Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第30回−4

1877年5月8日 火曜日
今日から私は母、ウィリイ、アディ、そして使用人のセイキチを連れ、晴れた日には東京から青い輪郭が微かに見えるだけの箱根山へと出かける。
帰宅するまでの総距離数は延長は四十五マイルか五十マイルにもなる予定だ。
九時に出発して神奈川に行き、そこで待っていた人力車に乗った。
出発直前に、お逸から旅立ちに向けての挨拶と「早いお帰りをお待ちしています」という言葉を添えた見事なカステラを頂いたので、短い返礼の手紙を書いた。
さて、出発の時のことを書いているのだった。
母とアディが一緒の人力車に乗ってヤスが引きキスケが押した。クマが一人で引く車で私が後に続き、ウィリイが次に一人用の人力車で行ったが、珍しいくらい容姿のいい京都の人ががウィリイの車夫だった。名前はショウテイだかショウハンだかで、とても若い人だ。
私たちは昼食のため以前江の島旅行の時に立ち寄った端道茶屋に立ち寄ったが、ゆっくりは休まなかった。
茶屋の女の人たちは私たちを覚えていて、私たちの風采についてたくさんのお世辞を述べたのだけれど、書くのも馬鹿らしい。アディと私がとても大きくなったと云っているのだけれど、彼らはアディが私で、私はその姉だと思ったのだ。
それから「お兄さんは大変綺麗(!)ですね」とも云った。
別れ際に皆「サヨナラ」と挨拶をし「ハヤクノオカエリ」と云った。
初めから気付いていたことだけれど、私たちが立ち寄ったところは何処でも、出発する人に早く帰るようにと呼びかけている。
そして帰って来ると「ゴクロウサマ」と声をかけるのだ。この言葉を正確にどう訳せばいいのか分からない。けれど「お疲れでしょう」または「お手数をかけてすみません」というような意味だということだけは知っている。多分一種の方言なのだろう。


二時頃に江ノ島、つまり「絵のような島」に着くと、以前逗留した橘屋の人たちがとても喜んで温かく迎えてくれた。
昼食後、景色を見に出かけた。まず前回同行しなかったので感嘆しているウィリイを丘へ案内し、あの素晴らしいお寺と弁天岩屋へも連れて行った。
ここで、父親、祖父、二人の娘から成る日本人の巡礼の一家と親しくもなった。
私たちは一緒に笑い、話し、蟹を捕まえ、お茶を飲んだが、とても気持ちのよい人たちだった。
セイキチの車の車夫が一人ついて来た。ボズという名前だったが、太っていて、髪の刈り方がニューヨークにあるシンシン刑務所の囚人みたいだったので、私たちは彼を「コンヴィクト」つまり「囚人」と呼んだ。
しかし、大変感じよく慇懃な人で、濃い青の木綿のぴったりとして小綺麗な別当の上下服を着ていた。
私たちはまだ先へ行かなくてはならないし、荷物になるのでお土産はあまり買わなかったのだけれど、我らが友である巡礼の一行は殆ど行く先々で何か買っていた。一箇所だけで父親は小さな屏風を十枚も買っていた。一体何処にそんなに飾るのだろう?