Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

クララの明治日記 超訳版第25回−2

1877年1月3日 水曜日 
今朝10時頃、母とわたしは、日本人の友達の何人かに新年の訪問をしに出かけた。
まず旗が華やかにはためき、竹、松、常盤木の小枝を飾った通りを通って勝家の屋敷へ向かった。どの家も、正面に、柊と神々しい竹でできた大きなアーチから、松の小枝の小さな藁束にいたるまで、何かそのようなもので飾っていた。
赤坂氷川町十番地にある勝家に着いて、まず車夫の一人に来訪を告げに行かせると、梅太郎が出てきて、私たちを呼び入れた。
客間でしばらく待っている間に、梅太郎が火鉢の火を掻き立てて暖を取ってくれた。
「新年おめでとうございます」
とても美しい着物を着て入っていらっしゃった勝夫人が仰った。お着物は地味だけれど、素材が大変優雅で、事実奥様がこんなにすばらしく装ったのは見たことがない。
それからおよねがいつもよりいい着物を着て現われ、次に勝氏がお逸と、この家の小さい男の子と女の子をぞろぞろ連れて入って来られた。
私たちはお逸としか話が出来ないから、こんな大群衆を見てまごついてしまった。しかし、なんとかうまく切り抜けて、お菓子やお茶やコーヒーをご馳走になり、快くもてなして頂いた。
およねが長い干した魚を載せた三方を戸のところに持ってきて、お辞儀をして立ち去った。これは日本の新年の習慣で「歓迎」と「時節の挨拶」を意味するのだ。
「ホイットニーさん、少しお待ち下さい」
帰ろうとしたら、勝氏がご自身で贈り物を持って来て下さった。母には綺麗な銀の香水箱と美しい瑪瑙の玉、私には同様の小さい箱と綺麗な水晶のペンダントを二つ下さった。
「そのペンダントはお守りにして身につけることもできるのですよ。ああ、それからアディさんに」
そう仰って勝氏は簪二本と、幼児用の小物入れと水晶のようにカットした綺麗なガラスの兎を渡して下さった。
私たちはほんの少ししか贈り物を持って行かなかったし、新年だからといって特別何も期待していなかったので、こんなに贈り物を頂いて驚いた!
なんだか勝氏は、うちの家族に普通の親切以上に気を遣って下さるような気がする。
その次に麻布の友人、杉田家へ行った。
そこで老先生以外の家族の全員にお目にかかった。杉田夫人は誠意をもって私たちを迎えて下さり、英語の話せる息子さんをお呼びになった。
お祖母様もいらっしゃって、各型の容器に沢山入ったキャンディーを差し上げたら、とてもお喜びになった。
その時、誰かがそれはそれはおかしな外国の婦人服を持ってきた。
「クララさん、この服をどう思われますか?」
「…………」
正直に答えていいものかどうか、私は少し躊躇った。その服は最も安物の材質で出来ていて、緑の飾り紐とガラスの管玉で、この上もなくくだらない飾り付けをしたものだったからだ。
「……実を云うと、祖父がこの服を気に入って、毎日来ているのですよ」
幕府きっての頭脳だった大学者先生が、こんな趣味の悪い服を好んで着るなんて!