Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第29回−4

1877年4月3日 火曜日
なんと今日は忙しかったことだろう。徳川家達公を晩餐に招待したのだ!
お逸が泊まりがけで手伝いに来てくれた。デザートに気のきいたものを沢山作って、四時に準備完了した。
二階に上がって着替えをしていたらお逸もやってきてくれたので、髪を梳かし、手を洗った。
間もなくがらがらと音がしたので、窓から覗いたら、人力車の一隊が角を曲がってくるのが見えた。
そのうち徳川公の姿が見え、みんなうちの門の前で止まった。
私たちは急いで階下に下り、六人の青年と握手をした。
六人とは、徳川家達公、大久保三郎氏、竹村氏、滝村氏、須田氏、大久保氏の弟である業氏である。
やがてウィリイが戻ってきたと思ったら、小さな供を連れていた。
「お姉様、来ちゃいました」
そう云いながら顔を覗かしたのは、勝家の梅太郎だった。
普段はもっと“やんちゃ”なのだけれど、流石に今日は大人しい。
お客様たちとも夕食時までには段々と堅苦しさが解れて、みんな楽しくお喋りをするようになっていた。
大久保氏の弟が私の隣に坐っていたのだけれど、外国の少女には慣れていないのだろう。
なかなか話そうとせず、私が会話の糸口を開こうとしても、ただ空を見つめて「ええ?」と云うだけだった。
英語がよくご理解できないのかも知れない。
云うまでもなく会話の中心は、父、母、滝村氏、竹村氏、大久保氏だった。
そういうわけで、実のところ初めはあまり活気がなかったのだけれど、コザーク、つまり引き玉が始まってからは、すっかり空気が和やかになった。
引き玉からは次々に紙の帽子が出て来て、またとないほど雑多な被り物が集まった。
滝村氏がローマの騎士の兜を被り、トーガのように羽織を裏返して着た時は一同笑い転げた。
須田氏は黄色と黒の日本の役人の帽子が行き、大久保氏の弟のはピンクのナイトキャップ、私のギリシャの兜、お逸のはボンネット、母のは綺麗な子供の頭巾、アディのは自由の帽子、竹村氏は道化帽、大久保氏は緑の古い婦人帽、徳川公は子供用のボンネット、梅太郎はピンクの飾りの付いた赤ちゃんの頭巾、そしてウィリイのは騎手帽だった。
お互いに見交わしてはどんなに笑ったことだろう。
この瞬間が「厳粛から陽気」への大転換だった。
夕食後は食堂を片付けてゲームをした。
二人の競技者が目隠しをされて、お互いにスプーンで食べさせっこするのだ。
スプーンの水を相手の口へ入れようとする努力は、あまり滑稽で見ていられないほどだった。
大久保氏と須田氏の番では、大久保氏が須田氏の首に水を流し込んでしまい、一方の須田氏は大久保氏の耳にスプーンを入れてしまった。もうみんなどっと笑いこけるしかなかった。
私は大久保氏と羽根つきをし、それもとても愉快だった。
次に客間へ行って、みんなで水芸をやってみてから、アディと私が「バーディス・ボール」を歌い、ウィリイと私が「ジュアニタ」を歌った。
それからお茶が配られ、九時半には皆帰り支度をして、人力車が疾走して去って行った。