Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第32回−1

1877年6月16日 土曜日
今朝ぐったりと疲れて目が覚めると、外は大雨。
明日はアディの誕生日だから、今日お浜御殿に行って祝う予定だったので、アディはがっかりしている。
疲れ切って、ゆっくり休息もしていられなくなったのは、昨日使用人との間に起こった揉め事のためだ。
セイキチがあの箱根旅行以後、すっかり横柄で無作法で怠けるようになり、注意しても改善の兆しが見えなかったので解雇することになった。
「あなた方が甘やかし過ぎたからですよ」とは杉田夫人の意見。
セイキチを解雇するのは構わないのだけれど、日本人の使用人の間には「一人が辞める時は、後の仲間も一緒に辞めなくてはならない」という慣習――つまり使用人同士の誓いがあるので、大事なテイもいなくなりそうだった。
しかし、給料を五十セント上げ、今まで通りの仕事でいいことにして、テイに残って貰うよう説得した。
当分これ以上使用人は雇わず、食事を精養軒から取れば、料理人やボーイを置くよりずっと安上がりになる。
あの汚い台所へ行ってすっかり掃除したい!
うわ! 彼らの戸棚も寝室も汚れとがらくたでひどいこと! 
ところがそこへ、今日お浜御殿へ誘っておいた若い友達が雨の中をやって来た。
急いで仕事に取りかかり、十二人分の食事を用意したのだけれど、初めはどうしたらいいか分からなかった。
セイキチとウメはまだ家にいたけれど、昨日の夕食会の緊張と今日の重労働で疲れ切っている母を見ても、何一つ手伝おうとしなかった。
出て行くときも「さよなら」さえ、云いに来なかった。
ああ、すべては主の思し召しのままなのだろう!
私たちはいつも神にお祈りしているし、主は信じる者を裏切られることはないのだから。
人間の心がなんと変わりやすいものか、友達と思っている人々がそっぽを向くのはなんと早いことかが、今までになくよく分かった。
セイキチはこの国へ来てからずっとうちにいて信じ切っていたのに、あの箱根旅行ですっかり増長してしまった。