Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第23回−2

1876年11月22日 水曜日
今朝、猫の鳴き声で随分早く目覚めたが、横浜に行く予定なので、そのまま起きていた。
八時半にはお逸が来て、九時半には家を出た。しかし新橋の停車場近くまで来たら、汽車が出たところなので、大いにがっかりした。
「諦めるものですか!」
お逸の言葉に、私たち人力車に乗って次の駅、品川へ走ることにした。特に天気は上々だし、東海道を行く乗り心地は快適だった。品川で三十分待つことになったけれど、私たちは立入禁止の場所をありったけにうろついて、駅員を困らせた。でも、駅員の気が狂ってしまわないうちに、汽車がしゅっしゅっと入って来た。
私たちは二等車で行ったのだけれど、その車内でフランス人とオランダ人が英語で話していて、最低の葉巻を盛んに吸っていた。紳士風の日本人とその奥さんもいた。乗客はそれだけだったが、その日本人はともに大変な喫煙家だったのだ。
女の人が煙草を吸うのを見ていると面白かった。その女の人は、綺麗な袋から香りの良さそうな煙草を一つまみ取って、煙管の小さな火皿に入れ、機械的に火をつけて、すぱっと吸った。
そして急激に大きく吸い込みながら、厳粛な顔をして、眼を床の一点から離さず、二本の煙を、なんと! 鼻からすーっと出したのだ! まあ驚いた!
「……お逸、ひょっとして貴女も煙草を吸うの?」
「いまのところ、まだその予定はないわね」
ちょっとおっかなびっくり我が親友に尋ねてみると、否定とも肯定ともつかぬ答えが返ってきた。
横浜は活気に溢れ、人々で賑わっていた。まず二、三箇所を回ってから、軽食をしにホテルへ行った。みんな私たち、とりわけお逸をじろじろ見た。お逸はとても綺麗な上に美しい着物を着ていて、横浜乙女とは違っていたからである。
昼食後ある店に行って、めいめい手袋を買い、私は駱駝の毛のポロネーズ、つまり裾の長い婦人服を買った。五時に駅に着いたら、東京へ行く友人に会った。とても楽しい一日だった。