Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

クララの明治日記 超訳版第35回解説

解説の前に。
11月19日分の日記の最後の所、杉田家でなされた「約束」の行く末について、この日記の翻訳者で海舟の曾孫であり、お逸のすぐ上の姉、疋田孝子さん(海舟の次女)のお孫さんの下巻の後書きから貴重な証言をご紹介。
『数年前に、娘夫婦の元に住むクララの末娘ヒルダ・ワトキンズ(海舟の実の孫)を姉とともに訪ねた時、ヒルダは鼠色の縮緬の着物を着て私たちを迎えてくれた。
これこそ日記で詳しく描写されているように、クララが杉田家を訪問した際に見せて頂いた婚礼衣装で、同家の長男武さんがクララが結婚する時にあげると約束したものであった。翌年の日記では杉田家を訪問したクララに杉田夫人が同じ約束をしている。
私は杉田家の二人の約束がきちんと守られ、その婚礼衣装が百年余りの間アメリカで大切に保存されていたことに感動した。』


【クララの明治日記 超訳版解説第35回】
「杉田家とホイットニー家の百年の絆の証、というわけですわね。素敵ですわ」
「最終的にクララは子供を連れてアメリカに帰ってしまうことになるのだけれど、それでも如何に日本での日々で培った絆が大切なものであったのかの証となる着物だよね。
私もこの話を最初に聞いた時、ホロっときちゃった」
「そして“そこ”に至るまでを描くのが、この超訳日記の主題なのでしょう?
ということで、早速いつもの解説に戻しますわよ」
「冒頭の和宮様の葬列ですけれど、和宮についての特別な解説はいらないよね?」
公武合体の証として、将軍家茂公の夫人となった皇族の女性、ですわね? そして皇女が武家に降嫁し、関東下向した唯一の例」
「そう、その通り。ちなみに、亡くなったのは先年クララ達も訪れた箱根の塔ノ沢温泉ね」
「しかし死因が脚気というのは、意外ですわね」
「所謂“江戸患い”よ。玄米ではなく、精米された白米を食べるのが原因で起こるね。
ビタミンB1欠乏症と分かったのは1900年代に入ってから。そして所謂“ビタミン”を最初に発見したのは鈴木梅太郎博士だけど、その発見者としての栄光も“ビタミン”という命名も、西洋人に持っていかれてしまうのだけど」
「はいはい、そっちの鬱憤晴らしは別のところでおやりなさい。また本題に戻りますけれど、葬儀が皇族なのに神式ではなく、仏式というのも奇妙ですわね」
「仏式になったのは和宮様の『家茂の側に葬って欲しい』という遺言を尊重するためね。だから、墓所は徳川家の菩提寺である増上寺になっているわ」
「ということは、このクララの目撃した葬送の儀式は、徳川家ゆかりの人間の葬列と考えて見差し支えないのかしら?」
「規模は全然違うんだろうけれどね、基本的には同じなんじゃないかな? そういう意味でも貴重な記録なんだと思う」
「さて、和宮の話はこれくらいにして、他の点についての解説を。」
アメリカ公使のビンガム氏が云っている“十五年前ほどに起こった通訳の殺人事件”というのは、ヘンリー・ヒュースケンの暗殺事件のことですわね?」
親日派……かどうかの評価は別として、日本の習俗にとても興味を持ってくれた人なのに本当に残念なことだったわ。この方の日本での記録は『ヒュースケン日本日記』の名前で出版されているので気軽に読むことが出来ます」
「あと、招魂祭というのは、道教起源の招魂祭で宜しくて?」
「起源は多分そう。でも日本の場合、陰陽道に姿を変えていて、最も大きな違いは、日本の陰陽道では死者に対しては行わない点かな? 日本の場合は、身体から魂が離れると病気になる、って考え方をしていたから、病気快癒の儀式だと考えればいいと思う。
だから、競馬があるのも、相撲があるのも、芝居があるのも、元々はちゃんと“そういう意味”からだった筈……だけど、多分、この頃には普通の“お祭り”の一環みたいになっちゃてるよね」
「とはいえ、伝統というものはちゃんと残っていくものだとも思いますわよ? 特に“若い日本人が能に興味を持たない理由がよく分かる”の件を見ていますと。
百年以上前でも今と同じ事を云っていたんですもの、きっと百年後も同じ事を云っているでしょうね」
「さて、とりあえず本日の所はこの辺で、かな? 
あ、でも最後に一言。弟を食べた金魚に“カイン”と名付けるセンスは親友ながらどうかと思う。まあ、クララが命名したとは限らないけどさ」
(終)


と云った所で、今週も最後までお付き合い下さった方、有り難うございましたm(_)m。
最後まで読んで頂けた方、拍手ボタンだけでも押して頂ければ幸いですm(_)m。ご意見・ご感想、質問等も随時募集中ですのでお気軽に拍手で。