Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第28回−11

1877年3月22日 木曜日
杉田武氏が今月アメリカに帰るランキン氏について行くことになったので、今日アメリカの作法と習慣を習いにおいでになった。
お逸は二時に帰り、私は母と人力車で出かけ、絵本などを売っている小さい店に立ち寄った。
「その本なら一.七五ドルでお売りしましょう」
「一ドルにまからない?」
そう値引きをもちかけてみたのだけれど、その人は陽気に笑って云った。
「その本は大名家の蔵出しで仕入れた本でして、その値段では原価割れで大損してしまいます」
私はちょっと冷やかしてから、一緒に笑い背を向けて歩き出した。
すると主人は急に折れて、本をきちんと包み、人力車に乗った私に大変愛想良くお辞儀をし、にこにこしながら絵本を渡してくれた。
こうして値打ちものの絵本を一ドルで手に入れたわけだけれど、使用人のセイキチによると「五ドルくらいの価値はあるでしょうね」ということだ。
それから有名な上野公園に行った。
まだ桜は咲いていなかったけれど、草木はいつも青々としている。
偶然矢田部氏に行き会ったら、笑ってお辞儀をなさった。
しばらくしてジェニーとハウディを見かけたけれど、こちらに気が付かなかったようだ。
広い立派な馬車道をゆっくり進んでいくと、気持ちよい陽光が木の葉の間からチラチラと洩れていた。
小さな大仏は緑の葉の中に醜い頭をもたげていて、足元には外国風のホテルが建ち、ガス灯が沢山あった。
近づくと、お坊さんが大仏を拝んでいた。