた人間」が正しい道から逸れて、青銅の像を崇めるなんて!
それから別の、もっと美しいお寺である上野東照宮へ行ったが、アメリカでこれに似た建築物の絵を見たことがある。とても変わった朱塗りの建物で、内部は赤と金色だった。
天皇<だと思う>の肖像が四つと神聖な鏡があったけれど、人込みでゆっくり見られなかった。とにかく大勢の人に囲まれているのにはまったく閉口した。
「何処に行っても人がついて来るのだから、私たちは偉大な社会の指導者になったのね」
母は笑いながら、そう云った。
このお寺へ続く舗装道路の両側には、大名が寄進した五、六フィートの高さの石灯籠が並んでいた。全部に火が灯ったらさぞ素晴らしい景観だろう。